フィナーレのダンス
地下鉄を疾走する列車。そして遂に広い場所に出る。そこは多数の線路が並んでおり主要線路になっている場所。
「良くて五分で決着つけねえとな。へ、楽しくなって来やがったぜ」
そして再び姿を現わす装甲列車。
【敵を再捕捉しました】
【此処で必ず仕留めろ。チャンパーを離陸させろ】
【了解しました。チャンパーの離陸開始】
装甲列車の二両の最後尾の車両のコンテナが開く。そこには攻撃ヘリチャンパーの姿があった。
【此方A1、これより離陸し敵に対し後方から攻撃開始します】
【敵の車両破壊許可は出す。地下鉄の破損より安く済むからな。存分に楽しんでこい】
【了解です。離陸開始!】
車両から攻撃ヘリチャンパー八機が離陸し俺達の背後に付こうとする。それを迎撃しようとファング隊が応戦しようとする。だが今この瞬間のチャンスは見逃す訳にはいかない。
「場所を開けてくれてありがとよ!感謝するぜ!」
【何⁉︎しまった!敵がそっちに飛び移るぞ!】
俺はオープン通信で敵に感謝の言葉を言う。そして装甲列車の最後尾の車両に向けて一気にブースターを使い跳び乗る。
「さあ始めようぜ!フィナーレの戦闘をな!」
そして最後尾の車両に上手く跳び乗りその勢いのまま先頭車両に向けて移動する。
【プラズマキャノン砲で車両ごと吹き飛ばせ】
【了解です。プラズマキャノン砲、砲撃用意】
【照準良し】
【MW隊は衝撃に備えろ。砲撃開始!】
プラズマキャノン砲の砲口からエネルギーが解放される直前。無論三秒先の未来を視てるからタイミングば完璧だ。
「ファング1宜しく」
『喰らいなさい!』
発射する直前にプラズマキャノン砲の右の砲身にデルタセイバーのビームが直撃。そして右側の砲身が爆発。それと同時に左側のプラズマキャノン砲が放たれる。
ギリギリのラインで機体を左にズラし攻撃を回避。そしてプラズマは最後尾の車両を破壊する。
【ダメです。被弾の影響で照準がズレました。右砲身損傷は被害甚大で使用不可能です】
【構わん。右のエネルギーを左側に回せ。MW隊、敵マドックを迎撃しろ!】
MW隊が再び立ち上がり此方に向けて銃口を向ける。だが少々動きが遅かったな。
「ビビって目ん玉閉じてんじゃねえよ。だから間合いが詰められてこうなるんだよ」
目の前に居たMWに跳び蹴りをかまして車両から蹴り落とす。更にそのままの勢いで敵のど真ん中に陣取り右のMWのメインカメラに向けてビームガンを向ける。
「此処は分厚い装甲は守ってくれねえよな?」
敵が何かを言う前にトリガーを引く。至近距離からビームを受けたMWはそのまま後ろに倒れる。
「前方の装甲列車は任せるぜ。こっちのMWは俺が片付ける!」
『分かったわ。後方の攻撃ヘリはファング7、10で対応。残りは敵の砲塔に向けて攻撃!』
ファング隊が攻撃を開始したのと同時に未来を視る。背後からMWが攻撃して来るのでシールドを構えながらトマホークに切り替える。
【何なんだよ此奴は!頭狂ってんのか!】
「戦場に頭狂ってねえ奴はいねえよ!」
そのままトマホークでMWの足を叩き壊す。そしてバランスが崩れたのを確認して蹴り飛ばす。
「悪いな。この列車は一人乗りだ」
【うわあああ⁉︎】
敵の悲鳴を聞きながら残敵のMWに視線を向ける。だが連中はビビったのか一歩後退してしまう。
そして再び視える三秒先の未来。今度は中々気合が入った攻撃だ。
装甲列車の二両目の二連装キャノン砲が此方に向けて発砲。だが事前に視えてる俺にとっては最高のタイミングだ。
「お役目ご苦労さん」
二連装キャノン砲から放たれた砲弾を跳び上がり回避。だが砲弾は味方のMWを乗せた車両に直撃し破壊。そのまま爆発し周りのMWを木っ端微塵にしてしまう。
辛うじて生き残ったMWも列車そのものが無くなったので、慣性の力を一身に受けながら線路の上に叩きつけられ爆散して行くのだった。
「残り三両。此処からはAWの本領発揮だぜ」
シールドを構えつつビームガンを乱射しながら前進する。
【来るぞ!迎撃を!】
【側面からも撃たれてるんだよ!前の連中で対処しろ!】
【撃て撃て!近付かせるな!近付かせるなって言ってがあ⁉︎】
【距離を取れ!早く!】
【此処狭えんだよ!だから前の連中で倒せっつってんだよ‼︎】
「その前の連中がお前の番になってるんだけど?」
【え?あ、ああああ⁉︎】
後方ばかりに目を向けてしまったからかデルタセイバーとスピアセイバーのビームが次々とMWを破壊。
敵MW隊も必死に応戦するが、俺自身が接近戦をしており同士撃ちの危険があり中々撃てない。更にMWを盾にビームガンで後ろの奴を倒して行く。
【……後方の車両を切り離せ】
【しかしまだMW隊は健在です】
【その後プラズマキャノンとキャノン砲で吹き飛ばす。命令だ。早くしろ】
【……了解です】
装甲列車から三両目から車両が切り離される。徐々に距離が離される。そして損傷した二連プラズマキャノン砲と二連キャノン砲が狙いを付ける。
そして不審な動きに慌て始める敵MW隊。それを尻目にリミッターを解除する。
【砲撃開始】
プラズマキャノン砲と二連キャノン砲から轟音を奏でて地下に響き渡る。それと同時に高く跳び上がり砲弾を回避。敵MW隊は悲鳴を上げながら車両と共に吹き飛ばされて消えて行く。
「逃がすかあああ‼︎」
操縦レバーを握り締めペダルを踏み込み一気に間合いを詰める。
【次は当てろ!撃てえぇ‼︎】
再び二連キャノン砲が火を噴く。砲弾が此方に迫る。
だが簡単に当たる訳には行かない。空中でシールドをパージし機体を一回転させシールドを前方に蹴り出す。砲弾がシールドに当たり爆炎が辺りを包み込む。
【やったか!】
【いえ敵機健在!そんな馬鹿な!】
爆炎を突き抜けながら左手にトマホークを装備。そしてトマホークを二連キャノン砲の上に突き立てながら着地する。
「さて……フィナーレの時間だ。覚悟は良いな」
【お、応戦しろ!あのマドックを破壊しろ!】
だが間合いが詰められ砲の射角が取れない。更に横からのファング隊のビーム攻撃で装甲列車にダメージが徐々に蓄積される。
【左側の対空砲が全て沈黙。現在銃座で応戦してますが効果有りません】
【一番キャノン砲大破!二番キャノン砲も同じく使用不可能に】
【致し方あるまい。後部車両を切り離せ。MWプラズマキャノン砲で仕留めろ】
【ですがまだ乗員が多数居ます!】
【黙れ!このままでは我々が死ぬんだぞ!後部車両切り離し開始!】
最後の切り離しが行われる。そして同じ様にプラズマキャノン砲が攻撃準備に入る。だが次の瞬間青いビームがMWプラズマキャノン砲の上部にあるミサイルに直撃し大爆発を起こす。
『私の方が高性能機なんだけどなぁ……』
『お嬢様、奴の常識の無さが可笑しいのです。恐らく敵もそれに引きずられたのでしょう』
『それでもよ。トリガー5もう戻りなさい。今から戻るスペースを作るから』
クリスティーナ大尉は装甲列車を無視し路線の間にある柱をビームライフルで一気に破壊して行く。
「了解した。じゃあなお前ら。緊急停止した方がまだ生き残れると思うぜ」
そう言い残しファング隊と合流する。装甲列車の様々な所から火が噴き出し黒煙を上げている。そしてスピードが徐々に落ちて行く。だがまだ奴等は諦めていなかった。
装甲列車内部では火花が多数散り、煙が充満しつつあった。だが車長はまだ諦めていなかった。
【MWプラズマキャノン砲はまだ生きてるな】
【発射可能ですが損傷が激し過ぎます】
【構わん。MWプラズマキャノン砲発射用意。エネルギーを全て回すんだ】
【しかし……】
【良いからやるんだ‼︎】
【……了解です】
MWプラズマキャノン砲がファング隊の乗る列車に狙いを付ける。
【エネルギー充填が50%で警告アラームが鳴っています】
【そのまま充填を続けろ。一撃で良いのだ】
【しかし計器の赤いランプが点いてるんだぞ!これ以上は絶対にヤバイぞ!】
【まだだ。確実に仕留めるんだ。確実に】
MWプラズマキャノン砲のコクピットでパイロットが悲鳴を上げるが無視して充填を続行する。だが充填率が90%以上に行った時に悲劇が起きる。
MWプラズマキャノン砲の内部でエネルギーの漏洩により装甲列車内部が超高温の火の海が瞬く間に広がって行く。中にいる乗員達は僅かな悲鳴を上げながら灼熱の炎に包まれて行く。
そして装甲列車の中で誘爆が発生。更にMWプラズマキャノン砲のエネルギーも加わり一気に爆発してしまうのだった。
そんな光景を俺達は黙って見ていた。そしてクリスティーナ大尉が一言口にする。
『まだ戦いは終わってないわ。気を引き締めて行きましょう』
今だに爆発が続いてる装甲列車を尻目に前を向くのだった。




