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「これは私の国『未来』の乗り物で『バイク』といいます。本当は乗るときに、ヘルメットを被らないといけないのですが」
「へ…へるめ…?」
「はい。本当は駄目ですが、今は緊急事態なので」
奏はターシャの言っていることが、よく分からなかった。
ターシャはバイクの中からハンドガンを二丁、取り出すと魔祓いの着物の上から腰に細い帯を巻き、両脇に付いた箱型のものに納めた。
ターシャが奏の視線に気づく。
「あ。これは『ホルスター』です。これから魔武士と戦うと思うので、すぐに撃てるように」
それから二人はバイクに跨がり、「血の華」探しの旅へと出発した。
それが二日前のことだった。
ターシャがバイクを停めた。
「奏さん、お願いします」
ターシャが言った。
奏が頷き、懐から赤い石を取り出す。
鎖を垂らした。
「大丈夫です。揺れが大きくなってます」
それは「血の華」への距離が近づいたことを意味する。
「良かった」
ターシャが笑顔になる。