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そして京を離れ、この場所へとたどり着いたのだ。
潤沢な資金や設備は失ったが、自身が納得するまで材料や意匠を吟味できる環境は操の性分に合って、すぐにしっくりと馴染んだ。
自分の造りたい道具に影響が出ない範囲で、魔祓いの力は無いかんざし、小間物などを造り、京に居た頃、懇意にしていた行商人の道程に組み込んでもらい、資金を稼ぐ算段も上手くいった。
全てを一から考え造りあげた「魔祓いの首飾り」は、去年の春に完成した。
我ながら会心の出来で、京に居たときは感じなかった満足感を得られた。
もちろん、完全に満足したわけではないが、手応えを感じたのだ。
完成した首飾りは、陽炎という名の忍びに無償で与えた。
世の中から悪しきもの、「魔」が少しでも消え去るなら、それで良かった。
首飾りを渡してから、ひと月ほど経ち、陽炎が操の小屋を訪れ「『魔祓いの首飾り』が、この世を救う大きな助けになりました」と告げたことも自信に繋がった。
自分の生き方は間違っていないと確信できた。
そこから二作目の作成に取りかかった。
「魔祓いの指輪」である。
そして今、まさにそれが完成したところであった。
陽の光にかざすと指輪にはめられた魔祓いの石が、橙色にきれいに輝いた。
「それは魔祓いの道具だな!」