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ここで娘の様子が変わった。
接近してくる魔武士たちのさらに向こう側、街道を走ってくるターシャのバイクが見えたからだ。
「うわっ!! もう来たじゃん!! ヤッべ!!」
娘は慌てて、その場に伏せた。
これは二人の魔武士からすれば、逆らってみたものの相手の恐ろしさに気づき、怯えだしたのだと映った。
「何だと、女!!」
「もう一度、言ってみよ!! その細首、はね飛ばしてやろうか!!」
そこへ、ターシャがやって来たのであった。
時を元に戻そう。
ターシャの前に仁王立ちしている娘の容姿が、一瞬で変わる。
髪は伸び、栗色になった。
頭の左右で髪が括られている。
顔色は褐色になり、唇には真っ赤な口紅。
ターシャは娘の左手首に、自分の物と同じ細い帯が巻かれていると、ようやく気づいた。
「あなた…『TC』ですね!!」
ターシャが言った。
「気づくのが遅せえんだよ、このクソが!!」
娘が凶悪な表情で怒鳴る。




