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突然、男の怒鳴り声がした。
操の小屋から、滝が注ぎ込む川へとなだらかに降りていく坂道から聞こえてくる。
操がそちらを向くと、五人の男がこちらに歩いて来るのが見えた。
両脇に二人ずつ進んでくるのは、奇妙な丸い兜を被り、前面だけを守る胴当てをつけた雑兵たちだ。
肌色が、まるで鉄のようである。
腰には長刀を携えていた。
中央を威風堂々と歩いてくるのは、これもまた曲線が多い奇妙な具足に身を固めた鎧武者であった。
頬当てはせず、兜から覗く顔は、やはり鉄色。
両眼が、ぎらぎらと血走っている。
この男は長刀と脇差しを腰に下げていた。
あまりの異様さに特定はしにくいが、三十代というところか。
男たちは操を取り囲んだ。
「それは魔祓いの道具かと訊いておるのだ、女!!」
鎧武者が再び怒鳴った。
操はすぐさま、魔祓いの指輪を右手の薬指にはめた。
このぶしつけな訪問者たちの風体から推察すれば、明らかに「魔」に関係する者たちである。