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振り返った紅の顔が歪み、肌色が黒ずむ。
「はっ!?」
操が息を飲んだ。
紅が後ろへ跳び、操から離れる。
紅の肌色が元に戻った。
「では、あなたは…」
操が言った。
「『魔』なのですか?」
紅は答えない。
操に背を向けて歩きだす。
「紅さん、ありがとうございました!」
操が頭を下げる。
紅の足が止まった。
横顔だけ、振り返らせる。
「礼はいらねえ。あたしはあたしの反骨を貫いただけ」
そう言うと紅は、操の前から去っていった。
紅が骸造を真っ二つに屠った日から、二月後の深夜。
かつて操が在籍していた、京にある魔祓い師たちの組合所が魔武士たちに襲撃された。
魔武士、骸門と魔雑兵四人が、次々と魔祓い師たちを血祭りにあげていく。
魔道具は、ことごとく壊され、屋敷には火が放たれた。
魔祓い師の一人、奏は火を逃れるため、屋敷の庭へと飛び出した。
立派な庭園には池と、それに架けられた橋がある。