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最後の一手

 クリスティーナ大尉の目の前には超級戦艦イストリアが悠然と立ち塞がっていた。殆どのダムラカの将兵達がキサラギ軍曹に集中していた。尤も散々オープン通信で相手を煽ってたので自業自得な気がしないでも無いのだが。


「でも今はキサラギ軍曹に感謝してる。お陰で目標ポイントまで後少し」


 自身のギフトである増幅を使いデルタセイバーの出力強化を行い、超級戦艦イストリアの真正面から突入する。干渉装置が収縮砲のある場所に換装されてる為、真正面から撃ち抜くしか無いのだ。

 だがイストリアとて伊達に超級戦艦クラスでは無い。戦艦以上の火力と防御力を保持しているのだ。


【高エネルギー反応を確認。本艦に敵機が接近中。例の機体、デルタセイバーです】

【ほう、遂に此処まで来たか。なら歓迎しようでは無いか。各砲座自由射撃。たった一機で来た事を後悔させてやれ】


 超級戦艦イストリアにはアデス・バングス大将が乗艦していた。そしてデルタセイバーに向け攻撃命令を出す。その瞬間、イストリアから大小様々なビームや実弾がデルタセイバーに襲い掛かる。

 弾幕の中を突き進むデルタセイバー。本来なら正面火力は一番危険な場所だ。だが収縮砲から干渉装置に変更された結果、干渉装置の一部分に穴が出来ている。それに干渉装置は基本的に一点集中兵器である為小さい目標には当て難いのだ。


「後少し、後……少し……」

【敵機更に加速し接近します】

【案ずるな。所詮AWだ。たかが一機のAWにこのイストリアは墜ちはしない。迎撃機を呼び戻させろ】

【了解です】


 多数のミサイルがデルタセイバーに迫り爆発する。だがデルタセイバーはシールドで防ぎ前へ進んで行く。それでも様々な攻撃がイストリアから放たれなんとしても迎撃をしようとする。

 だがデルタセイバーはその殆どを掻い潜り続け、遂に目標ポイントに到達した。


「この一撃で全てを終わらせる!」


 ビームライフルの銃口を干渉装置に向ける。デルタセイバーが溜め込んでいた高エネルギーが蒼い光を発しながらビームライフルの銃口に集まる。


【更なる高エネルギー反応を確認。干渉装置に向けて攻撃をしようとしています】

【無駄な事を。正面に防御エネルギーを集中させろ。敵機が攻撃を終えた瞬間に仕留めれば良い】


 アデス大将は冷静に指示を出す。どれ程高性能なAWだとしても超級戦艦のシールドを貫く事など不可能だと知っているからだ。無論他の将兵達も無謀な事だと内心嘲笑いながら対処する為に行動する。

 だがクリスティーナ大尉は冷静に干渉装置に向け集中する。自身のギフトである増幅を使いデルタセイバーのエネルギーを限界まで押し上げる。

 コクピット内では警告アラームが鳴りモニターにも危険域に突入しているのが分かる。それでもクリスティーナ大尉は限界まで増幅を止めなかった。


(アイツが……一人で敵を全部引き受けた。命懸けで戦ってる。だったら私も)


 一瞬だけ思考した時に閉じていた目を開きモニターに映る超級戦艦イストリアを見る。


 そして……


「いっけええええええ‼︎」


 トリガーを引いた瞬間、デルタセイバーの保持し続けた莫大なエネルギーがビームライフルに流れ込む。そしてビームライフルの銃口に溜まっていた蒼い光の塊が流れた瞬間。



 デルタセイバーが蒼い光に包まれる。



 デルタセイバーが保持し続けていた余剰エネルギーが排気口から蒼い粒子となり宇宙を舞う。そしてビームライフルの銃口から圧倒的なエネルギーが超級戦艦イストリアに向けて放たれる。


「く……くぅ……」


 歯を食い縛るクリスティーナ大尉。莫大なエネルギーを放つ中、今はデルタセイバーの機体維持を増幅させる事に集中する。でなければ機体がバラバラに吹き飛んでしまうからだ。


【アデス大将!これはAWが出せる攻撃では有りません!】

【まさか自爆か?】

【いえ、敵機は未だに健在です】

【馬鹿な……やはりエルフ共は危険だ。此処で奴等を葬らねば人類に災いが降り注ぐのは必須だ。何としてもシールドを維持させよ!】


 アデス大将はエルフに対する狂気と憎悪を滲ませながらも指示を出す。最早アデス大将の中ではリリアーナ・カルヴァータだけではなくエルフ全体を憎んでいたのだ。

 デルタセイバーの攻撃を受け続ける超級戦艦イストリア。徐々にシールドエネルギーが減っていくが許容範囲内なのを確認するとアデス大将は少しだけ余裕が生まれる。


【付近にいるAW部隊に伝えろ。デルタセイバーの攻撃が終わった瞬間に撃破しろとな】

【鹵獲などはしなくて宜しいのですか?】

【必要無い。奴等を一人たりとも生かしておく訳にはいかん】


 アデス大将が命令を下してる中、クリスティーナ大尉はデルタセイバーに対し集中し続けていた。


(このままではシールドを貫けない。そんなのは絶対にダメ。今でも皆が命懸けで戦ってる)


 ファング隊が艦隊防衛の為に必死に敵機を撃破する。

 ダムラカの兵士によるカミカゼを身を挺して防ぐスピアセイバー。

 乱戦の中、味方と共に連携し敵を撃破する二機のスピアセイバー。

 砲撃仕様で敵艦隊に圧力を掛ける部隊。

 戦艦アルビレオの艦橋内で妹の無事を心配しながらも表には出さず必死に艦隊指揮を執り続けるセシリア大佐。

 魔術式を展開させ、いつでも動ける様に待機し続けるリリアーナ姫。


 そして一緒に無謀とも言える状況の中、先導し続けてくれたキサラギ軍曹。


 一瞬、胸の中に大きな高鳴りが響いた。だからこそだ。此処で失望させたくない。誰よりも近くにいるあの男性に。


「お願いデルタセイバー……私に力を貸してええええ‼︎」


 クリスティーナ大尉が叫びながらギフトを使用。クリスティーナ大尉の精神面と共鳴したギフトは主人の想いに応えるべく増幅し続ける。

 その想いはデルタセイバーにも伝わりツインアイが刹那に光る。ついでにもう一つの乙女心も増幅される。


 そしてビームライフルから更なるエネルギーが増幅され放たれる。


 これに慌てたのは超級戦艦イストリアの艦橋内に居る将兵達だ。


【デルタセイバーのエネルギーが更に増幅しています!そんな……こんな事が】

【正面に集中しているエネルギーシールドが突破されます!もう保ちません!】

【誰でもいい!早く敵機を撃墜しろ!急げ!】


 艦橋内が騒がしくなってる中、アデス大将は呆然としてしまう。


【馬鹿な……認めん。エルフ共なんぞ絶対に、絶対に!】


 椅子から立ち上がりデルタセイバーが映るモニターを親の仇の如く睨みながら吠える。


【認めてなるものかあああ‼︎】



 その瞬間、超級戦艦イストリアのシールドが破られた。



 デルタセイバーから放たれた莫大なエネルギーは超級戦艦イストリアの内部を瞬く間に貫いていく。干渉装置は勿論の事、艦にとって最重要部分とも言っても過言ではない機関部をも破壊。そして蒼いビームの濁流は超級戦艦イストリアの後部から飛び出したのだった。


 だがこの大戦果がクリスティーナ大尉の乙女心を悩ませる結果になるのは、直ぐ後の話になる。





 超級戦艦イストリアの艦内は一瞬で地獄と化した。超級戦艦はその巨体を動かす為の大量の推進剤、エネルギー、弾薬を保持している。その中でも機関部は絶対に死守すべき場所なのだ。

 無論、重要区画である為分厚い隔壁で守られてるのは言うまでも無い。船体が大破しようとも機関部を取り出し再利用するのは大抵の艦艇でも行われる事だ。

 だがクリスティーナ大尉の増幅によって放たれた攻撃は分厚い隔壁を貫き機関部を破壊。そして機関部は最早完全に危険な爆弾と化していた。


「隔壁閉鎖急げ!早くしろ!」

「維持なんて出来るか!機関部自体がぶっ壊れたんだぞ!」

「待ってくれ!置いて行かないでくれ!」

「早く逃げろ!この区画はもう保たない!」


 逃げ惑うダムラカの兵士達を無慈悲にも爆発が襲い掛かる。勘の良い者は脱出艇に乗り込もうとするも退艦命令が出てない事が自身の決断を鈍らせる。


「此方B-40区画!此処にまで火の手が回ってる!被害状況を!」

「駄目だ消火出来ない!どうすりゃいいんだよ!」

「おい!隔壁が降りてるぞ!俺達を見捨てるのか!」

「開けろ!おい開けろよ!クソが!」


 艦の維持に努めるにも余りに被害がデカ過ぎたのだ。そもそも正面から最後尾までビームが貫通したのだ。維持出来る訳が無かった。


「アデス大将。被害状況は深刻です。各区画での維持、消火は困難。既に多数の死傷者が出ています」

「おのれ……」

「現在の被害状況から保って……十五分が限界です」


 十五分。移動するだけでも十分以上掛かる場所もあるにも関わらず十五分しか維持出来ない現実。いや、最早維持では無いのだ。崩壊するまで十五分しか無いのだ。

 艦橋内にいる全ての将兵達がアデス大将を見る。最早此処までと悟るには充分な状況だった。


「直ちに退艦命令を発令せよ。最寄りの艦に脱出艇の回収を急がせよ」

「はっ!」

「それから指揮を戦艦ビクトワーヌの艦長に移動させよ。彼なら上手くやるだろう」

「アデス大将?まさか……」

「私は簡単に引き下がる訳には行かんのだ。諸君、御苦労だった」


 アデス大将は静かに敬礼をする。だがそれでも将兵達は引き下がる。せめて脱出し次の機会を得る為にだ。


「大将閣下!貴方も脱出を!」

「私にはやる事がある。さあ行きたまえ。そして生きるのだ。生きて後世に伝えるのだ。我々は最後まで仇を討つ為に戦い続けたのだと」

「了解……しました!」


 アデス大将の決意を理解した瞬間、将兵達は涙ぐみながら敬礼をする。それに対し静かに頷きながら先を促すアデス大将。一人、また一人と出て行き遂に無人となった艦橋内。

 だが無人となった艦橋内でコンソールを操作するアデス大将。その目には先程の部下を思う気持ちは映っては無かった。


「我が祖国に栄光あれ」


 そしてキーコードを入力した瞬間、ブラックボールが突如加速しエルフェンフィールド艦隊に向かうのだった。

ギフトって何?と感じた貴方!その疑問は間違ってません!

切りが付けたら多分説明文作る…と思う…といいなぁ←


そしてクリスティーナ大尉が主人公より主人公してるわ。

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― 新着の感想 ―
恋心を成熟させようにも、 大戦果な英雄手放さないでしょうね。。。
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