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「ターシャさん!!」
奏の悲痛な叫び。
奏は思う。
ターシャと同じ戦装束を持つシーカは、おそらく「未来」国からやってきた敵。
その力は、奏など歯牙にもかけぬだろう。
しかし、ターシャが、このまま倒されるのを見過ごすことは出来ない。
バイクを自分で動かせたなら、乗ったまま突進するのだが。
(こうなったら)
生身ひとつで、シーカに挑みかかるのみ。
たとえ、瞬殺されようとも。
奏が悲壮な覚悟を決めた、そのとき。
一陣の風が、奏の横を疾り抜けた。
それはシーカの背後へと猛進すると空中に跳び上がった。
「ぎぎぎ義躱鴉!!」
紅だ。
風の正体は、いずこかより突如、現れた紅だった。
奏の隣に響も駆けてくる。
空中で黒楽器を装着した紅が、弦を掻き鳴らす。
黒楽器より飛び出した無数の刃が回転しながら、シーカの後頭部へと叩き込まれる。
黒楽器の刃とシーカの兜が、激しい火花を散らす。




