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「紅、耳を貸すな!!」
正雪が叫ぶ。
「このまま二人で幸せに暮らそう!!」
正雪の言葉にも、紅は少年武士から眼を離さない。
少年武士のきらめく瞳と紅の瞳が見つめ合う。
「お前の反骨とは、この程度だったのか!?」
「反骨…」
「ずっといっしょに居よう! 君を愛してる!!」
「私はかつて、絶望の淵に追いやられた」
少年武士が語り始めた。
「何度も諦めそうになったが、それを乗り越えて今の私がある」
「乗り越える…」
「そんな子供の話は聞くな!!」
「私を立ち上がらせたのは姉への想いもあったが…その大元は義憤!! 悪を許さず、世を正す意志!! お前が私に語っていたものと同じだ!!」
「義憤…反骨…魔武士を許さねえ…」
「愛してるんだ!! ずっと二人でここに居よう!!」
「うるせえーーーっ!!」
紅が隣の正雪の顔面に右拳を叩き込んだ。
正雪の鼻が曲がり、歯が折れ、鮮血と共に吹っ飛ぶ。
紅が少年武士へと向き直る。




