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ここから巻き返しをはかるべく、骸造が両手に力を込めた、その刹那。
紅が黒楽器の弦を掻き鳴らした。
骸造の顔面の間近まで迫っていた黒楽器の板の部分の外周全てに突如、ぎざぎざの刃が飛び出す。
「なっ!?」
骸造の血走った両眼が刃を見つめる。
刃が動きだし、外周を高速で回転し始めた。
鋭い刃が骸造の兜と顔面に当たり、まるで紙でも斬るが如く切断していく。
「あばばばばっ!!」
黒楽器を挟んでいた骸造の両手から、力が抜けた。
黒楽器が、ぐいぐいと前進し、骸造の身体を頭から股まで真っ二つに斬り裂く。
回転していた刃が、黒楽器の中へと戻った。
血まみれになった黒楽器を紅が再び、肩にかける。
骸造の死体が左右に割れて、操から紅が見えた。
骸造の身体が地に倒れる。
「あばよ、悪党」
紅が言った。
黒楽器を背中側へと回し、歩きだす。
小屋を離れ、川に続く下り坂へ降りていく。
「お、お待ちください!」
操が紅に駆け寄った。




