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「良かった。射撃の腕は鈍ってない」
事ここに至り、ようやく骸門は自身に振りかかっている事態を把握した。
「お、おのれ!!」
刀を抜き、女へと突進していく。
女が両手の短筒を構え、二丁同時に発射した。
二発の弾丸は骸門の双眸を正確に捉え、頭部を撃ち砕いた。
骸門が倒れ、動かなくなる。
呆気にとられ、ただただ様子を窺っていた奏が我に返り、女の側に駆け寄った。
奏が女を見つめる。
「あ」
女が言った。
「これですか? これはハンドガンという、私の国『未来』の武器なんですよ」
「………」
「えへへ」
あまりに見つめられ、女がはにかんだ。
「あなたはいったい?」
奏が訊いた。
「私は」
女が答える。
「ターシャといいます」
にっこりと笑った。
京の魔祓い師たちが魔祓いの道具や武器を造るための元となる、魔祓い石を採掘し加工する里。
深夜である。
魔祓い師たちの組合屋敷からは、そう遠くない山間にある、その里が今や魔武士たちの手によって全滅させられようとしていた。
あらゆる魔祓い石は奪われ、使い物にならぬよう、叩き壊された。
鉱夫と職人も次々と殺され、とうとう最後の一人、見習い職人の響を残すのみ。
響は十六歳。
女にしては大きく、たくましい身体つきで、やや赤みがかった髪は短い。
 




