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ただひとつ確かなのは、眼の前に居る「魔」は「魔祓い」が効かぬという事実。
操は激しく恐怖した。
今まで積み上げたもの全てを否定されたと感じた。
我が身を引き裂かれるような錯覚が、全身を駆け抜ける。
「いずれ全ての世界が『魔』のものになる。俺たちの御館様、魔獣激情斎様も、それをお望みだ!」
(この『未来』という場所から来た『魔』は恐ろしい企みを抱いている! 魔祓いの効かない魔とは…これは大変なことに!)
操は、おぞましい想像に唇を噛んだ。
「俺たちよりもさらに『未来』の者が邪魔しているようだが、そんなものは痛くも痒くもない。最後に勝つのは俺たち魔武士よ!」
骸造が操の身体をそのまま楽々と持ち上げた。
「おう、ちと喋りすぎたな」
骸造が、にやりと笑う。
「女! お前ごときに刀は抜かぬ。このまま地面に頭を叩きつけて殺してやろう。その魔道具も使い物にならぬよう壊してやる」