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オペレーション・ブレイク・ホーム3

 味方の駆逐艦に一直線に近付こうとするα、β型の混戦隊。その側面を取りながら二連装大型ロケットで狙いを付ける。


「何事も最初の挨拶が肝心な訳だ。つまり遠慮は要らねえって事だぜ!」


 トリガーを引くと四発の大型ロケット弾が飛んで行く。そして大型と言うだけあって派手に爆発しαとβ型を纏めて吹き飛ばす。

 あっという間に消え去るが次から次へと攻めて来るオーレム群。レーダーを見れば味方艦隊の前方は殆ど真っ赤に染まっている始末。


「へへへ、派手なパーティに御招待ありがとよ。然もお前ら自身がクレジットに変わってくれるんだからな!」


 モニターに映るのは五体のγ型と十体以上のβ型。それに対し艦隊と多種多様のAW部隊が攻撃を仕掛けている。

 此処で話は少し変わるが傭兵やバウンティハンターのAWは正規軍とは違い多彩だ。例えばZC-04サラガンと言え通常型から軽量型、重装甲型まである。仕舞いには宇宙専用脚部を使い軽量機並みの機動力を持つサラガンも居る。

 そして正規軍でない彼等には好きな様にAWを選ぶ事が出来るし弄る事が出来る。ZC-04サラガン、ZM-05マドック、ZD-06ヘリオスなど様々だ。更に見た目もかなり弄ってある機体もある。中には派手な蛍光カラーやデカいドクロマーク。絶対に要らないだろうと言える刺々(トゲトゲ)が多数付いてる機体。特にフリーランスの連中はその傾向が強いだろう。

 勿論スマイルドッグの様に一定の規格で揃えてた方がメリットは遥かにデカい。規格内で抑えた改修や強化なら戦闘中に不具合を起こす確率はグッと低くなる。無論、特筆した改修も悪くは無い。だがその分他の部位に負荷が掛かるのは明白。

 要は改修や改造をするなら全部やれって話だ。後は偶に正規軍機擬きも居る。中身は民間機だが見た目は軍用機に替えてる機体だ。基本的にレーダーで識別すれば直ぐに分かるが、ジャミングされた状況下だと目視に頼る事になるから意外と意表を突かれる事もある。


「まぁ、俺の場合は逆だけどな。パッと見は大人しい(ZC-04サラガン)が中身はエルフ改修仕様のじゃじゃ馬だからな。舐めて掛かるならバラバラにしてやるぜ!」


 二連装ロケットの接続部をパージしてからγ型に向かう。まだファング1との合流する連絡は来ていない。ならγ型だけでも全て片付けておきたい。

 近付いて来るα型を45ミリヘビーマシンガンと30ミリガトリング小型シールドで捌いて行く。その間にも味方AW部隊はβ型に取り付き次々と撃破して行く。

 その働きはさながら俺の為に花道を作ってくれてる様に見える。いや、作ってくれたに違い無い!ならその期待に応えなくてはならんのだ!


「行くぜネロ!γ型を狩り尽くすぞ!」

「前方三体のβ型を撃破すれば穴が開きます。またその三体は艦艇からの攻撃しか受けておりません」

「成る程な。つまり他の連中はまだ別のβ型に手こずってる訳か。ネロも段々分かって来たじゃねえか」

「勿論です。私にはマスターが満足出来る環境を提供する義務がありますので」


 ならばと思い他のオーレムを無視して邪魔となる三体のβ型に近付いて行く。無論β型も此方に気付きビームとプラズマの弾幕を此方に放つ。

 β型からの攻撃を未来視で確認しながら紙一重の形で回避する。そしてプラズマキャノン砲を展開し射程に入った瞬間トリガーを引く。

 プラズマキャノン砲から放たれた攻撃は先頭に居たβ型を半壊。弾幕が若干薄くなったのを感じ、そのままβ型の懐に入り込む。そして無傷の二体のβ型は対空ビームバルカンで迎撃して来る。


「そんな弾幕じゃあ薄過ぎだって某艦長に怒られちゃうぞ?弾幕薄いよ!ってな!」


 45ミリヘビーマシンガンと30ミリガトリング小型シールドを同時に構えてβ型の側面を撃ちまくる。そしてSIM機動で軽く反転しながらショットキャノンでもう一体のβ型を穴だらけにして行く。

 三体のβ型の動きが無くなった瞬間、γ型に向けて機体を加速。そして次の瞬間には三体のβ型は爆散して行く。


「次γ型行くぞ!ネロはα型の射出後の位置を正確に把握しろ!」

「了解しました」


 五体のγ型は艦隊との砲撃戦に夢中になっている。なら今がチャンスなのは間違いない。

 俺は下方からγ型に接近する。途中別の傭兵共から通信が来ていたが無視する事にした。どうせ獲物の横取りだとか吠えるだけだろう。


(だったら最初から大物狙えっての。大好きなオカズを残しとくと横から取られるんだよ)


 他の連中はどうせαとβ型に手こずる筈。ならその間に五体のγ型を全て頂くとしよう。

 ある程度近付いたらγ型からビームとプラズマが此方に向かって放って来る。γ型の攻撃を回避しながらプラズマキャノン砲を展開。しかしγ型も馬鹿では無い。

 対空ビームバルカンによる濃い弾幕と射出口からα型が大量に出て来る。だが此方ばかりに目を向けてて良いのかな?

 味方の艦隊もγ型に集中砲撃を行う。更にβ型を無理矢理抜けて来たAW部隊もγ型に取り付く為に接近する。

 対空ビームバルカンとα型の攻撃が散発的になった瞬間、俺はペダルを思いっきり踏み操縦レバーを前に突き出す。するとバレットネイターは一発の弾丸の様に加速してγ型に接近する。

 凄まじいGが身体を襲う。だが俺にはソレが非常に心地良いのだ。この感覚も多少複雑な操作も全てはアーマード(A)ウォーカー(W)を動かす為に必要な事。つまり俺にとっては全然苦にならない事柄だ。

 速度を緩める事無くγ型に取り付きα型の射出口に向けてショットカノンと45ミリを叩き付ける。そして空いた穴にプラズマキャノンでの零距離射撃を開始。

 そして次のγ型に向けて更に突き進む。背後を振り返る必要は無い。既に爆散決定のγ型を見てた所でクレジットは入って来ない。


「さあ、次の獲物は手前だ!しっかり足掻けよ!それしか出来ねえんだからな!」

「警告、四時上方よりα型の集団の接近を確認」

「小賢しい!これでも喰らえ!」


 機体を反転させてα型に向ける。そして全武装を展開して構える。


「受け取るが良い。効率もへったくれも無い無駄が滅茶苦茶多い攻撃を!喰らえ……フルオープンアタアアァァアックゥ‼︎」

「マルチロック完了。無駄を極力省きます」


 そしてバレットネイターから圧倒的な弾幕。一斉射撃が開始。45ミリ、30ミリ、散弾、プラズマがα型を次々とバラバラにして行く。然もネロの補助も有り命中率がかなり高いのが実に素晴らしいでは無いか。


「……今日からフルオープンアタックは俺の切り札の一つに追加します。異論は認めん。そしてネロ、これからも頼むな」

「お任せ下さい。α型の大半を一掃しました。現在のγ型は殆ど手付かずです」

「この流れマジ最高!」


 再びγ型に取り付きながらプラズマキャノン砲を展開。無論γ型も対空ビームバルカンやビーム、プラズマ砲で迎撃はして来る。だが既に味方艦隊の攻撃も受け続けており限界も近い筈だ。

 γ型の対空ビームバルカンを回避しながらα型の射出口に向けて一直線に向かう。そして後は流れ作業になる。


「これで二体目。残り三体……行けるぞ」


 気分も高まり残りのγ型に向けてバレットネイターを加速させる。そして徐々に他のAW部隊もγ型に向けて攻撃を始める。だが射出口はγ型の中間辺りにあるので簡単には近付ける様な場所では無い。普通は砲塔を破壊しながら徐々にダメージを蓄積させて行く。後は対艦装備で無理矢理撃破して行くかだ。

 無論AWにとっては手間も掛かる相手だ。だが要所さえ抑えればカモ同然な訳だが。


(問題は其処に辿り着く機動力と確実に倒せる火力が必要な事だな。ノーマルに毛が生えた程度のAWだとかなり厳しいだろうがな)


 γ型に取り付こうとするAW部隊を尻目に、俺は残りのγ型を始末する為に思考を切り替えるのだった。






 翡翠瞳の姉妹ことエヴァット姉妹の乗機であるエレンティルトも第六艦隊配属となっていた。そしてα、β型を優先的に潰しており多くの連邦軍のAW部隊に感謝され続けていた。

 無論連邦軍は自分達の一番のお得意様なので、この程度でポイントが稼げるなら楽な任務だとフラン中尉は考えていた。

 そんな時、フーチェ少尉が話掛けて来た。


「ねぇフラン。私達は前に出なくて良いのかな?」

「その必要は無いわ。私達以上に前に出たがる人達は沢山居るもの。なら彼等には弾除けになって貰った方が楽になるから」

「そうだね。あ、でもきっとバレットネイターは前に出てるよね。また一緒に飛べるかな?」

「さあ?唯、バレットネイターの搭乗者、シュウ・キサラギには一度文句は言っておきたいわ」

「そうなの?何で?」

「何でもよ。それより、あの機体は初めて見るタイプね。何処かの企業が作ったAW?」


 彼女達の視線の先にはβ型を相手に無双している一機のダークブルーのAWが見えていた。

 全体的な印象としてサラガンやマドックと言った量産機のカスタム仕様に思えた。しかし見た目から想像出来ない運動性を駆使してオーレムの攻撃を避けながら反撃している。

 高い機動力を持っているのでXBM-001レーニンの様な軽量機をベースにしている思ったが、大きさから中量機と重量機の中間的な機体であると予想出来た。

 武装は従来のAW同様の物であり、精々企業独自のAWかと思っていた。しかし企業独自の機体とは言え機動性と運動性が桁違いだと分かる。β型のビームをあっさり回避。そのままプラズマサーベルでβ型を次々と斬り裂いていく。更に反応速度も桁違いでα型のビームバルカンを簡単に晒しながら反撃に出る。

 フラン中尉も操縦系を担当しているから良く分かる。あの機体のパイロットはエースだと。それなりの修羅場を潜り抜けて来たと判断が出来る程だ。だが、妙な違和感も抱いていた。

 ダークブルーの機体の動きにAW特有の硬直が見当たらないのだ。無論、操縦次第で硬直を極力無くす事は出来る。しかし、それにしては動きが()()()()()()

 レーダーを見ると機体の識別IDはUnknownと出ているがエンブレムマークで所属は分かった。


「【QA(クアイエット)・ザハロフ】……武器関連企業か。随分な機体を作り上げた物だ」


 もしあのAWが販売されたらどうなるか?間違い無く従来のAWが旧式……いや、旧世代になるだろう。

 だが、あの機体が販売されればの話だが。それに高性能な機体には何かしら裏がある可能性も高い。特にQA・ザハロフには色々と暗い噂もある位だ。


「私達には関係無いか。ねぇフーチェ、やっぱり少し暴れたくなったわ。良いかしら?」

「うん!良いよ。あの黒い機体に負けたく無いもんね」

「そうね。私達以上の戦果を目の前で出されるなんて屈辱的な事この上ないもの」


 そしてフラン中尉とフーチェ少尉は連邦艦隊から離れてオーレム群に攻勢を仕掛ける。そして先程の黒い機体並みに暴れる事で、連邦軍や周りの将兵達から更に歓声を浴びるのだった。






 五体目のγ型をプラズマキャノン砲で吹き飛ばし戦線を一度離脱する。既に何度かダメージを受けてきた追加装甲をパージして機動力を取る事にした。此処からは細かいのも相手にする必要もある。

 しかし、それとは別に周りから何度か通信が入るので良い加減鬱陶しいと感じて来た。


「全く、人様に文句言う暇があったら他のオーレムを狙えっての。まだまだ腐る程居るんだから。ネロ、連中と繋げてくれ」

「了解しました。傭兵企業マグダック所属の旗艦と通信繋げます」


 通信を繋げると特徴の無い男性が出て来た。どうして美女が出てこないんですかね?


『此方、傭兵企業マグダック所属の者だ。貴官は同業のスマイルドッグの者か』

「ええ、そうですよ。何か御用で?まさか獲物を横取りされたとか言わないでくれよな」

『ん?いやいや、君は何か勘違いしてる様だな』

「勘違い?」

『この戦いが終わったらウチに来ないか?今の報酬より増額した上で高待遇で迎え入れたい。勿論君が望むなら幹部候補にも推薦させて貰う事も可能だ。どうだろうか?』


 まさかの勧誘であった。まさかと思いオープン通信を繋げてみると意外な事に歓声や感謝の言葉が聞こえて来た。


「マジかよ。遂に俺の時代降臨しちゃうの?目立って英雄視されちゃうとか?いやー、参ったなぁ。サインとか書く練習してねぇや!」

「流石ですマスター。しかしマスターはスーパーエースですので当然の流れかと」

「だよな!だよな!最近風の流れがイマイチだったが此処に来て良い感じじゃねえか!あ、因みにその勧誘は断るわ。まだスマイルドッグ所属なんでね」

『……そうか。ならいつでも此方に連絡を入れて貰って構わない。直ぐに受け入れる手配はしておくさ』

「そうかい。なら、その手配が無駄にならん事を祈っとくんだな」


 話してる間にもオーレムが再び攻めて来る。正直に言うと倒してもキリが無い。だが周りの熱い視線と期待する視線を感じる。

 今も戦況は良いとは言えない。マザーシップを筆頭にしたオーレムと言う強大な敵に打ち勝てるかも知れない存在。


 此処にはエースが居る。


 あのエースに付いて行けば生き残れる。


 エースが居れば勝てる。





 そう、アイツらが憧れた存在に俺は……漸く……





 そして次の瞬間、圧倒的なビームとプラズマの弾幕がオーレム群に襲い掛かる。弾幕はα型を纏めて消炭にしβ型を次々と粉々にして行く。更にγ型のシールドを貫きダメージを着実に与えて行くではないか。

 俺は弾幕を形成している方へ視線を向ける。そこには奴が居た。

 背中に追加装備を搭載し、両肩部にビームカノンと両脇部にプラズマキャノンを装備。更に大型のビームライフルを装備して此方に寄って来る。

 レーダーを見る必要は無い。既に見慣れ始めている機体。蒼と白の綺麗なツートンカラーにエルフェンフィールド軍のエンブレムマークがしっかりと見えていた。


「これはこれは、クリスティーナ少佐殿。パーティのドレスアップは終わりましたかな?にしては随分と火力が出ている様で」

『ええ。今日はデルタセイバーの御披露目(追加装備)のテストをするには丁度良さそうだから。さぁ、始めましょう。私達でオーレムを全て倒すわよ』

「了解、お嬢様」

『お嬢様じゃなくてファング1よ。ヴィラン1』


 柔らかな笑みを浮かべるクリスティーナ少佐。そして再び攻撃態勢を取るGXT-001Dデルタセイバー。自身の持つ圧倒的な火力を全てオーレム群にぶつける為に動き出す。


(……ふん。まあ、所詮俺は()から成れなかった存在だ。なら今の様な道化がお似合いだな)


 先程までの俺に向けられていた歓声は既に無い。此処の戦場はもうデルタセイバーとクリスティーナ少佐の物だ。

 俺は操縦レバーを握りながらデルタセイバーに追従する為に行動する。例え戦場の女神が居たとしても主役の座は簡単には譲るつもりは無いのだから。

ヒャッハー!弾幕は正義だ!

そしてそろそろ更新も止まるかもだぜ!ヒャッハー!


(´-`).。oO(同じテンションで言えば問題無いやろ←大有り

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― 新着の感想 ―
[一言] 次の話が出るまで俺はこの周回軌道で全裸待機するぜ!
[一言] コレ多分アレだろ?脳髄だけが水槽に浮かんでるとかそういうだろ?昔のファミコンシューティングみたいな。
[一言] >しかし、それにしては動きが滑らか過ぎる。 所謂「ナニカサレタヨウダ」系かな?
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