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紅の足元には魔雑兵の四つの死骸。
紅は黒楽器を右肩に担いだ。
骸造を、きっとにらむ。
左手を前に出し、上に向け、指をくいくいと動かした。
「かかって来い」という仕草。
この挑発に骸造は怒髪天を突いた。
「女、許すまじ!!」
長刀を抜き放ち、紅の前に仁王立つ。
八相に構えた。
「魔武士たる俺を魔雑兵ずれと同じと思うなよ! 素っ首、はね落としてくれる!!」
骸造の刃が紅へと飛ぶ。
紅の黒楽器が肩から下に振り下ろされ、その勢いを乗せて、さらに上方へと跳ね上がった。
板の先端が骸造の刀を弾き飛ばす。
骸造の手より飛んだ刀は空中を回転し、地面に突き立った。
「ぬおおっ!!」
狼狽する骸造の頭へと黒楽器が上方から襲いかかる。
あわれ、骸造も魔雑兵と同じ運命かと思われた瞬間。
「でやぁーっ!!」
気合いと共に骸造の両手が黒楽器を顔面の寸前で左右から挟み、受け止めた。
「がはははっ!!」
骸造が笑った。
「見たか、この骸造様の真剣白刃取り!」