ユニオン艦隊VS傭兵艦隊+エルフ
スマイルドッグ本社 旗艦グラーフ
惑星ベネットから離れた場所にあるワープ中継ステーション。その近くにある宇宙ステーションにスマイルドッグの本社兼旗艦は滞在していた。
無事に本社から派遣された輸送機により回収されて帰還してきた訳だが。
「それで?おめおめと一人だけ逃げて帰って来たと言うのか。貴様は」
「いやですなぁ。臨機応変な対応をした結果ですよ社長。それに、元はと言えばユニオンの連中がしくじったのが事の発端でしょう?」
俺は豪華な社長室の中で今回のユニオンとエルフとの件について簡単に説明していた。尤も、社長は余り信用しては無い感じだけどね。
因みに社長はとっても金にがめつい事で有名な人だ。見た目もお金大好きな小太りのおっさんだ。
今回の件で傭兵企業スマイルドッグはそこそこの被害を受けた。故にユニオンに対しそれなりの額を貰わなければ割に合わない。それに、ユニオンに対する不信感は何もスマイルドッグだけでは無い。
「貴様の話が本当ならそれはそれで構わん。どの道、ユニオンとの話し合いはせねばならん。それにユニオンがエルフに手を出したのも気掛かりだ」
「個人的にはサッサと金だけ貰ってとんずらする事をお勧めしますよ社長。ま、採用されるとは思ってませんがね」
「なら、さっさと機体の準備をするんだな。恐らくユニオンとの一戦は交えるだろう。無論、他の傭兵企業も同様の筈だ」
「そこにエルフの連中が加わるかも知れないからですか?」
「……良いからさっさと準備に入れ!」
「了解です。それでは失礼しますよ」
俺は豪華な社長室から退室する。あの部屋は完全に社長の趣味満載の部屋だからな。正直、社長のセンスを疑う所だがな。
「はてさて、この先どうなるかねぇ。開戦するにしても早くて三日後くらいか?やれやれ、俺はこう見えて平和主義なんだがな」
尤も、人型兵器に一目惚れして傭兵になった奴の台詞じゃねぇけどな。それに、自分の持つギフトが戦場で役に立つと理解出来た訳だし。
俺は自分の機体の調整作業の為、ハンガーに向かうのだった。
傭兵企業スマイルドッグの主力AWはZC-04サラガンだ。非常に生産性が高く、安価で整備性も良い。
AWとして必要以上の性能もあるだけで無く、古今東西様々な陣営が使用している名機と言える機体。
俺が搭乗するサラガンは特にパーソナルカラーやカスタムなどは行っていない。その方が敵から無駄に狙われる事は無いからね。
それに、俺はサラガンをよく壊してしまうのでノーマルで良いのだ。
そしてユニオン企業と傭兵企業との確執が生まれて五日後。惑星ベネットの軌道上にユニオン艦隊と傭兵艦隊が睨み合う形になっていたのだった。
ユニオン艦隊と傭兵艦隊との睨み合い。戦力比は2対1とこちらが劣勢だ。更に艦隊、戦闘機、AWの質はユニオン側が上。反対に傭兵側は寄せ集め感満載の戦力だ。
それに、ユニオン企業はこの広い宇宙の中でも中規模企業として名を馳せている。
故にユニオン企業に肩入れする企業はそれなりにいる。
対してこちらは傭兵企業と言ってるが、所詮はゴロツキの集まりだ。何方の味方をするかは誰がどう見ても直ぐ分かる事だ。
だから同業者の連中にはそれとなく声を掛けてるとか。
もしかしたら、こちらの戦況が有利になれば増援の一つや二つは来るかも知れんとの事。それでも傭兵艦隊の方が不利なのは変わりはない。
但し、傭兵艦隊の中にエルフ艦隊が居なければの話だが。
『貴様らよく聞け。この戦闘はユニオン企業の不手際を認めさせる為の戦闘だ。奴等は条約違反の事柄に手を出した。そして、その尻拭いを我々に押し付けようとした訳だ』
通信越しから社長が事の次第を簡単に説明している。
まあ簡単に言えばユニオン企業がエルフを捕まえて人身売買しようとしていた。そして、その商売を円満にしようとして傭兵企業を囮にした。尤も、エルフも馬鹿では無い為あっさり看破されて今に至る訳だ。
唯、この話で一番割に合わないのが俺達傭兵企業だ。何せ、無断で囮役を演じる羽目になった訳だ。そりゃあ、利益より面子を取る連中がワラワラと出てくる訳さ。
因みにウチの社長は最後まで銭勘定してたよ。そう言う所は嫌いじゃないけどな!
社長からの簡単な説明が終わり暫く臨戦態勢で待機命令が出る。そして遂に艦隊同士の砲撃が開始されるのだった。後傭兵企業とエルフ共との作戦会議は殆ど無かったとか。強いて言うなら自分達の配置場所くらいだったらしい。
旗艦グラーフ 第一艦橋
スマイルドッグの艦隊は戦艦となる旗艦グラーフを中心に、五隻の駆逐艦と五隻のフリゲート艦を前面に配置していた。他の傭兵企業も同様の配置になっている。
そしてエルフ艦隊は戦艦一隻に巡洋艦六隻の編成でまさかの中央配置になっていた。
何か考えがあるだろうが今の所は不明だ。常に秘密主義と排他主義な連中なので放っておくのが吉だろう。無理に関わって戦線離脱とか洒落にならんからな。
対してユニオン艦隊は中央に旗艦となってる超級戦艦を軸に右翼左翼にバランス良く戦艦を配置。更に巡洋艦と駆逐艦の数ではこちらを圧倒している。
「社長、間も無く戦闘開始時間になります」
「ふん。連中に我々傭兵企業を敵に回したらどうなるか見せてやれ」
「了解しました。主砲発射用意」
「主砲発射用意よし」
各艦隊の主砲が目標に向けて照準を合わせる。
「エネルギーシールド正常稼働中」
「主砲エネルギーチャージ60、68、78」
「各砲座エネルギー伝達正常」
「艦載機発艦準備良し」
そして開戦の時間になる。
「目標ユニオン艦隊、正面駆逐艦隊」
【目標傭兵艦隊、正面駆逐艦隊】
偶然にも狙うは同じ駆逐艦隊。お互いの戦力を一つでも減らせばそれだけ有利になると判断したのだろう。
「主砲エネルギーチャージ完了」
戦艦、巡洋艦に搭載される主砲がお互いが狙うべき相手に向ける。
「攻撃、始め!」
【撃ち方、始め!】
敵味方の艦長の号令の下同時に主砲から高出力ビームが放たれる。
遂にユニオン企業と傭兵企業による艦隊戦が始まったのだった。