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武丸が光る板に右手をかざすと、映し出されていた紅の姿が徐々に透明となって、最後には完全に消失した。
満開の桜の下で一人の男が立っている。
片山正雪であった。
心地よい風に揺れる何とも形容し難き美しさの桜の花たちを見上げながらも、正雪は何やらそわそわと落ち着かない。
「あ」
正雪が声を上げた。
丘のなだらかな傾斜をこちらへと歩いてくる女の姿が見えたからだ。
「おーい」
正雪が手を振ると、女もこちらに気づいた。
女が走りだす。
あっという間に丘を駆け上がった女は、桜の木の下で正雪に抱きついた。
正雪も女を抱きしめる。
「先生、待たせてごめん」
正雪に抱きついた女、紅が言った。
「いいさ」
正雪が笑った。
「君のことだから…」
「何?」
紅が口を尖らせる。
「おおかた、悪い奴らを懲らしめていたんだろ?」
「あはははは!!」
満面の笑みで紅が笑う。
心底から楽しそうな笑顔だ。
「当たり!!」
満開の桜の下、二人は口づけを交わした。
おわり
最後まで読んでいただき、ホントにありがとうございます(*^^*)
大感謝ですm(__)m
さて「異戦国」シリーズは次作の「モノクロ」へと続きますが、果たしてどうなりますことか?




