α型、β型
オーレムが目撃された宙域には多数のデブリが宇宙を漂っていた。このデブリの中にも最近被害に遭った連中の艦やAWはあるのだろう。
俺は待合室でネロを膝の上に載せながらデブリ漂う宇宙を眺める。
「この辺りにも近い内にジャンク屋が来そうだな。俺達もデブリの仲間入りしねぇように気を付けねぇとな」
「マスターなら大丈夫です。高確率で生きて帰還するかと」
「そりゃまあな。だかあのAWの残骸を見ると明日は我が身だとしみじみと思う訳よ。つまりワビサビを感じる?みたいな?」
「ワビサビ……今の光景に風情を感じるでしょうか?」
「風情か。じゃあ違うな。何方かと言うとあんなマヌケな風には成りたく無いだな」
「それは唯の罵倒になります」
「そうか。言葉の使い方って難しいねネロちゃん」
俺の下らない話にもしっかりと相槌を打ってくれるネロ。やはり此奴は最高の戦闘補助AIであり相棒だなと確信する。
「まあオーレムとの戦いも楽しもうぜ。正に世の為人の為って奴だからな」
所詮、獣程度の知性しか無い連中だ。群れてるからこそ脅威ではあるが、少数なら唯のカモ撃ちにしか成らないのだからな。
艦内に警報アラームが鳴り響く。それと同時にAW部隊とMW部隊に出撃命令が下る。
「早速オーレムのお出ましか。嬉しい歓迎会だぜ」
俺はバレットネイターに乗り込み機体チェックを急ぐ。
今回はオーレム戦なのである程度の火力と継戦能力が必要だ。連中は一匹になろうとも戦闘を続ける。
つまり殲滅か全滅かの二者択一な訳だ。
「45ミリヘビーマシンガンと予備弾倉。プラズマサーベルと両肩側面部の小型多目的シールド。後は肩部に……あ、そうか。こいつジェネレーター出力高いんだっけ。ならβとγ相手にはプラズマキャノン砲が丁度良いや。後は左肩に十二連装ミサイルポッドを搭載すれば……良し決まりだ」
高機動であり火力も充分。更に正面装甲は通常機のサラガンと何ら変わらない。ついでに増加装甲も取り付ければ完璧だ。
「重量は結構ギリギリだな。まあ多少の機動力低下は折り込み済みよ」
「機動力低下は許容範囲です。またいざとなれば追加装甲、武装をパージすれば問題有りません」
「だな。お前のお墨付きも貰ったからな。完璧だぜ」
俺はネロをひと撫でしながらアズサ軍曹に通信を繋げる。
「そっちの準備はどうだキャット2?」
『問題無いッス。今度こそ大口径ガトリング砲の餌食にしてやるッス!』
「それはオーレムに対してだよな?俺じゃねえよな?」
『勿論スよ?何言ってるんスかキャット1』
何か言い方が不安だったので確認の為に聞いたら、当たり前じゃんみたいな表情されてしまった。
「まぁ、何でも良いけどな。他に何の武装付けたんだ?俺はそれなりの火力が出せるけどな」
『後は両腕に45ミリヘビーマシンガンを二挺スね。それから両肩側面部には30ミリガトリング砲を付けてるッス!』
「それ重量ヤバくね?」
『大丈夫ッス!……多分』
「いや絶対無理だわ。せめて30ミリは外せよ。精々使い捨てのロケット砲が精一杯だろ」
『うぅ〜……あ、ならコレにしまッス!これなら……良し!ギリギリ行けるッス!』
「装備が決まって良かったな。丁度俺達の番だからな。じゃあ先に行くぜ」
機体がカタパルトの前に移動し接続される。そして指定した武装が一つずつバレットネイターに取り付けられる。
『キャット1、武装チェックをして下さい』
「武装システムオールグリーン。キャット1、いつでも行けるぜ」
『了解しました。オーレムはα、β型を主力とした勢力です。しかしγ型も三体確認されています』
「任せな。その程度だったらさっさと終わらせるよ。溜まってる映画とか視たいからな」
『そうですか。無事の帰還をお祈りします。進路クリア、発進どうぞ』
「シュウ・キサラギ准尉、バレットネイター、出るぞ!」
『お気を付けて』
オペ子の言葉にウィンク一つで返事をしてカタパルトから射出される。そしてアズサ軍曹の重装備のアーミュバンカーも出撃が完了する。
「キャット2、今回はそれなりの数を引き付けて来るからな。カモ撃ちになるだろうから楽しめよ。て、二発の大型ロケット積んでんのかよ。それ高いだろ」
『そうッス!これならオーレムの大群に撃ち込めば大漁ッスよ!ついでに戦果も大漁ッス!後オーレムに取り付かれたらお願いしまッス!』
「断る。自前で何とかしな。もう軍曹だろ?」
『えぇ〜、なら少し抑えて引き寄せて下さい』
「我儘な注文だな。何の為の大口径ガトリング砲だよ?後その辺りはオーレムにお願いしとけ。尤もお願いを言う前に墜とされたら笑うがな!」
『先輩マジ鬼畜ッス!』
「キャット1だ馬鹿野郎」
『あ、鬼畜なのは否定しないんスね』
キャット2と下らないやり取りをしながら味方と合流する。やはりスマイルドッグのAW部隊は殆どがサラガンで構成されてる。中にはマドックやギガントなんかも居るけど。
『間も無く第一陣のオーレムと接触するぞ。最初は艦隊からの艦砲射撃で数を減らす。残った残党を俺達が処理する。オーレム相手なら何時もの流れだ』
名前の知らない大尉が一応この中でリーダー役をやってる。因みに名前が知らないのは大体組む事が無いからだ。理由は俺が連携を余り取らないからだけどな。
『ガリア1よりキャット1。お前ブルーアイ・ドラゴン勲章を貰ったんだってな』
なんて事を考えてたら大尉ことガリア1からオープン通信で話し掛けられる。
「んあ?まぁな。ついでにこの機体も俺専用にカスタムされた特別機だからな。然も整備性もあると来てるから気分は最高だよ」
『チ、余り調子に乗るなよ。精々勲章を貰った位の働きはするんだな』
「そうしたらガリア1の手柄が無くなるけどな。俺は優しいから大量のオーレムを引き付けて擦り付けてやろうか?」
『その必要は無い』
「遠慮すんなよ。オーレムを大量に潰せばガルディア帝国から在り来たりな勲章が貰えるかもだぜ?」
俺が煽るとガリア1は苦々しい表情になり無言になる。全く、最初に煽ったのはそっちだと言うのに。
「まあ精々給料分は働くんだな」
『ふん、言われるまでも無い。各機、間も無く艦砲射撃が開始される。気を引き締めろ』
『『『『『了解!』』』』』
「それこそ言われるまでもねぇよ」
『流石先輩。これがエースって奴なんスね!』
「いやそれは関係ねえよ」
そしてオーレムがスマイルドッグ艦隊の射程に入った瞬間。
『オーレム、艦隊の射程内に入りました。いつでも撃てます』
『我々の邪魔をする輩は全て根絶やしにしてやれ。砲撃始め!』
『砲撃始め』
オーレムに対しスマイルドッグ艦隊からのビーム砲撃が開始される。ビームは次々とオーレムに着弾するがオーレムの動きに躊躇は無い。唯真っ直ぐに此方に向かって来る。
「相変わらずな連中だぜ。死ぬ恐怖心を持ってねぇのかよ!」
ビーム砲撃の中に混じる様にバレットネイターを加速させる。そして遂にオーレムと接敵する。
最初に来たのは先陣としての役割を持つ小型種のα型だ。α型は二種類居るが宇宙では戦闘機位の大きさの奴が高速で移動する。火力はビームバルカンをバラ撒くかプラズマ砲を放って来る。しかし宇宙ではプラズマの塊は当たる事は無いので基本的にはビームバルカンしか撃ってこない。それでも稀にプラズマ砲を放って来るのだが。
尤もOLEMの一番の脅威は数なのだがな。
「ほらよっと。先ずは三体撃破。このままコンボを繋げてやるぜ」
45ミリヘビーマシンガンで撃ちながら連続してα型を撃破。後は五秒以内に次のオーレムを破壊しないとな。
「ネロ、オーレムを五秒以内に倒した数をカウントしろ。後五秒カウントの表示も宜しく!」
「了解しました。撃破数の表示と五秒カウントを開始します」
「最高だぜ!このまま百コンボ目指すぞ!」
SIM機動を取りながらα型の背後に回り込み45ミリヘビーマシンガン更に撃破する。そのままの速度を緩める事無く次の獲物を捉えてトリガーを引く。
『各機!連携を乱すな!お互いフォローし合うんだ!』
『まだ序の口だ。この程度でくたばるんじゃねえぞ!』
『ヒャッハー!先ずは45ミリの弾幕を喰らえッス!』
『良いぞキャット2。このままα型を片付けるぞ。早くしねぇと次が来るからな!』
どうやら仲間達はα型相手なら問題は無い様だ。まあ数は多いけどα型だしな。ビームバルカンくらいならサラガンの装甲でも防げるし。
そして俺達は次々と正面から馬鹿正直に来るα型を迎撃して行く。
だがα型を撃破した時、三秒後にビームが此方に襲い掛かる光景が視えたのでランダム回避する。
「β型のお出ましか。キャット2聞こえるか?駆逐艦級のβ型を確認した。大口径ガトリング砲で穴だらけにしてやるチャンスだ」
『マジッスか!今そっちに行きまス!』
「いやそっちに引き寄せるよ。キャット2はそのまま待機。しっかり狙えよ?」
『了解ッス!いやー、やっぱりキャット1と組むと気持ちがいいんスよねー』
俺は群がり始めるβ型に対し45ミリヘビーマシンガンで撃ちまくり気を引く。すると対空用ビームバルカンとビームを撃ってくるがアッサリと躱す。
「流石バレットネイターだ。β型相手なら機動力だけで完封出来るな」
「カウント終了しました。α型の連続撃破数は七十五体になります」
「しまったぁ……β型に気を取られ過ぎたか。畜生!百コンボは繋げたかったぜ!」
仕方ないので更に他のβ型の気を引いてからキャット2の方へ向かう事に決めた。結果として七体のβ型を釣る事が出来た訳だ。
「キャット2、準備は良いか?」
『モチのロンッス!ウェルカム!』
俺はキャット2が上手く狙える様に進路を選びながらβ型を引き連れる。そして遂にキャット2ことアズサ・ニャメラ軍曹が大金叩いて買った大口径ガトリング砲が火を噴いた。
『逝っきまース‼︎』
そして圧倒的な弾幕がβ型の側面を撃ち抜きバラバラにして行く。殆どが駆逐艦級なのでシールドは搭載していない。お陰で次々とβ型の身体が簡単に穴だらけになり爆散して行く。
無論キャット2に気付いたβ型も居るが其奴に関してはSIM機動で機体を反転させてプラズマキャノン砲を放つ。正面からプラズマの塊を受けるβ型は、そのまま内部をプラズマによってズタズタにされながら爆散する。
そして数分後には俺はキャット2と共にβ型の群れを潰したのだった。
「後はα型とβ型が少しだけだな。キャット2、まだ食い足りないか?今ならγ型も逝けるぜ?」
『行きます!行きます!流石キャット1。頼れる先輩!頼もしいッス!よ!太っ腹ッス!』
「まあな!まあな!よし、俺に続け!γ型もご馳走してやんよ!」
俺は気分が良くなりキャット2を連れてγ型に向かうのだった。




