ユニオン艦隊VS傭兵艦隊+エルフ2
艦隊戦は芸術だ。何処かの酔狂な奴が言った台詞だ。だが、それはあながち間違いでは無いだろう。
ユニオン艦隊からは緑色のビームが放たれ。傭兵艦隊からは赤やら青やら黄色やらと様々な色のビームが宇宙を彩る。更に遠距離用ミサイルでの攻防戦も繰り広げられている。
最初は互角な撃ち合いを見せていたが徐々に性能差と練度差が現れ始めていた。だが、まだ戦闘は始まったばかり。いつ何処で流れが変わるか分からない。
『艦載機発進開始。敵艦隊に進入路を作れ。各艦隊、一点集中砲撃開始』
スマイルドッグ艦隊及び他傭兵艦隊が、各々の艦載機を敵艦隊に突入させるべく集中砲撃を開始する。本来なら共同して行った方が良いのだが、ゴロツキ故の我の強さが仇となり各自でやる事になってる。
尤も無理に合わせようとするなら連携もクソも無いので、せめて突入のタイミングだけは合わせようと言う訳だ。
ハッチが解放されて広い宇宙がモニター越しに目に入る。ユニオン艦隊の後ろには惑星ベネットがあり守護者の様な立ち位置だ。さながら俺達は侵略者と言った感じかな?
『キサラギ軍曹、発進どうぞ』
「了解した。シュウ・キサラギ軍曹、サラガン出るぞ」
カタパルトから射出されたサラガンを操作する。因みに、このサラガンはこの前手に入れた輸送機とマドックを闇市場で物々交換して手に入れた新品だ。
スマイルドッグはサラガン系列を使ってるから整備の面からサラガンの方が良いのだ。
更に今回は宇宙戦という事でサラガンには幾つかの追加ブーストと武装が取り付けられている。
先ずは機動力と運動性の底上げの為に脚部、肩部、背部にブーストを設置。胸部、腕部、脚部に追加装甲の追加。右肩に250ミリキャノン砲、左肩に十二連装多段ミサイルを装備。後は手持ち武装として55ミリライフルと多目的シールドを装備。接近戦用のサーベルも腰に懸架している。
地上戦と違い宇宙なら多少無理な装備が可能なAW。故に宇宙戦ではどのAWも気の抜けない相手となる。特に今回の様な中規模企業が相手だと尚更だ。
『先ずは戦闘機隊が突入路に向けて突撃。その後、AW隊は敵戦闘機隊、及びAW隊を撃破。そのまま敵艦隊の懐に入れ』
「簡単に言ってくれるぜ。言うは易し、行うは難しってね」
本隊からの無茶な注文。だが、それに対して不平不満は少ない。何故なら一番槍はエルフが保有する超高性能なAW隊なのだ。
数は三十六機でその内の一機があの超高性能機だ。更に残り三十五機も大型のビームキャノン砲を二門背中に搭載してる。
つまり、かなり凶悪な部隊と言う訳だ。
因みにサラガンや他のAWもビーム兵器は使おうと思えば使える。先程の背中に背負う形なら大体可能だ。但し、排熱やら大型冷却装置を背負う必要があるので機動力の大幅な低下に繋がる。その為、フリーの傭兵やバウンティハンター達が使う機会は多いとは言えない。
だが、エルフ部隊のAW隊はどれも超高性能機に追従している。つまり一般機でも高性能なのが見て取れる。
突入路に突撃して行くと、ユニオン側の戦闘機隊とAW隊が盛大な歓迎会を開催しようとしていた。だが、その歓迎会はエルフ部隊によってしっちゃかめっちゃかにされていた。
エルフ達は初っ端からビーム兵器を遠慮無くぶっ放した。冷却機構が良いのか鬼の様な連射で次々とユニオン部隊を破壊して行く。然も威力も高いのか、シールドで防御してたマドックだが貫通して爆散してしまった。
「えげつねぇ威力と連射。エルフ共には遠慮ってもんが無いのかね」
まぁ、お陰様でこちらへのヘイトが減ったから助かってるけど。因みに超高性能機の奴は自慢の機動力、防御力、火力を活かし敵部隊を撹乱及び破壊していた。
あれ絶対チートだよチート。
『各AW部隊に通達。ユニオン艦隊から更なるAWが出撃している。各機警戒せよ』
『マジかよ。今でもキツイっていうのに』
『はよ増援来いや。普段は威勢が良い癖にこんな時に日和りやがってよ』
『所詮チキン野郎だったって訳だ。まあ俺は他所の連中何ぞハナっから当てにしてねえけどな!』
再びユニオン部隊が盛り返す。だが俺達がやる事に変わりはない。目の前の敵を倒す。それが任務だから。
「ハハ、堪んねぇな。本当にSFやゲームの世界じゃねえか」
最初は唯AWに乗りたくて傭兵になった。そして、自身のギフトも役に立つと思っていた。だから今此処に居る事に後悔は微塵も無い。
だが、ふと思う事がある。もしAWに乗りたいだけなら他の職もあっただろう。それこそ真っ当な軍人やジャンク屋とかだ。尤も、こんな思考なんて直ぐに忘れてしまうだろう。何故なら大抵は戦場のど真ん中で思うのだから。
目の前に三機編成のマドックが迫る。マドックが持つ45ミリアサルトライフルがこちらに狙いを定め撃とうとする。だが、俺には視えていたから問題ない。
「悪いね。俺もそれなりのチート持っててね」
マドックが攻撃する前にこちらの250ミリキャノン砲が火を噴く。250ミリの砲弾は先頭にいたマドックに真っ直ぐに向かって行き直撃。そのまま敵マドックは爆散する。
【隊長!野郎よくも!許さねえ!】
「何を許さねぇんだ?お互い、クソみてぇな立場に居るってのによ」
【ッ!くたばりゃああああ⁉︎】
二機のマドックがミサイルを放つ。だが、その直後に55ミリライフルを二発撃つ。55ミリの弾丸がミサイルが発射されたばかりの所に迫る。そして、弾丸がミサイルに当たった瞬間に爆発。更に他のミサイルにも誘爆しマドックはミサイル共々爆散する。
「さて、次は駆逐艦でも墜とすか。そうすりゃあ、ボーナスの一つや二つは入るだろ!」
サラガンを駆逐艦に向けて加速させる。駆逐艦の周りにも敵AWは居る。そしてユニオンの駆逐艦がこちらを確認する。
【敵一機、二時方向下方より接近中。各砲座は迎撃用意】
【ビーム砲、照準良し】
【ミサイルロック完了】
【各砲座自由射撃。攻撃開始】
駆逐艦から一斉に攻撃が始まる。緑色のビームがこちらに迫る。だが、来る事は分かっていた。だから最低限の動きで避ける。
ミサイルが迫るが、こちらもミサイルを一秒後の爆破設定で発射。お互いのミサイルが交差した瞬間にタイマーが起動してミサイルが自爆。
駆逐艦のミサイルの軌道がズレて進路が開くと、そのまま爆煙の中を突き進む。
【敵機更に接近中。対空防御用意】
【AW隊、直ちに敵AWを迎撃せよ】
こちらに対しようやく動きを見せるAW隊。だが、今更遅い。再度ミサイルで敵AWをロックし発射。ミサイルを回避する敵AW隊。
「馬鹿め。そいつは囮なんだよ」
追加装甲をパージし重量を軽くする。更に操作パネルを弄り、ブースターのリミッターを解除。サラガンが一気に加速して行き敵駆逐艦に迫る。
【敵機、更に加速!AW隊を抜けます!】
【AWは何をやってる!迎撃、撃ち墜とせ!】
対空射撃とビーム砲がこちらに迫る。俺にとって一番脅威となる対空砲を250ミリで吹き飛ばして行く。ビームがこちらに迫るが、いつ来るかのタイミングはギフトで先読みして分かってるのでアッサリ回避する。
「それじゃあサヨナラだ」
擦れ違い様に駆逐艦の艦橋に250ミリを撃ち込む。更に、そのまま後方に回り込みエンジン部分にも撃つ。そのまま離脱しリミッターを元に戻す。敵AWが追いかけて来ようとするが、駆逐艦が爆散して破片やら爆煙に右往左往する始末。敵ながら不甲斐無い連中だと思ってしまう。
「機体や装備は良くてもパイロットがイマイチか?」
まぁ、中規模企業だとそれなりに安全になるからな。戦う事なく相手を威圧して終わる事が大半だ。それに此処に居るユニオン艦隊も全部じゃない。恐らく熟練兵などはユニオン本社に多くいると思うし。
この調子なら案外勝てるかも知れん。
「そう思っていた時期が僕にもありました。うはっ!激烈な追撃にヤバタニエン!」
一度弾薬と推進剤の補給をする為に補給地点に移動しようとしたのだが、ユニオンの戦闘機F-86マッキヘッドが多数追撃して来る。敵の通信を聞いてみると、どうやら先程撃沈させた駆逐艦所属の艦載機みたいだ。
【絶対に逃がすな!仲間の仇を!】
【フォーメーションBで行くぞ。攻撃の間を空けるな】
【敵と合流されたら厄介だ。直ぐに仕留めるぞ】
十二機のマッキヘッドに対し、こちらは55ミリライフルと胸部に有る対人用12.5ミリマシンガンしか無い。
「勝てない戦いはしない。これ戦場で生き残る鉄則よ。と言う訳でオペ子ちゃん、後はよろぴく」
『了解しました。フリゲート艦及びグラーフ副砲ロック完了しました。回避して下さい。後、私はナナイです』
「こっちで避けるから一気にぶっ放していいよ」
『了解しました。副砲射撃開始』
フリゲート艦の迎撃ミサイルと戦艦グラーフの副砲が攻撃を開始。完全に油断していた敵戦闘機隊は回避する間も無くアッサリと撃墜されて行く。
「ひょう!やるねぇ。一気に十二機瞬殺か。流石、オペ子だぜ」
『一度補給の為に帰還して下さい。それから私は「ナナイだろ知ってるよ」……知ってるならナナイと呼んで下さい』
「え?オペ子はオペ子やろ」
俺はナナイに対し何言ってんのコイツといった表情を見せる。オペ子ちゃんの頬が若干引き攣ってるのは気の所為だろう。
「ま、取り敢えず補給の為に帰還するよ。着艦準備宜しく」
『了解しました』
直ぐにいつものオペ子ちゃんに戻る。うん、さっきの表情は気の所為だな。そう思いながら戦艦グラーフに帰還するのだった。