60/143
60
武丸が続けた。
その瞳が優しく輝く。
「お前が望みを叶えたとしても、私に従属させはしない。その後の身の振りかたは自由に選んでもらう」
「偽善者!!」
突然、冥の声が響いた。
武丸が顔をしかめる。
しばらくの後、武丸は再び口を開けた。
「お前は、どうしたい?」
紅は考えた。
穏やかな魂となって、早く正雪と再会したい気持ちは、もちろん強い。
しかし。
心中に突如、芽生えた大義憤。
自分たちの力を振りかざし、力持たぬ者を虐げる魔武士たちへの反骨が。
地獄の業火の如き火勢をもって、紅の全身を内側から焼き焦がすのだ。
(先生、ちょっとだけ待ってて。あの外道どもを綺麗に掃除してから、そっちへ逝くよ)
「あんたは、あたしに力をくれる?」
「力…」
武丸は小首を傾げた。
「どういう力だ?」
「あたしが」
紅は、そこで間を置いた。
「魔武士たちを皆殺しにする力さ」
武丸が、やや驚いた。
隣に映し出されている光景に、ちらりと眼をやる。




