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特に腹部への打撃の影響があった。
娘がターシャの前に仁王立つ。
「クソが!!」
娘が吐き捨てた。
「殺す気でいったのによー。凌いでんじゃねえぞ、このクソが!!」
端正とも言える娘の顔が、激しい憎悪を浮かべている。
「ええ!? あ、あなたは…?」
ターシャが乱れる息を必死で整えつつ、訊いた。
ここで時を少し戻してみよう。
畑の何も無い空間から突如、現れた百姓姿の娘。
「クソが!!」
つばを吐く。
「こんな小細工、使わなくても『時間管理局』のエージェントくらい、余裕で潰せるっつーの!!」
娘が悪態をつく。
「あん? 誰か来たな」
前方より、二人の魔武士。
二人が娘をにらむ。
娘も負けじと、にらみ返した。
「何だ、小娘!!」
魔武士が怒鳴る。
小柄な娘だ。
十七、八といったところか?
短髪の黒髪。
大きな瞳。
整った、かわいらしい顔。
しかし、その表情はふてぶてしく、感じが悪い。
「うるせえな、クソが!!」
娘の言葉に、二人の魔武士は顔色を変えた。
「未来」より来た恐ろしい風貌の自分たちが、まさか普通の小娘に罵倒されるとは思わず、やや、たじろいだ。
が、すぐに怒りに火が点く。
「おのれ!!」
娘へと二人が詰め寄る。




