14
その物体が庭の土を巻き上げ、重量による勢いで長い距離を進み、停止する。
七尺(一尺約30㎝)ほどの長さの銀色の塊の前後に二つの黒い輪が取りつけられ、地面と接している。
前の輪の上部には曲線を描く薄い板が固定され、その下には左右へと突き出た二本の短い出っ張りがあった。
後ろの輪の上あたりの胴体部がへこみ、その上に一人の女が乗馬の体勢の如く跨がっている。
女の両手は、先ほどの二本の短い出っ張りを握っていた。
二十代前半の女。
肩までの髪は屋敷を燃やす炎に照らされ、きらきらと輝く金髪。
眼鏡をかけている。
肌は非常に白く、大きめの瞳は濃い青色。
顔には少々の、そばかす。
日の本の出身には見えない。
何やら、あどけなさを残した愛嬌のある風貌であった。
両腕は二の腕の辺りまで、両脚は膝あたりまでしか隠せない、上半身と下半身が完全に分かれた奇妙な着物を着ていた。
上半身の布一枚の着物には、ふんどしではない真っ黒な布だけを穿いた筋骨隆々の二人の男の一人が、もう片方を投げ飛ばしている様子が描かれている。
足に履いているのは、わらじではなく足全体を包む布と交互に捻られた紐のついた、奇妙な物であった。
女は銀色の物体に乗ったまま、あまりの事態に言葉を失っている骸門たちに顔を向けた。




