オペレーション・ブレイク・ホーム6
「さぁ、次の獲物はどいつだ!纏めてクレジットに換金してやるぜ!」
「二時方向にα、β型の群れを確認」
「雑魚の相手はモブで充分だ。俺はγ型を多く潰さねぇとな。じゃないとアルビレオやスマイルドッグの艦隊にオーレムを近寄らせる事になる」
エルフェンフィールド艦隊を見れば旗艦アルビレオを筆頭に円陣を組みながら、オーレム相手に砲撃を行なっている。更に艦載機であるスピアセイバーはβ型相手なら充分対処出来ている程。
その中で通常のスピアセイバーとは違うカラーリングの機体が居た。近接用ランスと小型シールドを装備しているが、β型相手に撹乱を行い確実に弱点となる核の部分を貫いて行く。
その姿はスピアセイバーの見た目も相まって中世の騎士の姿を連想してしまう程だ。俺は機体の識別を確認してから通信を繋げる。
「随分と脳筋的な戦い方をするんですなブラッド1?てっきり近衛所属と言うのですから御上品に戦うもんだと思ってましたよ」
『ヴィラン1ですか。勿論御上品に戦う事も出来ますよ?何なら今からやって見せましょうか?』
「ハッハッハッ、そう返してくるか。参ったよ。降参だよ。見事な接近戦だったと言わせて貰うよ」
『フフ。私とてオーレム相手に接近戦は極力避けたい所ですよ。しかし、生憎接近戦は私の十八番ですので』
「成る程ね。だから勢いが良いのか」
こうして話してる間にもブラッド1は部隊を率いながらβ型を次々と仕留めて行く。中には少数でγ型を撃破して行く連中も居ると来ている。
(エルフェンフィールド軍の近衛か。てっきり典型的なエリート主義だと思っていたが。どうにも、かなりの実力主義らしい)
テンプレ的な無能集団で無い事に少しだけ安堵しながら戦況を確認する。
現在、第六艦隊はオーレムと近距離戦に突入している。無論最前線の方では混戦状態であり、味方部隊の被害が一番多く出ている。
簡単に言うなら今俺達が居る宙域も直ぐに混戦状態になる訳だ。尤も、既に何百のオーレムが侵入して来ているので手遅れかもだが。
「アルビレオの重力砲はどうなってる?見た限りでは……うん、いつでも撃てそうだな」
戦艦アルビレオを見れば既に艦首部分は黒く禍々しい塊が渦巻いている。しかし以前に見た黒い稲妻は殆ど見えない。
『流石姫様ですね。既に重力砲の安定化は成功していると見るべきでしょう』
「姫様って、あのロリ……じゃない。第三皇女のリリアーナ姫だっけ?まさかアルビレオに乗ってるのか?」
『今回だけは先程の言葉を見逃してあげます。そしてリリアーナ様はアルビレオには乗艦しては居ません。リリアーナ様が居なくとも運用上の問題が無くなったという訳です。尤も、フル出力での使用はまだ不可能でしょうが』
「成る程ね。そいつは、おめでとうとだけ言っとくわ」
『ええ。これで私達は確かな立場を維持出来る』
俺は今回エルフェンフィールド軍が戦艦アルビレオとデルタセイバーを引っ張り出して来た理由を何となく察した。
幾らエルフが独立国家を宣言していたとしても三大国家の物量と戦力には勝てない。だがオーレム相手に圧倒するのを見せつければどうだろうか?仮に物量で攻めたとしても被害は途轍も無く大きくなるのは明白。特に重力砲に関してはN弾では無いにも関わらずの大規模破壊兵器に入るだろうからだ。
つまりこの戦いはエルフェンフィールド軍にとって丁度良いデモンストレーションと言えるのかも知れんな。確実な武力を見せ付ければ三大国家と言え躊躇するだろう。恐らく正面から攻めた時に受ける被害が洒落にならなくなるだろうし。
(まあ、こっちとしては別の火種になるかも知れない訳だが。もしかしたら三大国家や他の独立国家がデルタセイバー強奪とか重力砲の機密データ回収とかやりそうだし)
最悪、俺達傭兵にも依頼として来るかも知れない。いや、遅かれ早かれ裏経由か個人で依頼は来るだろう。勿論何方のデータを奪ったとしても直ぐには使え無いだろう。だが兵器開発の参考データにはなる筈だ。
何故ならばエルフェンフィールド軍の兵器にはアレが必要だからだ。
(だってぇ〜、アイツら試作兵器とかに魔法とか使ってるしぃ〜。本当、変身でもしてろっての)
今度、玩具でキラキラ光るステッキでも送ってやろうか。いや、誰にとは言わねえけどさ。
『貴方が何を考えてるかは分かりませんが、碌な事では無い事は分かりました』
「……なあ、前から薄々気付いてはいたんだが俺って結構顔に出てるタイプか?」
『いいえ。雰囲気で分かります』
「雰囲気とかアバウトなアドバイス要らねぇんだよ。たっく、マジつっかえ」
適当にブラッド1に八つ当たりしながらも戦艦アルビレオを見る。すると丁度アルビレオのカタパルトからデルタセイバーが射出される。どうやらファング1も補給を終わらせたらしい。
それと同時にアルビレオよりオープン通信が入る。
『各艦、各戦闘ユニットに通達。本艦はこれより重力砲をΔ型に対し発射する。その際に発生する重力場に注意せよ。以上』
「相変わらず素っ気無い通信だな。もう少し愛想良くしても良いと思うんだが」
『私達にとって最低限の連絡をしているだけで充分なのよ。それくらい私達と人類との間には溝があるのよ』
「ふぅん。別にエルフ以外にも美形は豊富に居ると思うんだが」
『長い時を生きればそれだけ知識を得る。そして、ふとした事で応用して発展させてしまう。その発展が良い悪いは別にしてね』
マリエル大佐の言葉に少しだけ納得した。要は無駄に長生きしてると暇になる。そして暇な時間は自分の趣味に没頭する。すると趣味が芸術やハイテクノロジーに変わるって話だと思う。
そう考えると長い時を持て余す人生って奴も色々不憫だなと思ってしまう。特にエルフは高い知性を持つ種族だ。尚更色々思う所があるのだろう。
「まぁ、今はエルフに関するお勉強なんざどうだって良い。重力砲発射までアルビレオは死守しなくちゃな」
そして此方に近寄るファング1に通信を繋げる。
「ファング1、お化粧直しは終わったか?ならサッサとオーレム狩りと洒落込もうぜ」
『お化粧直しなんてしてないわよ!失礼ね、全く。じゃあ早速一発行くわよ!食らいなさい‼︎』
するとデルタセイバーに搭載している大出力ビームカノン、プラズマキャノンを展開。更に大型ビームライフルを構えた瞬間、圧倒的な弾幕を形成する。
戦艦以上の高エネルギーの弾幕は次々とオーレムを駆逐して行く。α、β型なら纏めて消し飛ばし、γ型には正面から撃破して行く。更にデルタセイバーはある程度移動しながら攻撃を行なっている。
「やっぱりデルタセイバーはかなりの開発費が掛かってるんだろうな。多分高性能マルチロックとか標準装備なんだろうなぁ。良いなぁ。羨ましいなぁ。俺にデルタセイバーくれねぇかな?」
「マスターには私が居ますので問題有りません。それにマスターと私ならクリスティーナ・ブラッドフィールド少佐が操るデルタセイバーでも充分対処出来ます」
「予測勝率は?」
「現時点では14.08%です」
「へぇ、意外と勝率あるじゃん。根拠は?」
「クリスティーナ少佐は良くも悪くも教本通りです。またマスターのトリッキーな技量を存分に発揮すれば更に勝率は上がります」
「確かに馬鹿正直に正面からやろうとは思わないけどさ。だがなネロ、一つだけ訂正しておけ」
「何をでしょうか?」
俺はデルタセイバーの攻撃が終わり、オーレムが消滅した宙域を眺めながら呟く。
「馬鹿正直に正面から蹂躙する奴も居る。それがクリスティーナ少佐とデルタセイバーなだけさ。唯、それだけの話だよ」
モニター越しにオーレムを消し飛ばした事を笑顔で伝えて来るクリスティーナ少佐を見ながら呟くのだった。
戦艦アルビレオの重力砲の発射態勢は殆ど完了していた。オーレムの群れを前に多くの兵士達の奮戦により、Δ型を完全に射程に捉えていた。
「重力磁場安定を確認。各システムに異常無し」
「エネルギー充填率92%。充填完了まで残り五分」
「マルチタスク制御は正常に稼動中。重力砲のエネルギーバイパス制御は安定しています」
オペレーターからの報告を聞きながらセシリア准将は内心ホッと安堵を漏らしていた。
「流石リリアーナ様だな。この短期間で重力砲を実戦可能レベルまで持って来るとは」
「ダムラカの一件で試作重力砲の予測限界値の大凡は出ましたからな。お陰で重力砲の制御に目処が付きました」
「そうだな。威力は以前の試作段階より多少向上しただけで終わったが充分だろう。流石にあの時の威力は過剰過ぎる気もするからな」
「確かにそうですな。今は重力砲の潜在的能力が分かっただけでも良しと言う所でしょう」
セシリア准将と副官は重力砲の強大な破壊能力を認めていた。あのブラックボールを止める程の威力を秘めている重力砲。その威力はN弾を凌ぐ程だろう。そして重力砲を完全に制御出来る希代の天才、第三皇女リリアーナ・カルヴァータの存在。
「デルタセイバーも流石だな。同じ機関が備わってるだけの事はある。尤も、本来ならあの小型では満足に運用など出来んのだが」
「確か基本構造は同じの筈でしたな。寧ろ自分としましては、良く小型化してAWに搭載出来た物だと感心してます」
「それを可能としたのがギフトの【増幅】だ。それに重力機関の基礎理論はそう難しい物では無い。だが兵器として運用するには至極難しいと言う話だ。今の所、このアルビレオとデルタセイバー以外実用化出来てはいない」
「本来ならダムラカの件が無ければ、より多くの重力機関が配備されてたでしょうに」
「ふん。リリアーナ様の好意を悪意に変えた連中だ。唯、その代償は余りにも周りを巻き込み過ぎた。寧ろ、一定の終息に向かった事が奇跡と言えるだろう」
ダムラカの一件に関してはお互いに色々と思う所があるのだろう。何方の言い分が正しいのかは最早知る術は無い。既に真実を知る殆どの者達は死んでしまっているのだから。だが最後の戦いで現れた現象。
奇跡。あの時、ダムラカの将兵達が見た光の光景。あの光景は科学的には決して証明する事は出来ないだろう。だが、彼等は確かに再会したのだ。もう二度と出会う筈の無かった大切な者達と。
だからだろうか。ダムラカの将兵達は殆どが戦意消失し抵抗する事は無かった。お陰で事後処理は順調に進んだ訳だが。
「何はともあれ結果は無事に終息しました。寧ろ余計な燻りが殆ど無かったのは良い事ではありませんか」
「私はそうは思わない」
「と言いますと?」
副官の言葉を直ぐに一蹴するセシリア准将。
「あれだけの軍隊を維持させるだけでも莫大な費用が掛かる。セクタルが裏で手を引いてるのは確認出来たが其処までで終わっていた。余りにも綺麗過ぎる程にな」
「セクタルは切り捨てられたと言うべきですか」
「そうだ。恐らくセクタルを隠蓑にしていた連中が居た筈だ。だが、それを知る者達は既に死んだと見るべきだろう」
「つまり、まだ予断を許さないと」
「私はそう考えている。だが、今は目の前の敵に集中しよう。ダムラカの一件は既に本国に任せているからな」
セシリア准将は話を終わらせ現在の戦況に目を向ける。
Δ型は再びα型を射出しながら此方に向かって正面から迫って来る。だが既にアルビレオの攻撃準備は整っている。
艦首に集まる禍々しい黒いエネルギーの塊が今か今かと待ち望む。全てを飲み込む濁流を作り出さんが為に。
「重力砲、砲撃用意。目標Δ型、及び周辺のオーレム群」
「目標Δ型に固定。砲撃準備完了」
「重力砲の制御は規定値内。システムは正常に稼動中」
「射線上に友軍艦艇、友軍機は認めず。いつでも行けます」
オペレーター達の報告を聞き、セシリア准将は静かに頷く。
「いよいよですな。この戦いで歴史は変わります」
「その通りだ。エルフェンフィールド軍の名誉と誇りに懸けて」
右腕を前に突き出しながら命令を下す。
「重力砲、発射!」
次の瞬間、戦艦アルビレオの艦首から一瞬稲妻が走る。
そして、重力砲が発射された。
戦艦アルビレオより重力砲発射の警告が出されてから直ぐに重力砲から放たれた黒いエネルギーの塊。重力と言う名の暴力の塊は射線上のオーレムを次々と飲み込んで行く。α、β型は一瞬で吸い寄せられるがγ型は多少抵抗する。だが己自身の肉体が引きちぎられる様にズタズタにされながら吸い寄せられる。
つまり何が言いたいのかと言うと。
「凄く……グロいです」
この映像は間違い無くゴールデンタイムでの放送は出来無いと確信した。そして目標であるΔ型まで一直線に向かう黒い球体。
つまり何が言いたいのかと言うと。
「あー、コレは……マジで駄目な奴だ。詳細とか書いたら気持ち悪くなるレベルだわコレ」
唯でさえ超級戦艦と同等の大きさを誇るΔ型。そんなΔ型を含めたオーレムは基本的に有機生命体だ。有機生命体でありながら過酷な宇宙を縦横無尽に移動する姿は、さながら台所に出て来るG生命体以上の生命力があるのは間違い無いだろう。
強く分厚いシールドを保有するΔ型に、ブラックホールみたいな重力を引っ提げてやって来る黒い球体。逃げて!Δ型超逃げて!
しかし現実は非情である。
「あーあー……やっちゃった。コレは暫くの間エルフ達はドン引きされ続けるだろうな。俺自身ドン引きしてるもん」
Δ型の先端に直撃した黒い球体。そしてΔ型の肉体を勢い良く吸い寄せて行く。
先端が引きちぎれたのを皮切りに内部部分が露出。其処からパイプっぽい何かとか液体が勢い良く吸われて行く。もしΔ型に声があるならば悲痛な悲鳴が聞こえてきそうだ。
勿論これ以上に細かく表現を伝えるのも有りだが、誰かに怒られそうなのでヤメトキマス。
「さ、流石私達エルフェンフィールド軍の技術の結晶ね!オーレムなんて一網打尽じゃない!そう思うでしょう?キサラギ准尉」
若干引き攣った笑みを浮かべるクリスティーナ少佐。彼女がどんな事を感じたのか手に取る様に理解出来る。だから俺は笑顔で答える事にした。
「いや、マジでドン引きしたわ。本気と書いてマジって読むくらいにな。あ、ちょっと距離取って貰って良いかな?ほら、俺やスマイルドッグにまで風評被害とか受けたく無いし」
「風評被害って何よ!でもΔ型を一撃で葬ってるじゃない?凄い事なのよ」
「うん、凄いね。でもビジュアル的には完全にアウトだけどな」
既に半分近くが吸い込まれてるΔ型。中心部分が一番大きいから余計にエグい映像になってしまう。既に俺の脳内ではモザイクが掛かってるし。
「今日からお前らの事グロフって呼ぶわ。後、もう少しだけ距離取って貰って良いかな?」
「グロフって何よ!そもそも私達バディ組んでるでしょう!だから離れたら駄目じゃない!」
「俺だってグロフよりエロフの方が好きだよ。寧ろ大好物だよ。大体グロフって誰得だよ?ふざけんなよマジで」
「知らないわよ!キサラギ准尉が言い出した事じゃない!」
「俺だってこんな事言いたく無かったわ。グロフティーナ少佐殿」
「それ唯の悪口じゃない!寧ろちょっと遊んでるわよね?」
「あ、バレた?」
「後で覚えてなさいよ!」
若干涙目になりながらそっぽを向くクリスティーナ少佐。やはり美人の表情がコロコロ変わるのを見るのは癒される。
それから重力の塊はΔ型を全て飲み込んだ後に一気に爆発を起こす。その際にオーレムの死骸が多数此方に向かって来たのは想定内だったよ。コンチクショウめ。
「さて、少しSAN値が回復したからな。後は他の艦隊がどう動くかだな」
既に第六艦隊が対応している宙域のオーレム群に関しては問題無いだろう。強いて言うなら死骸の迎撃に少し手間取った位だろうか。後は艦隊による艦砲射撃による制圧射撃で殆どのオーレムを撃破出来る。
寧ろ今大変なのは第一、第三艦隊だろう。CBBはEとの正面から派手な撃ち合いをして損傷が出ている。更に他の艦艇にも被害は出ているのは確かだ。
「さっさとエクスターミ収縮砲を撃てば良いのに。後はE型を含めて全部巻き込んで倒せば楽じゃねえか。何を勿体ぶってる?」
エルフェンフィールド軍のお陰で丁度手が空いたのでオペ子に通信を繋げて戦況を確認する事にした。
「オペ子聞こえる〜?連邦がいつエクスターミ収縮砲を発射するか教えてくれ。殲滅戦をする時に一番槍やりたいからさ」
『ヴィラン1……残念ですが、エクスターミ収縮砲の攻撃は中止する事が決定しました』
「何?どう言う事だ。説明しろ」
『間も無く連邦からオープン通信で連絡が来る筈です。プランBへ移行すると』
プランBへ移行。だが何故プランBに移行する前にエクスターミ収縮砲を発射しないのか。マザーシップは一度エクスターミ収縮砲の直撃を耐え切った。今も大きな傷跡が見えるが、それだけだろう。
「マザーシップはどうするんだよ。周りのオーレムを消し飛ばした所で意味は無いんだぞ。連邦だって身をもって理解してる筈だ」
『それは私にも分かりません。ですが連邦、帝国が決めた事ですので』
「ふぅん。まぁ確かにな。オペ子に聞いても分からん部分だろうし。なら連邦と帝国のやり方って奴を見させて貰うかな。だがN弾使うとなると追撃戦は無理そうだな」
『そうですね。N弾が使われればこの宙域は汚染宙域に指定されます。恐らく惑星ソラリスは完全に切り捨てるのでしょう』
「切り捨てるなら切り捨てるで別に構わねえよ。俺達にとってはこの宙域が使えなくなるだけで済むし。問題が有るのは惑星ソラリスから脱出した連中と連邦とその関係者だけさ」
惑星ソラリスから脱出した連中は凡そ数万人。彼等の想いとしては打倒マザーシップと故郷の奪還だろう。更に惑星ソラリスは経済惑星の一つであり、ガルディア帝国との国境付近に当たる。故に連邦が簡単に手放す筈は無いのだ。
だがプランBを発動したと言う事は、事態が予想以上に深刻なのが見て取れる。
それから暫く待つと連邦司令部よりオープン通信で連絡が来る。内容は直ちに作戦をプランBへ移行すると言うものだった。そして、此処で意外だったのがガルディア帝国軍のCBBインペリアル・ブルーローズもN弾を使用すると言う事だった。
此処に来て帝国による証拠隠滅と考えたが、今更感があるのは気の所為だろうか?そもそも連邦管轄領内にN弾を持ち込んでる自体が色々問題が出てきそうなのだが。
「罪悪感でも抱いたか?そんな物、今更抱いた所で手遅れだ。死んだ連中の弔いにも成りゃしねえんだよ」
俺は帝国の行動を吐き捨てながら後退する。既に作戦は最終段階に入った。プランBの作戦通りならN弾の飽和攻撃で全てを消し去る事は容易いだろう。収縮砲と違い多方向から攻撃が出来るし迎撃も容易に出来る物では無いからな。
『各戦闘ユニットへ通達。これよりマザーシップに対しN弾による飽和攻撃を開始する。各員は閃光防御の用意をされたし。以上』
連邦からの一方的な通信。それは惑星ソラリスの完全な死を意味している。
だがこれで良かったのかも知れない。人々は真実を知る事無く惑星ソラリスによる悲劇に涙を流し、悲しみに浸る事が出来るのだから。
真実を知らなければ要らない争いが起きる事は無い。
そして時間が経てば再び何時も通りの日常を送る事が出来る。
人々は国家と言う親によって静かに揺籠の中で眠る事が出来るのだから。
「安らかに眠れ。それが……宇宙の人々の為だ」
俺は二隻の弩級戦艦から発射されたN弾を見送りながら静かに敬礼する。例え俺にその資格が無くとも哀悼の気持ちくらいは持ち合わせているからさ。




