原因の意味
リリアーナ・カルヴァータの救出は無事に完了した。その通信を聞いたセシリア大佐は戦艦アルビレオを超級戦艦イストリアと正面からの砲撃戦を敢行する。
無論他の巡洋艦、駆逐艦、フリゲート艦は周りの艦艇を相手に砲火を交え邪魔立てをしないように攻撃を集中させる。
「旗艦アルビレオより各艦に通達。間も無くリリアーナ様が帰還される。此処が最後の踏ん張り所だ。各艦の奮戦を期待する。アルビレオ前進!敵超級戦艦イストリアの正面に移動させよ!」
セシリア大佐の指示の元、戦艦アルビレオは超級戦艦イストリアの前面に移動し集中砲撃を開始。無論その動きを見た敵イストリア艦長は眉間に皺を寄せる。
【何かあるな。ユリシーズから何か反応はあるか?】
【お待ち下さい。ユリシーズより小型輸送艇がエルフェンフィールド艦隊に向かっています。更に後方に大型輸送艇を確認】
【どうやら地上では此方が負けた様だな。だが宇宙では此方が勝つ。全艦に通達、これより敵艦隊に攻勢を仕掛けろ。カルヴァータを生かして帰す必要は無い】
超級戦艦イストリアを中心にダムラカ艦隊は前進する。
互いのビームの砲火がより激しく交差し宇宙を彩る。そしてお互いの保有するAWや戦闘機も激しく戦いを行う。
スピアセイバーのビームライフルから放たれたビームがマドックに直撃し爆散。だが爆煙の中から突如攻撃機UA-10サンダーボルトが現れる。
そして自身の持つロケット弾を一斉射を敢行。ロケットの弾幕を避け切る事が出来ずスピアセイバーはバラバラになりながら爆散してしまう。
そしてお互いの艦載機が激しい攻防戦を繰り広げる中、ダムラカ艦隊が徐々にスピードを上げエルフェンフィールド艦隊に近付く。
因みにジャン大佐率いる傭兵団ことシルバーセレブラムと他の傭兵達はちゃっかり後方に残っていた。
「敵艦隊尚も接近してきます。大佐、このままでは交戦距離が」
「此処で我々が退けばリリアーナ様だけでは無い。降下部隊をも見捨てる事になる。敵艦隊を一隻でも墜とせ!」
「実弾兵器用意!艦首対艦ミサイル発射用意!」
「VLS開け。目標、超級戦艦イストリア!」
距離が近付けば近付くほど互いの被害が増えて行く。
駆逐艦同士の砲火による応酬。
フリゲート艦の放つミサイルが敵巡洋艦に多数直撃し艦中央から爆散する。
敵戦艦の砲撃により轟沈するフリゲート艦。そして多数の反撃を受ける敵戦艦。
その中で一隻の敵巡洋艦がリリアーナ姫の乗る小型輸送艇に向け突撃を敢行する。
【カルヴァータ!貴様だけは生かして帰さん!他の敵に構うな!攻撃を輸送艇に集中させろ!】
小型輸送艇と大型輸送艇に巡洋艦からビームが放たれる。小型輸送艇は小さい故に狙い難いし重力の影響もあり当てる事は難しい。逆に大型輸送艇はまだ重力圏内なのか回避機動が鈍い。
その為か大型輸送艇に砲撃が集中してしまう。だが不思議な事にギリギリで回避される。ならばと更に敵巡洋艦は前に出る。
それ以上前進すれば重力に引かれてしまうと承知の上で。
そして当の狙われてる大型輸送艇のコクピットではと言うと。
「お前ふざけんなや!狙うならあっち狙えバカヤロー!ネロ!外部モニターで確実に敵巡洋艦を捉え続けろ。そうすりゃあ何とかなる……筈」
「了解しました。しかし敵巡洋艦の行動が不可解です。このまま私達に近付けば惑星ユリシーズの重力に引かれてしまいます」
「それだけの覚悟があるんだろ。俺には真似出来ねえけどな。畜生!俺のアクロバティックな回避機動を見るが良い!」
重力圏内でギリギリの攻防を繰り広げる。そして無駄にテクニカルな機動を取る大型輸送艇。
その動きを見て敵巡洋艦の艦長は確信した。あの大型輸送艇にカルヴァータが乗っていると。
「ちげぇよバカヤロー!こっちに乗ってねえて言ってんだろうが!ネロ垂直噴射全開!」
「了解。垂直噴射全開」
罵声を浴びせながら敵巡洋艦から放たれるビームを回避する。
だが俺が必死に回避機動に集中してる時にファーストクラスから内通が入る。無視しても良いが後々煩そうなので繋げる。
「何か用か?こっちは忙しんだが」
『さっきからビームがこっちを狙ってるじゃない!どうにかならないの!』
「大佐殿にでも文句言っときな。尤も文句言える状況に持ってけれたらだけどな」
『反撃は出来ないの?』
「対空機銃でどうしろと?そんな事より回避イイィィ‼︎」
『きゃ⁉︎』
再び敵巡洋艦からのビーム攻撃が襲い掛かる。それが視えた瞬間、輸送艇を横に一回転させる。ビームが左の主翼の先端部分に被弾しただけで済んだのは最高だ。
「堪んねえな!こんな絶望的な状況なのに!何で顔がにやけちゃうかな!かな!」
「流石マスターです。どんな危機的な状況でも的確な行動をしています。それから……いえ、これは後から報告します」
「ハッハッハッ!話が地味に噛み合ってねえのも笑えるな!報告は緊急じゃないなら何でも良いさ!」
だがギフト使い上手く回避した甲斐があった。味方の巡洋艦が此方に近付きながら敵巡洋艦に対し集中砲撃を開始。
敵巡洋艦は多数の攻撃を受けながらユリシーズの重力に引き摺り込まれる。
【後少しでカルヴァータをこの手で仕留めれるのだ!攻撃を続けろ!】
大気の断熱圧縮により船体を赤く染めながら降下する敵巡洋艦。それでも攻撃を止めない辺り憎悪が深いのだろう。だが如何に憎悪が深かろうが物理的なものは防げない。
巡洋艦は重力に引かれ落ちていきながら次々と内部で爆発が起きる。乗員達は悲鳴と憎悪を叫びながら爆発に飲み込まれる。
【おのれえええ‼︎カルヴァータアアアア⁉︎⁉︎】
敵艦長の叫びと共に敵巡洋艦は爆散。更に爆発が続き粉々になってユリシーズへと落ちていく。
敵巡洋艦が爆沈したのを確認すると味方巡洋艦から通信が入る。
『此方巡洋艦レオニード。降下部隊の回収に入る。そのままレオニードの下部に入れ』
「ようやく来たか。もっと早く来て欲しかったものだがな」
『リリアーナ様の回収を最優先にしたのだ。無論我々は誰一人として君達を見捨てるつもりはない』
「わかってるよ。所で俺はレオニードの乗員全員にお礼でも言おうか?なんならハグもしてやるぜ」
『何方も要らん。コントロールを此方に渡せ。直ぐに済む』
「あいよ。今コントロールを渡したよ。はぁ……マジで疲れたー。もうこんな任務は二度としねぇぞ」
「お疲れ様でした。ミッション完了です」
徐々にレオニードの下部ハッチが近付いてくる。その様子を暫く見てるとふと思い出した事がある。先程ネロから何か報告があった事を。
「ネロ、さっき報告がどうたら言ってたが何だ?もう大概の事じゃあ動揺もしねえけどな」
「はい。先程格納スペースにて二機のスピアセイバーのロック部分が欠けました」
「ほうほう。それで?」
「結果としましてマスターのAcrobaticな機動によりスピアセイバーが多数衝突を起こしました」
「ほうほうほうほう……マジで?」
「此方が内部カメラの映像になります。ご覧になります?」
「んー……正直見たくねえけど、見ねえ事には話は進まねえわな。見せてくれ」
「此方になります」
ネロによってモニターに映し出される動画。
其処には腕と脚が完全に折れてたスピアセイバー、頭部が完全に潰れたスピアセイバー、胸部の鋭角部分がガッツリ凹んだデルタセイバー、無重力空間だからか宙を浮かぶボコボコになったスピアセイバー二機。そして何故か無傷なZC-04サラガン。いや何でお前だけが無傷なんだ。
この散々たる光景を見た俺が出した結論。それは……。
「映像を切ってくれ。見なかった事にするわ」
「了解しました」
余りに悲惨な光景を見て思考が止まった。だから見なかった事にしたのだ。だが、もしあの機体全てを弁償となるとだ。
「自己破産システムとか残ってるかな?残ってるだろうなぁ……。またゴースト並の生活に堕ちるのは嫌や〜」
取り敢えずアレ全部戦闘による損傷にしておこう。それが良い。寧ろそうした方が俺の精神的に良い。大体さっきのだって戦闘だったし。
「恐らくですが固定部分が想定以上の負荷が掛かった結果です。そもそも大型輸送艇で行う機動では有りませんでしたので」
「知ってるよ。俺だってゆっくりと離脱出来ると思ったんだよ。畜生……バカヤロー」
最後のバカヤローの言葉に力が入らなかったのは仕方ない事だった。
リリアーナ・カルヴァータと降下部隊の収容の報告を聞いたセシリア大佐は直ぐに命令を出す。
「艦載機は直ちに帰投させよ。もうこの宙域に残り続ける必要はない」
旗艦アルビレオから撤退の発光信号が出される。それを見たエルフェンフィールド軍のAW部隊と戦闘機隊は直ぐに後退を開始。勿論敵AW部隊の追撃もあるが、味方艦隊からの援護射撃により被害は然程出なかった。
「艦載機全て収容しました」
「全艦に通達。これより全速前進し敵艦隊の合間を抜け、そのままこの宙域を抜ける。その際ありったけのミサイルを叩き込め。全艦突撃!敵艦とぶつかるな!」
セシリア大佐の決断は早かった。戦艦アルビレオを先頭にダムラカ艦隊に突撃を開始。エルフェンフィールド艦隊の突然の行動にダムラカ艦隊の反応が遅れてしまう。
「ミサイル発射!」
各艦隊から至近距離でのミサイル一斉射撃、及び副砲による実弾砲撃を開始。流石に至近距離でのミサイル迎撃は困難を極め、多数の敵艦船を沈める。
そして敵艦隊を抜けてユリシーズ周辺の軌道上に乗りながらワープ準備に入る。
慌ててダムラカ艦隊は反転するか後部砲塔で追撃をする。しかし超級戦艦イストリアに接近し過ぎていた為、イストリアと周辺の艦隊が反転出来ない事態が発生。
その隙にエルフェンフィールド艦隊はワープを開始。そのまま本拠地である惑星カルヴァータに向け進路を取る。
【追撃は……出来んだろうな】
【間違いなくワープ阻害はされています。司令如何なさいますか?】
【艦隊及び艦載機の被害状況を確認。その後この宙域を離脱する。それにだ、我々はまだ敗北していない】
【司令。では遂に一矢報いる時が】
【本国に連絡しろ。ダムラカ最後の戦いを始めるとな】
争いはまだ止まらない。
何が原因で何故こうなったのか。
最早誰にも分からない。
だが当事者達にとってそれで良いのだろう。
何故なら自分達の知ってる事が事実だと信じているのだからだ。
更新は途切れます。
理由はストックが無くなったので。次の投稿は未定ですが宜しくお願いします(^^)




