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「わわ」
ターシャは困り顔になった。
「お二人とも、顔を上げてください」
そう促した後「陽明さん」と呼んだ。
「何でしょう?」
「その『魔弾』を、もっとよく見せていただきたいのですが」
陽明は一瞬、黙った。
いくら壊滅寸前の追い詰められた状況とはいえ、逢ったばかりのターシャに「魔弾」を渡すのは、ためらわれたのだ。
しかし、それも束の間。
陽明は決断した。
ターシャに「魔弾」の入った小箱を渡す。
ターシャは間近で「魔弾」を観察した。
「ふむふむ。これならアタッチメントバレットに組み込んで、私のハンドガンで撃てますね」
ターシャが陽明に「魔弾」を返す。
「私が奏さんを守って『血の華』を探しましょう。その代わり、完成した『魔弾』は奏さんの同意の元、私の判断で使用するというので、どうでしょう?」
「分かりました。あなたを信じます」
陽明が頷く。
これは大きな賭けであった。
「では、ここでしばらくお休みになり、明日、出発するのが良いかと」
陽明の言葉に、今度はターシャが頷いた。
京の魔祓い師たちが襲われた二日後の朝、ターシャの乗り物に乗った二人は「血の華」を目指して駆けていた。
奏はターシャの後ろに座り、その腰に手を回している。
出発するときにターシャは乗り物を指し、こう言った。




