123/143
123
大太刀の風切り音を聞いた四人の女たちに、同時に異変が起こった。
紅は一瞬のうちに違う場所に居た。
そこは。
正雪の家であった。
長年、住んでいた家を見間違うことはない。
「なっ!?」
思わず、紅が声を出す。
無理もない。
先ほどまで、巨大魔武士の頭の中で魔獣激情斎と相対していたのだから。
「どうした、紅?」
部屋の襖が開く。
そこには死んだはずの正雪が立っていた。
奏はターシャからハンドガンを受け取った。
「奏さん、『魔弾』を激情斎に撃ってください」
ターシャが言った。
奏は頷き、ハンドガンに「魔弾」を装填した。
(あれ?)
わずかな疑問が頭をよぎる。
自分はハンドガンを触ったことすらないのに何故、流れるように扱えるのだろう?
(いえ。今は激情斎を倒すのに集中しないと)
奏がハンドガンを構える。
仁王立つ激情斎の頭に狙いを定める。
引き金を引く。




