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今や重軒と魔雑兵たちは折り重なり、ひとつの塊の如き有り様となった。
「し、死ぬぶひっ!!」
重軒の頭骨がひしゃげ、砕け散る。
魔雑兵たちの無惨な死体の上に紅が立つ。
「あばよ、悪党」
紅が言った。
黒楽器を手にしたまま、里の外へと歩きだす。
「ま、待ってください!!」
紅の前へと飛び出し、両膝を着いた者が居た。
響である。
紅に土下座した。
額を地面に擦りつける。
「お、俺を弟子にしてください!!」
紅が止まった。
じっと響を見つめる。
相手の無言に顔を上げた響と眼が合った。
紅の美しいが冷たい、まるで地獄そのものを覗き込んでいるのかと錯覚する瞳。
否。
響は気づいた。
一見、恐ろしく冷ややかに見える双眸の奥深くに、火山の噴火の如く猛々しく荒ぶる炎を。
けして折れない激しい情熱を。
紅も響の両眼に映るものに気づいた。
それは絶望だ。
大切なものを失ったとき、そして自分が無力だと知ったとき。
絶望は襲ってくる。




