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職人の作業着姿の響は、魔雑兵によって引っ立てられ、里を襲う指揮を執った者の前へと座らされた。
周りは十人の魔雑兵が、ずらりと囲んでいる。
里の中央にある広場であった。
響は眼前の魔武士を見上げた。
相手が恐ろしく巨漢であったためである。
十尺(一尺約30㎝)はあろうかという体躯。
しかも、異常に太っている。
魔武士が座った輿を魔雑兵十人が支えていた。
「ふあー」
魔武士が、あくびをした。
「こいつが最後か?」
魔具足の兜の下の両眼が、ぎろりと輝く。
魔鉄を埋め込まれた顔は、やはり黒い。
「はっ、重軒様!」
魔雑兵の一人が答えた。
「うーん」
重軒が響をねめつけた。
「おやつには丁度、良い」
(おやつ!?)
響は恐怖した。
この怪物たちは人間を喰らうのか?
響の顔が青ざめたのに、重軒が気づいた。
「ああ。これはボクちゃんだけの趣味だよ。それでなくても腹が減るから。お前なら、三口くらいで食べ終わるかな」
重軒が、ぶひひっと笑った。
「輿に上げろ」
重軒の指示で周りを囲んでいた魔雑兵たちが、響を輿に放り上げた。
身体を打ち「うっ」となった響に重軒が右手を伸ばす。
響の奥襟を掴んで、持ち上げた。
響は魔祓いの腕輪を身に付けていたが、何の効果も無い。




