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紅伝  作者: もんじろう
54/143

54

「あたしと先生の心は残る。お前たちには引き裂けない」


「ふふふ」


 軍兵衛が軍配で口元を隠した。


「そう思いたいだけであろう。現実を見よ。お前たちは今から殺される。何故か?」


 軍兵衛が顔を紅の顔に近づけた。


 どす黒く、しわ深い顔が笑顔でさらに、くしゃくしゃとなった。


「お前たちが我らより弱いからよ。逆に強ければ、このような結末にはなるまい。それだけのこと」


「あたしが死んでも心は屈しない。あたしの反骨魂は折れない。先生との思い出も永遠に汚されない」


「紅…」


 若き想い人の火を吹くような気迫に、正雪は息を飲んだ。


 これほどの窮地であっても紅の気高く純粋な魂は、燦然(さんぜん)とそこに輝いている。


 正雪は紅を愛したことを心底、誇りに思った。


「もうよい」


 軍兵衛が軍配を左右に小さく振った。


「弱者の遠吠えを聞くのも飽きた。殺せ」


 軍兵衛の下命と共に、魔雑兵たちの無数の刀が一斉に紅と正雪に突き刺さった。


 二人は死んだ。




 紅の眼が再び開くと、そこは漆黒の闇の中であった。


 まるで水中のように空気が重い。


(ここは…どこ?)


 周りを見回そうとしても身体が動かない。


 眼の前の闇が揺らぎ、弱々しい光が差した。


「あ!?」


 紅は思わず声を上げた。


 声が、ひどく反響する。

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