29/143
29
ターシャは感心した。
「『血の華』はどこに?」とターシャ。
陽明が、ゆっくりと首を横に振った。
「調べさせたところ、二百年前に華が咲いていると示された場所には、何もありませんでした。そこで我々は『血の華』の場所を探す道具を造りだしたのです」
陽明が懐から、今度は細く短い鎖に繋がれた小さな濃い赤色の石を取り出した。
鎖の端を持ち、石を吊り下げるとしばらく後、揺れ始める。
「この石は『血の華』に近づくほど激しく揺れます」
陽明は赤い石を掌中に戻した。
「近々、華を探索しようと考えていたのですが…」
陽明の眉間に、しわが寄った。
「今や、ここから動かせる者は奏、一人のみ」
陽明が奏を見た。
「しかし、魔祓いの技の効かぬ魔武士に襲われては、ひとたまりもないでしょう」
「………」
「そこで身勝手なお願いとは重々、承知して、あなたに奏を守っていただけないかと」
陽明と奏が揃ってターシャに頭を下げる。




