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オペレーション・ブレイク・ホーム5

 CBB(弩級戦艦)二隻とE型二体は互いの収縮砲による砲撃の直撃を受けた。高いシールド性能により少しだけ攻撃を受け止めたのだが、直ぐにシールドは貫かれ船体に大きな被害を受けてしまう。

 周りの将兵は高エネルギーの収縮砲の直撃を受け、傷付いた弩級戦艦の姿に少なからず衝撃を受けた。何故なら弩級戦艦が大きな被害を受けた事など、戦いを繰り返し続けている歴史を見ても一度も無いのだ。

 そして被害を受けたデラン・マキナの艦内は凄まじい衝撃が走り、艦内に居る将兵達は混乱してしまう。しかしバルス大将を筆頭に被害報告とE型の様子を確認を急いでいた。


「クッ……被害を、報告しろ」

「正面右舷下部の被害甚大!B25ブロックよりD8ブロックは消失!更に第二、第三、第十、第十四格納庫の被害甚大!また中央区画でも艦の歪みにより被害が出ています!」

「火災の発生を確認。また各区画でプラズマエネルギーの漏電を確認」

「先程の攻撃により被害を受けた近隣区画の隔壁閉鎖出来ません!」

「工作班に緊急出撃。手動でも良い。隔壁を閉じさせろ。またプラズマの漏電に関しても修理を急がせるんだ」

「メインシステムに異常発生。データリンク正常に処理出来ていません」

「一部武装の自律モード機能停止。また前部分の測距装置が全て機能していません」

「何だと?直ちに測距装置の修理を第一優先だ!オーレムが雪崩れ込んでくるぞ!急げ!」

「オーレムの接近を確認。数は……五千を超えてます!」

「手動に切り替えて迎撃しろ!オーレムを近寄らせるな!直掩機は直ちに本艦の防衛に当たれ!また各艦にも通達させろ!」


 CBBデラン・マキナが接近するオーレムの対処に苦戦している頃。同じくオーレムの接近を感知した第三艦隊旗艦インペリアル・ブルーローズは直ちに迎撃を開始していた。此方もデラン・マキナ同様の被害を受けたが測距装置に関しては問題は無かった。

 無論エネルギー伝達装置の異常により攻撃能力は一気に落ちたのだが、迫り来るオーレムを確実に撃破していた。

 そんな中、ガスタ・ビレンジ大将は艦橋から見えるマザーシップを睨み続けていた。


「皇帝陛下より国防の為に拝命されたインペリアル・ブルーローズに傷を付けてしまうとは。然も大きな傷と多数の死傷者をも出す結果になろうとはな」


 苦虫を噛み締めた表情で悔しげに呟くガスタ大将。数々の被害報告を受けながらも必死に指揮を取りながら戦線を維持させ続ける。

 しかし、ガスタ大将とは裏腹にアルベルト上級大尉は若干鼻息が荒くなる程興奮していた。その表情には一切の不安要素が無かった。


「ですが、これでE(イプシロン)型は終わりです。マザーシップよりエネルギーを供給され続けていたにも関わらず、我々に対して大量のエネルギーを消費しました。今はオーレムの攻勢が激しくなっていますが、此処を乗り切れば必ず勝てます!」

「ほう、随分と自信有り気だな。アルベルト上級大尉。何か根拠でも有るのかね?」

「勿論ですともガスタ大将殿。現在戦況はほぼ一進一退。しかし我々……いえ、正確に言うなら連邦には切り札が有ります」

「エクスターミ収縮砲か。貴様の言う通り事が上手く行けば勝てるだろうな。上手く行けば……な」


 興奮するアルベルト上級大尉を尻目にガスタ大将は考え続けていた。


(何故(マザーシップ)はE型を作り出した?このインペリアル・ブルーローズを倒す為か?ならE型を更に作るべきだ。現に二隻の弩級戦艦は戦闘続行可能状態にある)


 ガスタ大将はマザーシップの行動について思考する。だが相手は所詮オーレムだと言う考えが邪魔をしてしまう。

 恐らく偶々。唯の偶然。オーレムに知性は皆無。

 しかし、マザーシップにその常識は通じない。マザーシップの状況を確認し続けているオペレーターが異変を察知して報告する。


「ガスタ大将!マザーシップ……いえ、惑星ソラリスにエネルギー反応が!」

「何だと?」


 オペレーターの報告に直ぐにモニターで状況確認をする。すると惑星ソラリスに張り巡らされている触手の一部分が更に輝き出したのだ。その光は触手を通じてマザーシップに向かって行く。


「一体、あの光は何なのだ?」

「発光部分には高エネルギー反応を確認。エネルギー反応が更に増大しています」

「あの場所は……まさか。おい!至急惑星ソラリスの全体図を出せ!被害が無かった時の最新の奴をだ!」


 此処に来てアルベルト上級大尉は何かに気付いたのか急いで惑星ソラリスの全体図を出させる。それを今の惑星ソラリスと比較させる。すると謎が直ぐに解けた。


「発電施設。それに、ナイトロニウム保管施設だと……?馬鹿な。奴は、惑星ソラリスから……我々の技術を奪っているのか?いや、奪うだけでなく使っているのか!奴は……唯のオーレムでは無いのか‼︎」


 ガスタ大将は握り拳を作り、強く目の前のモニターに向けて振り下ろす。そしてドンッ‼︎と言う音と共にモニターに多数のヒビ割れが出来る。そして僅かに血が滲み出るがガスタ大将は気にしてる様子は無い。


「ク、ククク……まるで、全てが奴の掌で踊らされてる様だ。そうは思わんか?アルベルト上級大尉」

「いえ、その様な……相手はオーレムです。知性など、有ってない様な物ですので」

「その有ってない様な物に此処まで我々の攻撃が対処され続けている。実に滑稽だ。滑稽過ぎて反吐が出る程にな。そして、その事に本当の意味で理解した自分に一番腹立たしい事この上ない」


 モニターに映るマザーシップを親の仇の如く睨み続けるガスタ大将。そしてガスタ大将から滲み出る怒りのオーラが艦橋内を包み込む。


「が、ガスタ大将。此処は一度冷静に」

「直ちに第一艦隊旗艦デラン・マキナ司令官、ダスティ・バルス大将に通信を繋げろ」

「了解しました。少々お待ち下さい」

「ガスタ大将。一体何をするおつもりですか?」

「知れた事。直ちにプランBへの移行を進言する為だ。一応、この艦隊の総指揮権は彼方にあるからな」


 プランB。つまりマザーシップへのN弾使用を意味する。そして同時に惑星ソラリスに残ってる者達を完全に切り捨てる事を意味していた。


「ガスタ大将、それはいけません。現在もソラリスでは決死の抵抗を続けている者達が居るのですよ?現に救難信号は今も受信し続けています。どうか再考を」

「普段の貴官なら連邦の将兵など気にはせんだろうな」

「それは理解しております。しかし、こちらからプランBへの進言は連邦との摩擦を生み兼ねません。最悪、連邦との総力戦になる可能性も」

「そうだな。確かに連邦にすべてを押し付ければ帝国は安泰だ。実に政治将校らしい考えだよ」

「ガスタ大将!私はその様な事は言ってはおりません!非人道的な行動は軍人として在るまじき行為なのだと!」

「この艦に搭載しているN弾の使用も提案に入れる。連邦への言い訳はN弾の荷下ろしが間に合わなかったと伝えておく」


 帝国軍が連邦領内にN弾の持ち込みが公になれば様々な所からの非難の嵐は必須だろう。だがガスタ大将の表情には一切の迷いは無い。


「連邦領内へのN弾の持ち込みの責任は私が取る。またプランBへの進言に関してもだ。この発言は確実に録音し帝国、連邦軍に提出する様に」

「ガスタ大将……貴方は、それ程の覚悟が有るのですか?」


 ガスタ大将はアルベルト上級大尉を静かに見据えながら一言だけ呟いた。


「今この時、この戦場は人類史上最大の分岐点にある。殲滅か全滅かのな」






 第六艦隊のオーレム戦は既に過激な物となっていた。Δ型を筆頭に大量のオーレムが次々と雪崩れ込んでいたのだ。


『誰か!45ミリを寄越せ!早くしろ!』

『直撃した!これ以上艦が保ちません‼︎』

『総員退艦!うわあああ⁉︎⁉︎』

『来るなあああ‼︎こっちに来るなあああ⁉︎』

『オーレムの侵攻をこれ以上許すな!何としても食い止めろ!』

『畜生!母艦に取り付いてる奴を片付けるぞ!アイル隊、続け!』


 前線は既に大混乱に陥っている。更に味方の駆逐艦や巡洋艦にも次第に被害が出始める。

 そして我等が傭兵企業スマイルドッグの艦隊にもオーレムが肉薄していた。


「下方より高速で十体のβ型が接近!熱源急上昇!来ます‼︎」

「左舷全力噴射!続けて副砲、対空弾幕で迎撃!近寄らせる前に墜とせ!主砲は前面のγ型に集中させろ!」


 戦艦グラーフで確かな指揮を取るベイヤー艦長。既に自分達の艦隊にまでオーレムの接近を許している状況。味方のAW、MW隊は死すら恐れないα型の群れの対処に追われてしまっている。ならばβ、γは自分達で始末するしか無い。


「アルビレオの状況はどうなっている?」

「現在アルビレオは重力砲の発射態勢に入っており、艦首をΔ型に向けています」

「そうか。兎に角アルビレオにもオーレムは近寄らせるな!」

「左舷よりγ型五体、β型十体接近!」

「駆逐艦隊、フリゲート艦隊が応戦を開始」

「対ビーム撹乱粒子ミサイル発射!味方艦隊をやらせるな!直掩機は直ちに迎撃に入れ!」

「ダメです。既にどの部隊もα型の対処に追われています」

『此方キャット1!出来るだけ対処するッス!けど余り期待はしないで下さいッスよ!』


 戦艦グラーフの甲板の上に派手に着地するアズサ軍曹の乗るアーミュバンカー。両肩に装備する大口径ガトリング砲と45ミリヘビーマシンガンが同時に火を噴く。圧倒的な弾幕をβ型に喰らわせるが、反撃と言わんばかりにγ型のビーム、プラズマが襲い掛かる。


『このぉおお!グラーフの皆んなはやらせないッス!て、にゃあ⁉︎』


 しかし戦艦グラーフのシールドをγ型のビームが貫きアーミュバンカーの左肩に直撃。そしてバランスを崩し倒れ込む。

 その間にも突っ込んでくるオーレムを見て艦橋内に絶望が走る。だが突如、一体のβ型がプラズマに貫かれ爆散する。


『ヒイイィィハアアァァア‼︎大量のクレジットだあああ‼︎』


 そして次々とβ型を仕留める一機のAW。更にγ型から放たれる対空ビームバルカンの迎撃を物ともせずに突っ込み、取り付き、撃破して行く。

 戦艦グラーフの艦橋内に居る全員とアズサ軍曹は若干の呆れを感じながらも希望を抱いていた。


『先輩!無事だったんスね!』

『まぁな。それよりキャット1、随分と派手に暴れてるじゃん。この艦隊には他にも暴れてる連中も居るからな。気張っていけよ。勿論スマイルドッグの連中は強制だがな!』

『ハハ、そうッスね。私もまだまだ弾は残ってまスんで。全弾ブっ放して行きまッス!』

『その意気だぜキャット1。所で社長、今の見てた〜?かなり上手くγ型とか仕留めれる様になったわ。はいよっと、三体目頂き〜。へへへ、ボーナスは弾んで貰いますよ?』


 アズサ軍曹との会話を中断して社長に話し掛けるキサラギ准尉。そんなキサラギ准尉の姿を見て、社長は軽く笑いながら答える。


「ボーナス弾んで欲しければ近くに這い寄るオーレムを全て仕留めるんだな。全く」

『社長、言いましたな?なら派手にやらせて貰いましょうかね!さあさあ、もっと俺の方に寄って来い!全部クレジットに変えてやらあ‼︎』

『先輩!自分の分も残しといて下さいッスよ!』

『安心しな。オーレムは腐る程居るんだ。おかわりはセルフサービスだぜ!』


 そしてシュウ・キサラギ准尉が操るバレットネイターは弾丸の様なスピードで駆け抜けて行く。スラスターから出る赤い光跡を残しながら。


「社長、随分と出費が嵩みそうですね」

「ふん。購入する巡洋艦を一隻に抑えれば問題無いわい」

「確かにそうですな」


 お互い若干の笑みを浮かべながらバレットネイターを見続ける。そして、その姿は他の味方も見ていた。其処にエースが戦場へ現れているのだと見ている者達に感じさせながら。

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― 新着の感想 ―
[一言] 劇場版の融合女王バジュラ(説得失敗+融合により技術獲得)とTV版のアイドル秘書(取り込み失敗)みたいなのが出てきましたね…(今までを振り返り) どうやって倒すのかが見もので全裸待機しちゃう…
[良い点] ソラリス防衛基地にいた、、、紅茶好きな中将もそうでしたけど、割りとモブに近めな軍人さんがかなり格好良いですね。
[良い点] 逆転への希望が見えるシーン [気になる点] オーレムがでたまかのアレやマヴラブオルタのアレやR-Typeのアレでいけばどんくらいの性能なのか不明なのが謎 [一言] イカレオーレムにはイカレ…
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