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奏は十七歳。
胸までの真っ直ぐな黒髪。
前髪は眉上で横一直線に切り揃えられている。
瞳はくりりとして、かわいらしい顔立ち。
細く、小柄であった。
浅葱色の魔祓い師の着物に身を包んでいる。
燃え盛り、屋根まで及んだ火勢を絶望的に見つめる奏を追って、骸門と四人の魔雑兵が庭へと下りてきた。
骸門と魔雑兵たちの容姿は、二月前に紅に殺された魔武士たちと、ほとんど変わらない。
骸門は骸造より、やや横幅がある程度か。
「小娘、逃がさぬぞ! 魔祓い師は全て殺す!」
こちらに来る五人を見て、奏は指で印を結び、ぶつぶつと何かを唱えた。
事前にこうすることで奏は、魔を祓う技を発揮できるのだ。
すなわち。
奏が口を開け、澄みきった歌声を響かせる。
奏の技、魔祓いの歌。
本来であれば、この歌を聴いた『魔』は苦しみ始めるはずだが。
「ふはは!!」
骸門が笑った。
やはり。
やはり、魔具足を着け、魔鉄を身体に埋め込んだ魔武士たちには魔祓いの技は一切、効果が無い。
奏の歌は常人には心を癒す美しさではあったが、目の前の怪人たちにとっては耳汚しになる雑音に過ぎないのだ。
奏は唖然とし、歌を止めた。
骸門が奏へと右手を伸ばす。
刹那。
けたたましい重低音と共に、何かが魔祓い師屋敷の高い壁を飛び越え、庭に着地した。




