後日談2
此処で第二章完結になります。
本当は後日談は一話に纏めたかったんですけどね(^_^)a
それから旧タイトルを削除させて頂きますので。宜しくお願いします。
戦艦アルビレオの医務室から出て戦艦グラーフへと帰還する。俺は機体の様子を見る前に一度ネロを自室に置いて行く。ネロをよく見たら充電が減ってたみたいだからな。
なのでネロを充電器にセットしてから格納庫へと向かう事にした。
すると何やら少しだけ騒いでる雰囲気があった。何事かと思い見てみるとクリスティーナ少佐とアズサ軍曹が何故かバレットネイターの前で睨み合っていた。
「良い加減に帰って欲しいんスよ!迷惑なんスよ!」
「別に貴女に用は無いわ。私は今回も一緒に共闘したキサラギ准尉に用があるの」
「それが何スか!自分だって何回もバディ組んでるんスからね!まあ貴女はもう直ぐお別れになるんスけどね〜」
「ッ!キサラギ准尉におんぶに抱っこされたままでバディ?せめて彼の機体に付いて行ける機体に乗ってから言いなさい」
「自分はしっかり援護出来てるんで問題無いッス!大体余計なお世話ッスよ!」
「へぇ?余計なお世話?彼に合わせなくて何がバディよ。あの動きに付いて行けないなら何れキサラギ准尉は死ぬわ。貴女が彼の足枷になってるのよ」
「にゃ、にゃ、にゃんだと!今の言葉は訂正するッス!」
「貴女だけでは無いわ。スマイルドッグに所属してるパイロット達も同じよ。キサラギ准尉の足を引っ張る真似は絶対にやめなさい。彼を無駄死にさせたいの?」
しかし、クリスティーナ少佐は俺の同僚達と仲良くする雰囲気は微塵も無く、冷たい眼差しを向ける。然もクリスティーナ少佐は非常に整った美人さんなので怖さも倍増だ。
「やれやれ、こんな場所でも世話が掛かる。勘弁してくれよな」
俺は一言愚痴を吐きながらクリスティーナ少佐とアズサ軍曹に近付く。このままでは【心躍るキャットファイト!ポロリもあるよ♡】が開催されてしまう。
個人的には見てみたいが、現実としてはガチの殴り合いが行われる悲しさだ。
「人が病み上がりだと言うのにお出迎えも無しかよ。全く、今や俺は時の人だぞ?サインが欲しければ金払って並べよ」
「キサラギ准尉!良かった。無事だったのね」
「先輩!目が覚めたんスね!」
「おうよ。で、こりゃあ一体何の騒ぎだ?原因は俺とか言うなよ。社長にバレたら小言を言われかねんからな」
俺が疲れた感じに言うとクリスティーナ少佐は目を少し俯かせ、アズサ軍曹は明後日の方を向きながら頬を掻く。
「その、私は貴方が心配で」
「自分もッス。でもこのエルフが私達を貶すんスよ。何なんスか?」
「私は事実を言ってるだけよ。それが悪い事かしら?」
「だったらその性格直した方が良いッスよ。でないと好かれる物も好かれ無いッス。因みにコレは事実ッスからね」
「貴女に心配される必要は無いわ。余計なお世話よ」
そして再び睨み合う二人。仲良しとはベクトルは違うがな。
「はぁん。まぁ、どれもこれもどうでも良い事だな。意味の無い事で喧嘩すんなよ」
俺がそう言うと今度は此方を睨んで来る二人。やっぱり此奴ら仲良しかな?
「それはどう言う事かしら?」
「そのままの意味だぜ。大体、俺は誰と組んでも戦果は出せるんだよ。それに、ずっと同じ奴と組むつもりか?相方が負傷して動けなくなった状態でも無理矢理引っ張ってく気かよ」
「そうは言ってないわ。唯、私は貴方の為を思って」
「それこそ余計なお世話だよ。俺の事は俺が一番良く知っているからな。その俺が言うんだ。間違いねぇよ」
そう言うとクリスティーナ少佐はショックを受けた表情になる。だが、それはそうだろう。オペレーション・ブレイク・ホームの時に組んでたにも関わらず、こんな風に一蹴されたのだからな。
俺が逆の立場なら殴り掛かるか二度と組まねぇだろうよ。
それが例え気になる異性だとしてもだ。
「えっと、流石に言い過ぎな気がするんスけど」
「知ってるよ。だが事実は言わなければ伝わらない物さ。だが世の中てのは面白い物でな、言った所で信用はされないんだよ。勿論黙っていれば永遠に分からないけどな」
取り敢えず先程まであった険悪な雰囲気が拡散したのを感じ取りながら話を続ける。
本来ならこんな大っぴらな場所では言いたく無かったんだがな。何でアルビレオで大人しく待って無いんだよ。
こう言う小っ恥ずかしいのは苦手なんだ。
「所で、クリスティーナ少佐。一応、まぁ……お礼は言っときますよ。あの時のギフトが無かったら多分、死んでましたからね」
「あ、ううん。気にしないで。結局貴方は重傷を負う結果になったもの」
「軍医から聞きましたよ。身体自体は非常に頑丈だったと。現に後遺症は無いと太鼓判押されましたからな。ですから、この借りは必ず返します」
「そんな……別に良いわよ。私が勝手にやった事だし。借りとか、そんなの要らないから」
「それでもですよ。何か有れば連絡下さい。可能な限り少佐殿を優先させて頂きますよ」
そして今度は此方をジト目で見ているアズサ軍曹に視線を向ける。やはり猫耳がピコピコ動くのは癒される。
「アズサもお疲れさんな。お互い無事に生還出来た事を喜ぼうぜ」
「先輩……そうッスね。それに、先輩はあの馬鹿でかいオーレムを倒した張本人ですもんね!今日はパーティ開いちゃいますか?」
「お?良いじゃねぇか。スーパーエースで英雄様の凱旋パーティだ。派手に盛り上げろよ!早速社長に連絡して経費で落とそうぜ!」
「流石先輩ッス!一千万クレジット手に入れた人には全然見えないッス!」
「だろ?それに、俺は社長の嫌がる顔を見るのが大好きなんだ。あの守銭奴面が苦渋に歪む瞬間が堪んねぇんだよ」
「貴方、その考え方は最低よ。今直ぐ直しなさい」
「嫌です。他人の不幸とか大好き!自分の幸運はもっと大好きだ!俺はこんな最低な台詞を平然と言える人間だからな。覚えとけよ!」
余りに自分勝手な発言に二人からだけで無く、周りからも軽蔑の視線と非難の声が出る。しかし、そんな声など知らんとばかりに耳の穴を小指を使い掃除する。
「序でにエルフェンフィールド軍の連中も呼ぼうぜ。パーティなら人数多い方が盛り上がるだろ」
「場所はどうするんスか?」
「戦艦同士ドッキングさせれば良く無い?後は輸送艦使うとか」
「輸送艦とか私達のしか無いじゃない」
「なのでセシリア准将の説得は任せましたよ。クリスティーナ少佐殿。貴官の健闘を期待する」
「期待してるッス」
俺とアズサ軍曹はクリスティーナ少佐に対し、しっかりとした敬礼をする。無論そんな事では許可は降りるはずもなく断念せざるを得なかったが。
「大体私一人だと無理よ。その、キサラギ准尉も一緒に来てくれたら……」
「あの怖い視線を一緒に浴びるの?無理だよ」
「私だって姉さんの視線は怖いんだから。お願い……一緒に来て」
この時、俺の中の胸の鼓動が速くなる。クリスティーナ少佐の上目遣い。たったそれだけなのに鼓動が乱れる。
「お、おう。まぁ、何だ?うん。美人にお願いされたら、男としては頷かざるを得ない……かな?」
「本当に?」
「別に、拒否する事でも無いし。そもそも俺が勝手に言ってるだけだし。大体ク、クリスティーナ少佐が無理する必要とか無いし」
内心ヤバいと思ってしまった。何とか速まる鼓動を落ち着かせようと深呼吸するが、ふわっとした良い香りが鼻腔を貫く。それが一段と鼓動を速め赤面が表に若干出てしまう。
そんな俺の姿を一早く察知した猫娘こと、アズサ・ニャメラ軍曹。全く面白くない表情をしながら俺の袖を引っ張る。
「先輩!自分が少佐と行きます!ですから先輩は待ってて下さい!」
「いや、俺が行くわ。此処はビシッとした姿を見せた方が良さげだし」
俺がそう言った瞬間、アズサ軍曹の頭の中のナニカが切れた。
考えてみて欲しい。今迄気になる男性の見た事が無い表情に加え、気に入らないエルフの女に対して甘い態度を取る。更に言うなら若干良い空気を醸し出す始末。
それは本能的な物だろう。自分の縄張りに土足で侵入する敵を追い払う必要がある。と言う考えに行き着くのは。
アズサ軍曹はキサラギ准尉の服の袖を思いっきり引っ張った。然も獣人としてのパワーをガッツリ使って。
「フ、フニャアアアー‼︎」
「おい⁉︎や、止めろって!いきなり何して、俺の服を引っ張るな!」
「ウニャー!先輩のバカバカバカー‼︎」
「本当に止めろって!服が破けッ⁉︎」
ビリリリー!と言う音と共に俺の上半身の服の前の部分が破ける。それと同時に《Oh Yeah!》の効果音が脳内再生される。序でに御天道様の真下に我輩の肉体美が晒される。
「ひ、酷い。俺が一体何したと言うんだよ……」
「だ、大丈夫?ほら私の服貸して上げるわ」
クリスティーナ少佐は自身の軍服を脱いで俺の肩に掛ける。正に出来た女が其処に居た。
(やだ、何その行動……惚れちゃう)トゥンク
僅かな胸のトキメキを改めて感じながらクリスティーナ少佐を見る。うん、やっぱり美人です。
しかし余計に面白くない展開に再び獣人の本能が牙を剥く。
「フゥ〜……フニャアアアー!」
「だから止めろって!やめ、ヤメテエエエ‼︎」
いやああぁぁと言う悲痛な叫び声と共に再びビリリリー!と言う音が鳴り響く。今度は背中側の部分が破けてしまう。それと同時に《キレてるよ!》の掛け声が聞こえる。今言ったの何処のどいつだ!
後、野郎の上半身とか本当に誰得になるんだよ!
「畜生……一体何なんだよ。このオチを誰が収拾付けると思ってんだよ」
「ふーんだ。先輩が悪いんスもんね」
「このニャンコ娘め。今度お前の部屋の中にマタタビ大量にブチ込んで卑猥で蕩けた表情晒さしてやんよ!」
「先輩の最低ー!」
「今のお前に言われとうないわ!」
結局最終的に俺が悪者扱いとなり幕を閉じる事になった。別に美人に見惚れるくらい良いじゃん。そう思うだろ?
因みにこの後は社長にマザーシップ撃破した張本人の帰艦祝いと復活祝いパーティを直接本人の所に行き、マグナムを片手に持ちながらお願いしに行った。そうしたらデカい溜息を吐かれた後に許可が降りた。
何故許可を出したのかと聞いたら、エルフェンフィールド軍でも一部の物好きが俺に会いたかったらしい。因みに弾は入ってないから関係無いさ。
「モテる男は辛いね。まぁ、悪い気分では無いけど。社長、俺の給料倍プッシュしても良いんすよ?」
「なら貴様はナナイ軍曹に対するセクハラをやめておけ。いつか本当に訴えられるぞ」
「ハハハ!そしたら、まな板部分を撫でますわ!そこなら犯罪にはなるまい!」
「ブフゥ!ば、馬鹿者!余計に怒らせる事をするで無い!彼女は優秀なオペレーターなのだぞ!」
「と言いつつ笑ってる社長でしたとさ」
「喧しい!全く、退院しても相変わらず変わらん性格しおって」
「しおらしい自分が見たいんですか?俺は勘弁願いたい物ですがね。想像したら鳥肌立ちましたし」
「少しだけ抑えろと言っとるんだ。馬鹿者め」
しかし、お互い不思議と笑みを浮かべたままなのは如何なのだろうか?まあ悪い雰囲気では無いので良い事だろうが。
「所で社長、話は変わりますが…… 連中の動きは?」
「聞きたいか?」
「勿論。唯、社長に焦りが無い辺り上手く避けれたと思いますが」
社長は鼻息荒く吐きながら葉巻にを取り出し火を着ける。
「貴様が寝こけてる間に色々と動きはあった。特に【OLEM保護団体】に関しては三大国家領内より掃討作戦が現在も行われておる。それこそ一部の大企業幹部が捕らえられるくらいにな」
「へぇ、大企業の幹部がですか?」
「特に帝国では躊躇無く行っておる。それこそ連邦以上にな」
「やり過ぎて逆に怪しく見えるパターンですな」
OLEM保護団体はガルディア帝国の偽装工作により完全に吊し上げ状態になっている。恐らくOLEM保護団体は辺境の宙域へと果てなき逃走をするか、消滅するかの何方かだろう。またOLEM保護団体と繋がりがあった企業や組織に関しても調査を行なっているらしい。
「その通りだ。貴様の言う通り帝国はやり過ぎてしまった。お陰で連邦と共和国が第三国家による帝国に対し内部調査案を帝国に提出した。流石に承認はせんかったが、それくらい怪しまれとると言える」
「成る程。後はこっちに飛び火が来ないかどうかですが」
「其処も問題は無い。どうやら連中は上手くやってくれたらしい。既に依頼に関する件は全て削除されていた。履歴に関してもだ」
「其処はプロという訳か。だったら最初からアイリーン博士を逃すなと言いたいがな」
帝国も最低限の事はやってくれたらしい。まあブルーアイ・ドラゴン勲章持ちで、マザーシップを撃破した人間を吊し上げには出来んわな。そうしたら間違い無く任務内容は暴露され、エルフ共との関係も悪化しそうだし。
まさかこんな形で勲章が役に立ってくれるとは。売らなくて良かった。
「マザーシップと惑星ソラリスに関しても同様に現在も調査、行方不明者の捜索中だ」
「生存者は居ないんでしたっけ。嫌な話ですね」
「昨日、一部の捜索隊が戻った時にメディアに放った言葉が【ソラリスは地獄だ】だそうだ」
「有名所の台詞ですな。唯、簡単には使われない台詞回しなんですがね」
「映像は現在は非公開の為、世間一般では回らせてはおらん」
「生存者が零と言われてますからね」
「にも関わらず連邦から一部調査報告書が送られて来おった。よっぽどお前を逃したく無いらしい」
「えぇ?マジッスか」
報告書が纏められたタブレットを此方に見せる社長。俺は見たくないと無言で首を横に振るも、無言でタブレットを投げ渡された。
「やれやれ、下手に関わりたく無いんだけどな」
「安心しろ。暫くは熱りが冷めるまで共和国領内へ行く。だが、お前のお陰で連邦との強いパイプが出来たのは確かだ」
「じゃあボーナス割増?」
「……考えておく」
珍しくボーナス割増を検討する社長。そんな社長を見て心配してしまう。何故なら社長はドケチの守銭奴なのだからな。
「社長……オーレムに洗脳されました?考えておくとか言っちゃって。頭大丈夫?」
「ボーナスカット!」
「酷いねぇ。人が心配して言ってあげたって言うのにさ」
「何処が心配しとるんだ!馬鹿者が!」
社長に怒られながらもタブレットを弄りながし読みする。しかし内容が思ってた以上に深かったので社長に聞いてみる。
「社長は中身見ました?」
「見とらん。その情報は貴様宛てだからな。それから、その情報は見たら必ず削除する様に。そうしたら連邦の駐屯基地に送らねばならんのでな」
「はぁん。よく見たらこのタブレット連邦の物ですね。然もご丁寧に削除ボタンも有るし」
オーレムの生態は今でも不明瞭な所が多い。しかしマザーシップの登場により大分解決したのが分かる。
だが、どう考えても世間には見せられない内容も有る。
(惑星ソラリスでの現状について。救難信号の使用に、触手内に住人、軍人のDNAを確認か。完全にヤバい奴じゃねえか)
恐らくマザーシップは住人や軍人を体内に取り込み全てを吸収したのだろう。それこそ文字通りに全てだ。
(嫌だねぇ。俺があの時制止の言葉を無視してトリガーを引けば、未然に防げたかも知れないとはな)
中々嫌な事実まで露呈されるとはな。連邦のお気遣いに感謝感激だよ。全く。
「それから連邦と帝国の関係がかなり悪化している。最悪大規模な武力衝突が起きる可能性がある。その為にも使えるパイロットは確保しておきたいと思っておるのだろう」
「自分所の兵士を使えば良いのに。それこそ禁断のアレを使えば良い」
「アレは既に生産、開発禁止令が出されておる。それに、あの様な非人道的なシステムなど」
「それは正規市民にだけ適用する話ですよ。ゴーストは対象外です。それを知らない訳では無いでしょうに」
「……その為の禁止令だ」
「辺境の地にまで届くと良いですね。その禁止令がさ」
アレが非人道的なシステムなのは充分承知している。だがAW適性の無い奴でも自由に動かす事が出来るのも、また事実だ。
勿論メリットが有ればデメリットが盛り沢山なシステムなのは間違い無いのだけども。
「大戦時には少なくないパイロットが手術中に死んだ。また成功したとしても日常生活は困難を極めた」
「そりゃあね。幾ら自動化された日常とは言えキツい物はあるだろうな」
それでも今以上にAWを動かせる。正に自分の手足の様に動かせると言うのだ。
だから多くの志願者が集まった。適性が低い者達や無い者達が。そして一瞬の栄光と名誉の引き換えに大切な物を多く失った。
「当たり前の物が徐々に自分の中から零れ落ちて行く感覚。一体どんな気分なんでしょうねぇ?」
「知らん。だが発狂し自殺する者が後を経たんかったのも事実だ。だからこそ禁止されたのだ」
「精々世界が優しい物だと良いですな。そうすれば最低限のルールは守ってくれそうですからね」
そしてタブレットの削除ボタンを押してデータを消す。数秒後には【ALL DATA DELETE】の文字が出る。それを確認してから社長にタブレットを返す。
「中々興味深い内容でしたよ。聞きたいですか?」
「結構だ。さぁ、話はこれで終わりだ。儂はエルフの連中と話を付けねばならんのでな」
「社長なら上手く話を纏められると信じてますよ。それこそ経費を使わずに全部向こう持ちにさせる事もね」
「今回は貴様の為の祝い事だ。多少の金は出してやる。感謝しろよ」
「……感謝した後が怖いんだよなぁ。次回はどんなキツい任務内容になるのやら。最近キツいのしか無いから次回は楽なのを頼みますよ」
「貴様の幸運に祈っておけ」
「ラッキーボーイは返上したんでね。それでは失礼します」
こうしてアイリーン・ドンキース博士が招いたマザーシップによる人災は一応の決着がついた。しかし連邦と帝国の関係悪化に加え、様々な組織の動きが活発になる。
それから数日後にはガルディア帝国十三代皇帝が正式に惑星ソラリスへの謝罪を公表。今回の惑星ソラリスでの被害額を全額補償すると表明する。
しかし地球連邦統一政府はこれを拒否。事態は更なる悪化に拍車を掛ける結果となった。
何故連邦が拒否したのか。理由は簡単だ。犠牲者が余りにも多過ぎたのだ。その中には政府高官の家族や大企業の娘、息子達。更に有名俳優や選手など多数に渡る。
また宇宙全体を危険に晒した事でガルディア帝国への風当たりは非常に強くなる。この件ではガルディア帝国は即座に領内の情報操作を秘密裏に行い対処していた。
しかし、この情報のズレが何れ大規模大戦を引き起こす結果になるのは未来の話である。
それでも人々は信じるのだ。互いに手を取り合い難局を乗り越える事が出来るのだと。
部屋の中は相変わらず薄暗く、バイタルを確認する為のモニターが多数有る。そんな中でタケルはQA・ザハロフのトップでありタケル達の雇主とモニター越しに話していた。
【全く、嫌な展開だったよ。個の英雄なんて今時流行る物では無いんだけどね】
「仰る通りです」
【本来なら、あの後からが本番の筈だったんだけどね。僕のナンバーズ達がようやく脚光を浴びるチャンスだったのに。これも何もかも頭の壊れた奴の所為だよ。名前は確か……】
「シュウ・キサラギですね」
【そう。そいつだよ。今や時の人となっている英雄だよ。仕舞いには連邦名誉市民権まで与えようとしているそうだよ?凄いよねぇ】
「そう……ですね」
【フフフ……とっても良い表情をしてるねタケル。知り合いなのかい?】
「大した事ではありません。それよりレイナのデータは見ましたか?」
タケルはこれ以上突っ込まれた話をしたく無くて本題に入る。無論雇主は口元に笑みを浮かべながら静かに頷く。
【確認はしているよ。今回は思ってた以上に負荷が掛かったみたいだね】
「大群のオーレムに未確認のマザーシップが相手になります。また翡翠瞳の姉妹と競い合っておりましたので」
【それだけでこの数値かい?随分と軟弱な素体になったねぇ……破棄しちゃおうかな?】
破棄の言葉にタケルの表情が歪む。しかし雇主はタケルの反応を楽しむ様に見ている。
「お言葉ですがレイナの腕前と適性値は総合的に見れば上位に入ります。またレイナは貴方に対して結果を出し続けてます。それこそ他のナンバーズよりずっと」
【冗談だよ。冗談。僕もレイナにはまだまだ結果を出して欲しいと思っている。それに反抗もしない使い易い駒を失いたくは無いからね】
雇主にとって使い易い駒に過ぎない存在。代わりは幾らでも居るのだが、簡単に切り捨てると要らぬ恨みを身内から買ってしまう。
多少弄る癖があるのが雇主の悪い癖だが、恨みを買うまでには至らないので直す気は無いらしい。
【さて、詳細はまた後日伝えるよ。レイナに関しても落ち着くまでは待機状態にしておくように。以上だ】
「寛大な処置、ありがとうございます」
【君のその性格も嫌いでは無いからね。今回は乗って上げるよ】
そしてモニターから雇主が居なくなるとタケルはタブレットを取り出し最新のニュースを見る。
其処には今もマザーシップを倒したシュウ・キサラギの名前と顔写真が出されている。
「貴様には絶対にレイナを近寄らせない。どんな手段を使っても」
親の仇を見るかの様に顔写真を見ながら言い放つ。例えバイタル数値を改竄したとしてもだ。タケルはレイナが眠るカプセルへと近寄る。
決して触れる事の無いカプセルの中で静かに目蓋を閉じているレイナ。その表情を見てタケルは静かに呟く。
「俺達は……何時になったら過去から抜け出せるのだろうか。もし、抜け出せたら遠くへ行こう。誰も知らない遠い場所へ」
タケルの声は誰にも聞かれる事は無く消えて行く。それでも構わない。
レイナにシュウ・キサラギの存在を知られてはならないのだから。
はい第二章完結お疲れ様でしたー!イェーイ!ドンドン!パフパフ〜!(*゜∀゜*)
と言う訳で大規模オーレム戦が無事に終わりました。やはり此処まで継続出来たのも一重に感想、誤字報告、応援、ポイント評価、ブクマなどでしょう。またツイッターなどでも読んだ!とか面白かった!とかのコメントを見たからでしょう(╹◡╹)
また自分の我儘がふんだんに盛り込んだ物ですが、浪漫に同意してくれたり、別の意見を貰ったりして嬉しかったです(๑╹ω╹๑ )
第三章に関しては頭の中でこんな感じかな?くらいにしか出来てません。また三章に行く前に外伝を入れないと疑問符が出る状態になりそうなのでね(^_^)a
最後に改めて書かせて頂きますが沢山の高評価、感想、誤字報告など本当に有難う御座います。また次に投稿した際には宜しくお願いします(((o(*゜▽゜*)o)))
そして、この小説を気に入って頂けたら評価して頂けたら幸いです。
人は死ぬ前に走馬灯を見る。生前にそんな話を聞いた事がある。
理由は知らないが過去の思い出と言う奴が頭の中で過るんだそうだ。
生憎俺は何度か死に掛けた事はある。歩兵で戦場を駆けた時、MWに搭乗していた時、そしてマザーシップへ突撃した時。
他にも何度か死に掛けたが何れも走馬灯を見てる暇は無く、記憶にも残ってはいない。
だが、今の状況は如何だろうか?
乗機は破壊されコクピットから出た瞬間、敵機に45ミリサブマシンガンの銃口を向けられている。
此処で死ぬのか?そうだ、俺は死ぬ。
最早、抵抗する事に意味は無い。
だから決めた。最後は格好良く逝こうと。脇に抱えたネロを放り投げ、レイナから誕生日プレゼントとして貰った大口径マグナムを取り出し敵AWに向けて構える。
勝ち目など無い。だが逃げる訳には行かない。
それが……俺が出来る精一杯なのだから。俺の背中を追い続けた連中に出来る事だから。
そして、彼女に出来る唯一の格好付けだからだ。
夕陽を背景に銃口を向け合う一機と一人。
次回 第三章【過去】




