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ターシャの背後にはバイクが停まっている。
「と、いうわけで」
ターシャが言った。
「私は『未来』の上司の命令で魔武士を倒しに来たのです」
「『と、いうわけで』って」
響が割って入った。
「全然、詳しい話してないぞ。『未来』なんて国、聞いたこともない」
「えへへ。それは秘密なので…すみません」
ターシャの顔が汗だくになった。
「その途中で、こちらの」
ターシャが奏を向いた。
「魔祓い師の奏さんと出逢いまして」
「その装束」
今度は奏が割って入った。
響を指している。
「魔祓い石の採掘の職人の物ですよね」
奏は魔祓い師の組合所で、同じ装束を何度か見かけていたのだった。
「俺は」
響が苛立ちを顔に出した。
「もう、魔祓い師じゃない。魔祓いなんて、何の役にも立たない」
その言葉に奏は気色ばんだ。
「私たちが諦めて、どうするの!? 何とか方法を見つけて、魔武士たちを倒さないと!!」
「もう魔祓いは要らない!! 俺は紅さんに弟子入りしたんだ!!」
「そんな無責任な!!」
「ちょっと、ちょっと!!」
ターシャが慌てた。
「喧嘩しないでください、二人とも!!」
「………」
「………」
響と奏は、にらみ合ったまま黙った。




