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ソラリス防衛戦

 地球連邦統一艦隊からオーレムに対する攻撃が開始される。それと同時に俺達AW部隊に出撃命令が下される。


『連邦司令部よりAW部隊に出撃命令が来ました。AW部隊は速やかに出撃準備に入って下さい』

『待ちくたびれたぜ。派手に暴れて一躍有名人になろうかな!』

『ガルム8、お前は有名人になる前に借りを返すまで死ぬんじゃねえぞ』

『くぅ〜!来たぜ来たぜ!オーレムなんざ一匹残らず殲滅してやらあ!』

『なぁ、知ってるか?今この共同部隊には【翡翠瞳の姉妹】が居るんだよ』

『本当かよ。俺めっちゃファンなんだよ。嘘だったら背後から撃ち抜くからな』

『嘘じゃねえよ!本当だって。参戦表の中に確かに名前があったからな』


 同僚達の会話を尻目に俺は直ぐに出撃準備を整えてオペ子に連絡を取る。


「此方ガルム11、出撃準備完了だ。いつでも出れるぞ」

『了解しました。ガルム11、第一カタパルトへ移動します』


 若干の振動と共に機体が第一カタパルトへ向かう。そしてカタパルトへ接続し登録した武装を装着する。


「武装、機体共にオールグリーン」

『了解しました。第一カタパルトハッチ解放』


 アラームと共にハッチが開く。ふと左を向くと数人の作業員が此方に向けて敬礼をしている。俺は単眼アイを数回の瞬かせてから前を向く。


『現在艦隊は収縮砲による一斉砲撃の準備中です。しかし前方では既にオーレムとの戦闘が発生。直ちに前方艦隊の支援を開始して下さい』

「なら、給料分以上の働きはしてやろうかね」

『また戦艦グラーフ、チャーリー、ナザールイは収縮砲発射態勢の為、砲戦能力が一時的に落ちています』

「了解した。何かあれば直ぐに呼び戻せよ。可能な限り戻ってやるからさ」


 俺はニヒルな笑みを浮かべながら返事をする。こんな時、普通の笑顔が出来る奴は間違い無く善人だろう。


『有難うございます。それでは出撃お願いします』

「おう、任せておけ」

『進路クリア、発射どうぞ』

「シュウ・キサラギ准尉、ガルム11、バレットネイター出るぞ!」

『どうか無事の帰艦を』


 オペ子にウィンク一つ決めてカタパルトからバレットネイターを射出する。そして弾幕飛び交う戦場へ向かって突撃する。


「さて、今回の連携は少々厳しい所があるな。収縮砲の発射準備中なら尚更だわな。ガルム12聞こえるか?」

『此方ガルム12、どうしたんスか?』

「ガルム12は暫く艦隊の防衛に回れ。今はまだオーレムとの距離が少々あるからな」

『了解ッス。それでは先輩気を付けて』

「俺はガルム11だよ。ガルム12」


 そう言って更にバレットネイターを加速させる。前方では駆逐艦、フリゲート艦、巡洋艦、収縮砲非搭載型戦艦(BBN)がオーレムとの激しい射撃の応酬を行い、AW、MW部隊がオーレムとの戦闘に突入していた。


『各機!連携を乱すな!互いにフォローし合うんだ!』

『下等生物が群れてんじゃねえ!』

『ミサイル発射!派手に吹き飛びな!』

『此処から先には行かせない。絶対に行かせない!ソラリスには家族が……ナナリーが居るんだから!』

『駆逐艦ナズーリがβ型の集中砲火を受けています』

『対ビーム撹乱ミサイル発射!敵の攻撃能力を抑えろ!』

『くっ、被弾したか。だがまだやれる!』

『第八ミサイル発射管誘爆!隔壁閉鎖急げ!』

『α型に追われてる!振り切れない!』


 前方では連邦のAW部隊と戦闘機部隊がオーレム相手に派手な乱戦を繰り広げている。無論その中にも傭兵部隊もいるのだが上手く連邦部隊を囮に立ち回ってる感じだ。


「まぁ、妥当な判断だぜ。だが俺は違う。行くぜネロ、バレットネイター。オーレム共を狩り尽くすぞ!」

「了解しましたマスター。全力でフォロー致します」


 バレットネイターを一気にオーレムに向けて加速させる。最初のターゲットは連邦の駆逐艦とフリゲート艦に攻撃を続けてるβ型の群れ。

 β型は今は目の前の艦隊にしか興味が無いのだろう。ならその隙に狩らせて頂こうか。

 機体をβ型の群れの真上に移動せてからプラズマキャノン砲を展開。そして先頭のβ型に照準を合わせながら接近する。此方に気付いたα型が迎撃に来るが二連装機関砲で蹴散らしながらβ型に接近。


「射程に捉えた。先ずは一匹目」


 β型を視界に捉えながらトリガーを引く。プラズマキャノン砲からプラズマの塊が放たれる。プラズマはβ型のど真ん中に直撃して爆散。そのまま次のβ型に狙いを定めて再びトリガーを引く。


「さぁて、オーレム狩りの始まりだあああ‼︎」


 プラズマキャノン砲から45ミリヘビーマシンガンに切り替えてβ型の群れに入り込む。その間に多数の対空ビームバルカンが此方を狙うが回避し続ける。


「狙いが正確だからな。バレットネイターにとっては有難いこったあ‼︎」

「β型の死角に入りました。またオーレムの同士撃ちを避ける傾向があります。上手く活用出来れば十三体のβ型を無力化出来ます」

「良いぜ。やってやらあ‼︎」


 そのままβ型の側面に取り付きながら45ミリヘビーマシンガンを撃ちまくる。更にプラズマキャノン砲を再び展開して別のβ型を撃ち抜く。

 だがβ型も仲間の合間を縫ってビームを放って来る。勿論三秒前から視えてる俺にとっては回避する事は容易い。

 連邦部隊は勿論の事、共同部隊もこの隙を逃す訳が無い。頭の馬鹿な奴がβ型の群れに風穴開けたのだ。その風穴を使えばボーナス確定なのだ。


『あの野郎良い度胸してるぜ。今の内にあれをやるぞ。ジャニス行くぜ!』

『分かったわジョニー。私達のテクニックを見せ付けてあげる!』


 二機の戦闘機が一体のβ型に攻撃を仕掛ける。一機が囮になり、もう一機が攻撃を仕掛ける。


『行くわよ!ワンショットアタック!』


 戦闘機の下部に外付けしてある小型プラズマジェネレーターに中型のビーム砲が直結されてる物を搭載しており、戦闘機としては破格な攻撃力を持っている。そして戦闘機から放たれたビームは上手くβ型を貫き爆散させる。


『ジョニーやったわ!次のβ型に狙いを付ける!』

『良いぞジェニー……間違えたジャニス!』

『ちょっと!ジェニーて誰よ!』

『誤解だよハニー。唯の仕事で知り合った人と間違えただけさ』

『後でしっかり話し合いましょう?逃がさないから』

『……はい』


 そして二機の戦闘機は次々とβ型を葬って行く。因みに彼等はバウンティハンターとしては中々の腕前らしい。

 そんな面白い奴らの会話を聞いてた連中は笑いながら戦果を褒め称える。


「よう痴話喧嘩も程々にしとけよ?」

『あら御免なさいね。でもジョニーが悪いのよ』

『すまないハニー。だが悪気は無かったんだよ』

『フンッ!暫くは口聞いて上げない!』

「なら俺と組むか?其奴より良い戦果を約束するぜ?」


 俺は意地悪な感じでジョニーとジャニスに声を掛ける。するとジャニスはフンッと鼻息を荒くして言い放つ。


『お生憎様。私にはバディがいるの。然も腕の立つバディがね』

『ジャ、ジャニス!僕は君を愛し続けるよ!』

『調子に乗らない!だから御免なさいね』

「ハッハッハッ!残念、振られちまったな。まあアンタみたいな良い女なら簡単には手放されねぇわな。おいジョニーとか言ったな。其処の良い女に精々捨てられねえ様に気張れよ。じゃねえとマジで誰かに取られるからな」

『な、何を!僕とジャニスの絆は深いんだ!』

「その慢心に驕らねえ様にな。じゃあなジェニーちゃん」

『私はジャニスよ!そうだ!ジェニーて誰!』


 振られてしまったので最後にジェニーと言ってから別れる。まあこの宙域に居れば擦れ違う事はあるだろうけど。


「いやー、彼奴ら弄るの楽しかったな。それに中々良い連携だったし」

「該当データありました。バウンティハンター所属のジョニー・ハマライとジャニス・ミネコです。ジョニー機の戦闘機による撹乱で敵を引き付けジャニス機のビーム砲で多くの艦艇を沈めています。またそれに伴い懸賞首も捕らえています。自治軍からも二度程表彰されています」

「はぁん。見かけによらず意外と優等生なのな」

「しかしマスターには実力共に敵いません」

「ハッ!当ったり前よ!」


 そう言って俺は再びオーレムに向けて攻撃を開始する。

 数百のα型の群れに対して45ミリヘビーマシンガンと二連装機関砲を撃ちまくる。最早適当に撃っても何かしらに当たる状況。正直言うとAW一機で何とか出来る量では無い。


「クソったれが。こんな時にデルタセイバーが有ればな。無い物強請りした所で意味無いけどな!」


 プラズマキャノン砲を展開してα型の群れに向けて撃つ。だがα型は仲間の死を何とも思わないのか真っ直ぐに此方に向けて襲い掛かって来る。

 俺は群れの外側スレスレを通る様にα型のビームバルカンを回避する。α型は所詮戦闘機に近い動きなので背後を取るのは比較的簡単だ。だがオーレムの最大の武器は数なのだ。


「六時方向下方よりα、β型の混戦部隊接近。β型から高エネルギーを探知。回避して下さい」

「邪魔すんな!オーレムが!」


 機体をロールさせながらβ型からのビームを回避。お返しにプラズマキャノン砲で反撃するが焼け石に水だ。

 だが此方にも味方は居る。俺に引き寄せられていたオーレムの群れに多数のビーム、ミサイル、弾丸が襲い掛かる。


『其処の機体、良くやった。感謝する』

「気にすんな。それより次も頼むぜ。一人だとオーレムの群れなんざ捌き切れねぇからな」

『任せろ。各艦、味方機に当てるな。オーレム共を全滅せよ!』


 連邦艦隊の駆逐艦、フリゲート艦、巡洋艦からの濃密なビーム砲撃により瞬く間にオーレムの群れが消えて行く。だがオーレムの群れは次から次へと攻めて来る。


「こりゃジリ貧だな。オペ子聞こえるか!収縮砲の充填はどうなってる!」

『此方の艦隊はほぼ完了しています。後は防衛基地ソラリスの【エクスターミ収縮砲】の充填のみです』

「要塞級の収縮砲か。確かにアレならあのデカブツも破壊出来る……かな?」

『破壊出来なければ困ります。エクスターミ収縮砲以上の攻撃能力を保持する施設は限られてしまいますので』

「だよな。此処で仕留めないと俺達全員御陀仏になりそうだしな。まぁ、それでも俺だけは生き残るけどな!」

『そうならない事を願います。それでは引き続きオーレムに対する攻撃をお願いします』

「了解した。後、数分後に弾薬の補給をするから。その時は宜しく」


 そして再びオーレムに対して攻撃を再開する。他の戦線でも被害が出てはいるが何とかなっている。


「と言っても、まだ始まったばかりなんだけどな」


 俺はレーダーを確認しながら味方が押されてる場所に目星を付けて再び戦場へと向かう。いつ自分が死ぬかも知れない戦場。

 だが俺は非常に興奮していた。多数の敵味方の激しい撃ち合い。幾つものビームやミサイルが宇宙を駆け巡り、幾つもの命が散って行く。其処には倫理も常識も必要無いのだ。


「もっとだ。俺ならもっと戦える。ギフトよ、俺に生き残る未来を視せてくれ!」


 三秒先の未来視。それこそが俺が生き残れる術だ。後はその時で臨機応変に対処するだけだから。





 地球連邦統一艦隊はオーレムに対し本格的な迎撃戦闘を開始。それに伴い前衛の被害が徐々に増え始めるのは仕方無い事だ。


「第25駆逐艦隊より増援要請確認。第45フリゲート艦隊を向かわせます」

「前衛のAW部隊に被害が増え始めています。第二次戦力の投入準備に入ります」

「エクスターミ収縮砲の充填率75%。各BBLの充填率95%」

「AS部隊によるAW部隊の援護を開始。AS部隊は速やかにβ型、γ型に攻撃を開始せよ」

「前衛艦隊の損耗率20%、AW部隊の損耗率35%。依然として予定範囲内です」

「A区画にて一部部隊によるオーレムの撹乱に成功。現在優勢を保っています」


 防衛基地ソラリスの司令室では様々な情報が入って来る。そんな中ウィルソン中将はマザーシップを見続けていた。


「アレは一体どんな存在だと思うかな?」

「は?そうですね。オーレムの巣だと思いますが」

「そうだね。だが私はオーレムの巣と言うより輸送艦に感じるよ」

「輸送艦でありますか?」

「そうだ。あのデカブツにはまだ幾つものオーレムを抱え込んでいる。それを全て纏めて吹き飛ばす必要がある」

「その為のエクスターミ収縮砲ではないのですか?」

「その通りだ。だが私は思うのだ。もしあのデカブツを破壊したらどうなるかを」

「それは一体?」


 ウィルソン中将は紅茶を一口飲む。


「最悪なのはデカブツの派遣が当たり前になる事。もっと最悪なのは更なる新種のオーレムが現れる事だ」

「それは……流石に」

「無いとは言い切れない。だろ?」


 その言葉に誰も反論出来ない。反論したくても反論出来る要素が無いのだ。


「アイリーン博士はオーレムに対する何かを掴んだ。それを使えば無傷でオーレムを追い払える手段も有っただろうに。全く、大局を見据える事が出来ない無能に才能を与えるとは。神とはつくづく人間が嫌いと見える」


 再び紅茶を飲んだウィルソン中将はオペレーター達に指示を出す。


「これより各艦へ通達。十分後に各BBLによる一斉射撃を開始する。この攻撃により前方のオーレム群の排除を行う。その後エクスターミ収縮砲による最大出力によるマザーシップの殲滅を行う。以上だ」


 オペレーター達は速やかに各艦隊旗艦に指示を出す。それを見ながらウィルソン中将は一言呟く。


「我々地球連邦統一軍は負けんよ。何故なら宇宙一の統率の取れた最高の軍隊なのだからね」


 そしてウィルソン中将は優雅に残りの紅茶を飲み干すのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] >これミス投稿ですね。本当は一話だけだったんだけどね_(┐「ε:)_ どんまいでござる。 二話連続ごちそうさまでした。
[一言] 二話連投の場合、前書きに一言あったほうがいいですよ。
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