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隠蔽すべき真実

兵士A「このままではストックが無くなります!至急増援を!」

作者【此方本部、よく聞こえないぞ。もう一度繰り返せ】

兵士A「だから!もうストックが無いんだ!このままでは全滅します!」

作者【通信状況が悪い様だな。これよりストックの書き貯めを行う。現時点を何としても維持しろ!】(無能指揮官風)

兵士A「馬鹿野郎!もう目と鼻の先に!わあああ⁉︎」


訳:ストック無くなるので暫く更新止まります。再開は未定になります。

 戦艦グラーフの艦内は相変わらず避難民で溢れてる。殆どの連中は俯いているか泣いているか互いに現状について色々嘆いているかのどれかだ。中にはスマイルドッグの関係者に惑星ソラリスの状況を聞いていたりしている。


「戦艦が難民船にクラスチェンジしたな。この状況の原因を少なからず知ってる身としては、何とも遣るせない気持ちになるけど。ついでに大好きな甘味が無いのも辛いぜ」


 全て売切れ表示になってる自販機の前で独り言を呟く。この調子だと食堂も既に占拠されているだろう。


「配給制になりそうだな。此処で文句一つでも言ったら滅茶苦茶怒られそうだけど」


 絶対に言っては駄目な事だが言ってみたい気持ちが徐々に湧き上がって来るのは何故だろうか。

 仕方が無いので自室にて大人しくしようと思ったらナッツの事を思い出した。確かまだピーナッツを与えて無かった筈だ。


「仕方ねぇな。先にナッツの餌やりでもやるか」


 ぶっちゃけ今はやる事無いので暇なのだ。現在のオーレムは恐らく惑星ソラリスに居る生き残りの殺戮を行ってるだろう。その分オーレムの進行速度が遅れると思うと非常にやるせない気持ちにもなる。

 通路に居る人達を避けながら自室へ入り、袋詰めされたピーナッツを持って行く。そして備品置き場へと向かう。


「ナッツ〜。居たら出て来い。ご飯の時間だぞ〜」


 俺がナッツを呼ぶとコンテナの裏からナッツと三人の幼い子供が出て来た。


「ナッツが、子持ちになった……だと?」


 下らない事を言ってるとナッツと子供がこっちに寄って来た。どうしよう?これ。


「あー、此処は基本的に危ない場所だからな。だから子供達よ。出て行きなさい」

「嫌だ」

「此処が良いー」

「クラゲと遊びたい!」

「元気があって宜しい。だけど此処あんまり明るくねぇだろ?要らない物がゴチャゴチャしてるし」

「ねえねえ、コレ何ー?」


 一人の幼女が見せたのはピンク色の大きな椎茸の形をしたナニかだった。


「んー?それはな……えっとな。十五歳くらいになったら同級生の男子に聞いてご覧。きっと答えと新しい渾名を貰えるから」

「そうなの?分かったー」

「うんうん。素直で良い子だな」


 俺はこの素直な幼女の将来に幸が有らん事をと内心静かに祈る。例え十年後に俺の所為で渾名にエッチな道具の名前かお店の名前が付けられたとしても。まぁ、でも時効になってるだろうから俺には関係ねぇか!

 そんな事を考えているとナッツが俺の肩をツンツンして来た。どうやら腹ペコらしい。


「ほらピーナッツだぞ」

「ポリポリ」

「あーん」

「私も食べたーい」

「お腹空いた」

「ナッツ用のピーナッツで良ければやるよ」


 俺は袋を広げて取れる位置に置いておく。序でに俺もピーナッツを一つ食べる。ほのかに種の味がするのは仕方無いかな。


「おにーさんは軍人さんなの?」

「俺?軍人さんじゃなくて傭兵だな。で、それがどうした?」

「あのね、ママが言ってたの。パパはすっごく大きな戦艦の乗組員なんだって」

「私のパパとママはソラリスを守ってる場所に居るって言ってた!」

「私のパパとママは大きい船に乗ってるけどミラちゃんのより大きく無い」

「……ほう。何て名前の戦艦だ?」

「えっと……超級?うん。超級だったと思う。名前が【デンホルム】だよ!」

「私のパパとママは基地に居るの!」

「この映像の奴」


 幼女の持つ端末に映る戦艦を見る。艦名部分にはBBN-1285 VICTORIAと書かれている。


「そうだな。先ず最初に言っておく。泣く準備が出来たら言え。そうしたら教えてやるよ」


 そう言った瞬間、子供達は静かになる。子供ながら察したのだろう。まあ最初に泣く準備なんて言われたら色々考えてしまうわな。


「まぁ、今は知らなくても後から嫌でも知る事になるさ。勿論悪い知らせを棚上げにするのも悪く無いだろう。選ぶのはお前達次第だ。好きにしな」


 そう言ってピーナッツを一つ手に取る。因みにナッツ君はフワフワと浮かびながら幼女の元へ向かって行く。もしかして空気を読んでピーナッツを食べない様にしているのかも知れない。


(いや無いわ。だって幼女の頭の上に乗ってるもん)


 ナッツは一人の幼女の頭の上に乗り触手を顔やら首にくっ付け始める。何だかエイリアンが乗り移る瞬間を見てる気がする。


「パパとママは……死んじゃったの?」

「聞きたいか?聞きたいなら教えてやるけど」

「パパ、ママ……会いたいよぉ。う、ううぅぅ」

「お家に帰りたいよおぉぉ……ああぁぁあん」

「まあ泣いてるから言っても良いか。聞きたく無いなら耳塞げよ」


 俺は泣いてる幼女相手に躊躇無く親の安否を言い放つ。何でかって?遅かれ早かれいずれ知る事になるんだ。


「先ずは超級戦艦デンホルムはオーレムの攻撃により一撃で轟沈。続いて防衛基地ソラリスも同じく一撃で墜ちた。恐らく両方とも生き残りは居ないだろうな」


 三人の泣いてる幼女達の内、二人は更に首を横に振りながら泣き崩れる。残り一人も首を静かに横に振る。序でにナッツ君に取り込まれつつあるけど大丈夫?


「戦艦ビクトリアに関しては未確認だな。確かオーレムに対し迎撃する為に先陣は切ってた筈だが。運が良ければ生きてるかもな」


 そう言っても幼女は泣き止む気配はない。ナッツ君の触手を掴みながら唯泣いている。態々俺から真実を言う必要は無かっただろう。

 だが此処で嘘を言ったり誤魔化した所で直ぐにバレる物だ。何故かって?女って生き物は幾つになっても勘が良いんだよ。


「今の内に沢山泣いとけ。そして泣き止んだ後にどうするか考えておけよ。敵討ちをするのも良し、より遠くへ逃げるのも良し。時間は有る様で無いからな」


 幼女達の泣き声を聞きながら俺は静かに佇む。俺は子供の泣き声は好きでは無い。だから泣き止むまで側に居る。


(貧乏くじ引くのは慣れてる。けどさ……慣れてるだけ何だよな)


 俺は端末からナナイ軍曹に連邦艦隊の中でBBN-1285 VICTORIAがまだ存在してるか確認する。すると三分位で返信が来る。相変わらず仕事が早い事で。

 それから暫くすると幼女達の泣き声が静かになる。俺はナッツ君に取り込まれてる幼女の前に行き目線を合わせる。


「戦艦ビクトリアの所在が確認出来た。聞きたいか?」

「う、うぅぅ……」

「そっか聞きたいか。運が良かったな。負傷者は多数出たらしいが死者は出なかったらしい。もしかしたら後で会えるのかもな」

「ほ、本当?」

「ああ。さて、しっかり泣きまくったな。なら此処からどうするか考えな。因みにお勧めなのは軍に入る事だ。幸いお前達は正規市民だろ?なら色々軍が免除してくれる筈だ。そうすれば誰かに負担を掛ける事も殆ど無い」


 この時代、親を亡くした子供の行き場所なんてある程度決まっている。正規市民なら軍へ、非正規市民(ゴースト)ならろくでも無い場所だ。

 特に親をオーレムに殺されたパターンの場合はこの流れが多い。だが俺は止めるつもりは無い。何故なら悩んで悩んだ結果決めた事なら尚更だ。


「さて、そろそろ退室の時間だ。ほら涙と鼻水を拭いて」

「い、痛い〜」

「やだ〜!」

「使い回してる!最低!」

「悪いな。ハンカチ一つしか持って無いんだ。それにお前達はまだレディとしてカウント出来無い年齢なんだよ。諦めな」


 全員の涙と鼻水を拭き取りながら立ち上がる。三人の内二人はまだ泣きそうな雰囲気が出ている。だがそれはそうだろう。突然、親が死んでしまったと言われたのだからな。


「今の気持ちを忘れるなよ。その気持ちはお前達が両親を愛している証拠なんだ。例え居なくなったとしても変わりは無い」


 ふと昔を思い出す。俺が幼女達と同じ気持ちを抱いたのはいつだろうか?親は元々居なかったからどうでも良い事だが。


(多分あの時だな。その場に居ながらも守れなかった自分自身の無力感と悲壮感)


 目を瞑れば今でも思い出せる。俺の前では何時も微笑みを浮かべてくれた彼女の表情。だが最後の瞬間はどんな表情を浮かべていたのか。今の俺には思い出す事が出来無い。

 俺は子供達の僅かな泣き声を聞きながら少しだけ過去を思い出してしまった。


 俺は泣き止んだ幼女達を備品室から出て行かせた。捨て台詞としてまたナッツ君に会いに来る!とか言っていたがな。因みにナッツ君に寄生されてた幼女は何事も無く去って行く。まぁ、宇宙クラゲに寄生能力とか無いけどさ。


「あの子達に真実を言ったらどうなるのだろうか。きっと関係者である俺達も恨まれるだろうな。今も昔も政府が憎ければ関係者達全員が悪になるし」


 特に大切な家族や恋人を失った人達なら尚更だ。関係者全員を吊し上げにしてやりたい気持ちがある筈だ。


「やだやだ。裏社会で高額賞金首になりそうで怖いわ」


 既に俺が裏の方ではそれなりの額で賞金首になってる事を知るのは別の話である。

 この時幼女達に口止めをしなかったのが仇となり艦内でまた悲しみと絶望を味わう人々が増えてしまう。しかも中には自分達にも戦わせて欲しいと言う連中も出始める。これに関しては完全に俺の落ち度だろう。

 後で社長に事情を説明したら今後軽率な行動には注意する様に言われただけで済んだ。





 それから暫くは何事も無く惑星ハリガナへ向かっていた。だが艦内では次々と問題が浮上する。

 例えば毛布が足りない、食事がカロリーバーで貧相、薬が欲しい、麻薬が売られている等様々だ。勿論売人は即効で捕まえて連邦艦隊に移送済みだ。これ以上艦内の治安を悪くされて堪るか。

 無論連邦艦隊もやるだけの事はやっている。食料は優先的に避難民に配給したり受け入れを行っている。しかし連邦艦隊の全てで賄える程、避難民な数は少なくない。

 惑星ソラリスから脱出出来たのは約二十五万人程。全体の約六千万人に比べれば遥かに少ない。だが逆に言うと二十五万人もの収容スペースなど艦隊には無いのだ。避難民の中には予備役の人々も居る。そう言う人達の殆どは連邦軍に編入されていた。

 だからと言って問題は解決される訳では無い。無論、この我慢も後数時間で終わる訳だが。


「見えた!惑星ハリガナだ!中継宇宙ステーションもあるぞ!」

「良かったぁ。これで私達は助かったのね」

「俺は軍に入る。故郷の……家族の仇を取るんだ!」

「全く、連邦は何故最後まで戦わなかった。もしかしたらソラリスを守れたかも知れんだろうに」

「此処は酷く居心地が悪い。毛布一つすら満足に用意出来ないなんて」


 安堵する人や自分勝手な事を言う人も居る。けど俺達スマイルドッグにとってはそんな事どうでも良いのだ。


「準備は大丈夫ですか?ボーデン大尉」

「無論だ。君には色々と世話になったな。礼を言おう」

「気にしないで下さい。それよりステーションへ行ったら宜しく頼みますよ」

「任せろ。幸い帝国艦隊の第一陣が早速来てくれたからな」


 惑星ハリガナの軌道上にはガルディア帝国艦隊が此方を待っていた。地球連邦統一政府は今回の被害を受けて正式にガルディア帝国に向けて救援要請がだされた。それに対しガルディア帝国は快く承諾。直ちに即応艦隊を編成し惑星ハリガナへ派遣していた。

 そして共同艦隊から優先的に避難民の受け入れと不足した物資などを渡して行く予定だ。無論この物資受け渡しに紛れて隠密作戦が開始されている。

 ボーデン大尉以下十二名は直ちに潜入道具一式を受け取りステーション内部へと侵入。そして傭兵ギルドの中枢部へハッキングを開始。依頼データの排除を行う。そして時期を見てステーションへ物資や避難民を送り届けて空になった帝国軍の輸送艇に乗り込み帝国艦隊へ帰還する。

 駆逐艦ベルセットの乗組員に関しても同様だ。帝国艦隊より派遣される輸送艇が此方に物資の受け渡しを行う。それと同時に入れ替わりで帰還する流れだ。そしてその間に各艦艇から乗組員を分けて駆逐艦ベルセットに乗り込ませる予定だ。


「准尉、君には色々助けられた。最終的にこの様な結果になったのは残念だが」

「更なる被害を抑える必要はありますよボーデン大尉。事が公に出れば帝国市民が巻き込まれるのは必至。最悪、連邦と銀河自由共和国が手を組んで帝国に攻めて来ますよ」

「それだけは何としても阻止せねばならん」

「ええ、その通りです。その通りですから俺達との繋がりをしっかり消して下さいね」

「分かっている。時間も余り残されてはいないだろうからな」

「まあ大々的にアイリーン博士を指名手配しちゃいましたからね。其処から突っついて来る連中は山の様に居るでしょうね」

「違いないな」


 お互い苦笑いしながら話を終える。何方にせよ真実は隠す必要がある。今回の件は色んな意味で世間と国を刺激しまくる劇薬だ。


「では御武運を」

「うむ。其方もな」


 俺はボーデン大尉に敬礼をして見送る。彼等は直ぐにステーション行きの船に乗るだろう。出来る事なら何事も無く事が済めば良いのだが。


「つっても、一番の問題はマザーシップだよな。あれどうやって倒すのさ?」


 端末を取り出しマザーシップの情報を出す。マザーシップの情報はまだ一部の者達しか知らない。何れ軍から世間に対し正式発表されるのは時間の問題だろう。

 暫くマザーシップの攻略法を考えるが、少なくとも俺には全く思い付かなかったのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] マザーシップの落とし方…エルフさんか……惑星アタッーークだな‼︎小惑星とかエネルギーパンパン状態の船とかをぶつけるとかかな‼︎
[一言] とりあえず感想欄みて生存はしてるから安心。反応なかったら宇宙の藻屑にするわ
[良い点] 異世界ファンタジーものが多い中こういったSFを探してました! めちゃくちゃ好みです。 面白すぎです。 応援します
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