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紅を里の住人だと勘違いしていた。
「早く連れてこい。あいつもおやつにする」
重軒がそう言うと、周りの十人の魔雑兵が刀を抜き、紅へと歩を進めた。
「ぎぎぎぎぎっ!!」
紅の口から、男とも女とも言い難い大きな声がした。
一瞬、魔雑兵たちが呆気に取られる。
「ぎぎぎぎ義躱鴉!!」
右腕の入れ墨が黒楽器へと変化する。
ギュギュギュギュ。
紅が黒楽器を掻き鳴らした。
ギュイイイインッ!!
音が収まると同時に、紅が黒楽器を振りかざし魔雑兵へと突進する。
紅が弦を再び鳴らす。
黒楽器から刃が飛び出し、回転した。
すさまじい速さで回転する刃が、魔雑兵たちを次々と切断していく。
血煙の舞う合戦絵図。
しばしの後。
十人の魔雑兵は全て屠られ、紅だけが立っていた。
「ぶ」
重軒が口を開く。
「ぶひーっ!!」
大きな怒声を上げた。
「ぶひ殺してやる!! お前ら、進め!!」
輿を担ぐ魔雑兵たちに号令した。
魔雑兵たちが前進し、紅へと突っ込んでいく。




