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危険も恐れはしない。
義憤を悪に、ぶつけるのみ。
そんな自分の姿を見て、響は魔武士との戦いに我が身を投じると言う。
気持ちは分かる。
響の状況は、自分と通ずるものがあるからだ。
しかし、もし戦いで響が命を落としたら。
本人が望んだ結果と割りきれるだろうか?
おそらく、激しく後悔するはめになるだろう。
では、響には黒楽器を教えず、置き去りにするのが正しいのではないか?
だが、それも我が身に置き換えたとき、もしも武丸に見捨てられていたらと思うとなかなかに、そうはし難いのであった。
連れていくならば徹底的に黒楽器を教え込み、響自身を魔武士と戦えるようにするのが、やはり良い答えに思えた。
「少し休んだら」
紅が言った。
「また始めるよ。もっともっと上手くなりな」
「はい!!」
響が満面の笑みで、元気よく答えた。
「血の華」の花びらを手に入れ「魔弾」を完成させたターシャと奏はバイクに乗り、魔武士総大将「魔獣激情斎」への道をひた走った。
その道中。
天上に太陽輝く下、うらびれた元街道から見える、一軒の小ぢんまりとした家屋のそばの畑の中で、二人の魔武士を発見した。
魔武士たちは地に伏した百姓姿の娘をにらみつけ、何かをわめいている。
「わ」
ターシャが慌てた。




