ジェームズ・田中VS翡翠瞳の姉妹2
猛スピードで一気に距離を詰めて来るロアノティルト。
更にアラクネに搭載されている4つのビーム砲。そして、45ミリヘビーマシンガンから繰り出される圧倒的な弾幕。
重量級の機体で無いにも関わらず、随分な弾幕を展開している。
「チッ、やっぱり上手く行かねぇか。まぁ、良いさ。此処からが勝負だ!付いて来いよ!」
ビームキャノン砲の攻撃が回避される事は想定内。なら、次の手で仕留めるだけだ。
圧倒的有利な状況で攻撃を続けるロアノティルト。それに対し、後退しながら45ミリアサルトライフルとミサイルで牽制し続ける。
45ミリの弾はシールドで防がれ、ミサイルは全てアラクネによって迎撃される。
攻守共に完璧に近いロアノティルト。
「いや、違うな。コレが……翡翠瞳の姉妹の実力」
共闘した時は心強がったが、敵となれば厄介極まりない。
普通の一流パイロット程度では、満足な足止めも出来ないだろう。
だからこそ、エースパイロットが必要なのだ。
一定の距離から射撃を続けるロアノティルト。
回避機動を取りつつ多目的シールドで攻撃を防ぎ、後退を続ける。
『燃料タンクまで距離1000を切りました』
「了解!勝負だ!翡翠瞳の姉妹!」
デブリを盾にしつつ、燃料タンクの陰に移動。
そして、ギフトを使い3秒先を視る。
「俺からのプレゼントだ。受け取ってくれ」
ロアノティルトが見えない位置で、携帯型グレネードを自爆3秒にセットして投下。
ロアノティルトはギフト通りの場所に来る。
FCサラガンを捕捉したのと同時に、携帯型グレネードが視界に入った瞬間。
目の前で携帯型グレネードが炸裂。
【ッ、目眩しか。悪足掻きを!】
それでも、問答無用で攻撃を開始する。
だが、既にロアノティルトは罠に掛かっている。
俺はエヴァット姉妹に通信を繋げて言い放つ。
「誰だってそうさ。狙い易い敵は撃ちたくなるよなぁ。だが、周りはよく確認しとくんだったな」
【何?……ッ⁉︎】
【ダメ!フラン!防いで!】
デブリが若干少なく、狙い易い場所に居ながら後退を続けるFCサラガン。
射撃に徹し、一定の距離から確実に仕留めようとするロアノティルト。
そして、ロアノティルトの直ぐ側には燃料タンクがある。
俺はビームキャノン砲で燃料タンクを照準に捉え、トリガーを引く。
ビームキャノン砲から放たれた高出力ビームは燃料タンクを貫く。
更に高出力ビームによって燃料に引火。
ロアノティルトを巻き込みながら大爆発を起こす。
【クッ⁉︎フーチェ!大丈夫?】
【私は平気。でも、直ぐにシュウが来る!】
左側のアラクネが全滅。更に一部スラスターが使えなくなったロアノティルト。
だが、まだ充分戦える火力と機動力はある。
「ご名答!それじゃあ、さよならの時間だよ!」
それでも、これ以上無い好機。一気に片を付ける。
再び射撃の応酬を交わしながらの機動戦。
ロアノティルトの火力は健在だ。だが、最初より火力は半分程に落ちている。
「その程度の弾幕で止められると思うな!」
『目標、ロックオン完了』
「ミサイル全弾発射!」
12連装ミサイルポッドから最後のミサイルを発射。そのまま12連装ミサイルポッドをパージして機体を軽くする。
次々とミサイルを迎撃するロアノティルト。しかし、迎撃し切れずに回避機動を取る。
その回避機動を待っていた。
ギフトを使い回避機動の先を視る。
未来視によってロアノティルトの先の動きを予測。
ビームキャノン砲を展開し、照準を合わせる。
「そこだぁ‼︎」
躊躇無くトリガーを引く。
ビームキャノン砲から放たれた高出力ビームは吸い寄せられる様にロアノティルトに向かう。
【クッ⁉︎読まれてた!】
【大丈夫。シールドで防いだよ】
多目的シールドを使い高出力ビームを防ぐ。だが、同時に多目的シールドが破壊され視界が爆煙で塞がれる。
咄嗟の判断で一気に離脱を図ろうとするロアノティルト。
だが、逃げられない。
「逃すかああああああ‼︎‼︎‼︎」
リミッターを解除し、機動力を無理矢理上げる。
そして、一気に間合いを詰める。
「ビームキャノン砲、残り1発が限界です」
「充分だ。発射後にパージしろ」
「了解しました」
2つのビーム砲と45ミリヘビーマシンガンからの弾幕を回避しつつ、再びビームキャノン砲で攻撃。
距離も充分詰まっている状況。ビームキャノン砲から放たれた高出力ビームは、ロアノティルトの右脚部を吹き飛ばす。
【やはりな。貴様は……強い】
【そうだね。シュウは強い】
ロアノティルトが後退するのをやめる。そして、45ミリヘビーマシンガンを放棄し、プラズマサーベルを展開する。
「当たり前だろ?伊達に自他共に認めるエースパイロット様なんだからな」
『しかし、今は普通の一般正規市民では?』
「……エイティ、こう言う時は静かにしような?」
エイティからの要らないツッコミを貰いつつ、こちらも45ミリアサルトライフルを放棄。プラズマサーベルを展開して睨み合う。
【だが、最後に勝つのは私達だ!】
「寝言を言うのは自由だぜ」
互いに接近し、プラズマサーベルが何度も交差する。
鍔迫り合いが起きれば、プラズマサーベル同士のエネルギーが反発して稲妻が周辺に走る。
「中々手強いじゃないか。だがなぁ!」
確かに火力、機動力共にFCサラガンを圧倒している。
それでも、あの機体には勝てない。
こちらの攻撃を簡単に防ぐだけで無く、100倍返しで反撃して来るチートを具現化した様な機体。
GXT-001デルタセイバー。
あの機体に比べたら、格上程度の性能差なら何とでもなる。
だからだろう。不意の攻撃に対しても、今まで以上に冷静に対処出来てしまう。
【貰ったよ!】
ロアノティルトに残っているアラクネから、ビームと60ミリショットガンの銃口が向けられる。
だが、それは最初から予測済みだ。
「甘いんだよ!」
ビームと60ミリの弾を多目的シールドで防ぐ。
互いの視界が多目的シールドで防がれる。
多目的シールドを前面に構えながら、ロアノティルトに体当たりして打ち付ける。
その瞬間に多目的シールドをパージし、ロアノティルトの左側面に移動。
プラズマサーベルを横に振るって多目的シールドを退かすロアノティルト。
【ッ!消えた。何処に】
【左側に居るよ!】
【しまッ】
咄嗟の判断でフランチェスカ中尉はアラクネを使い攻撃する。
しかし、ビームと60ミリショットガンがFCサラガンに当たっても止められる状況では無かった。
「それじゃあ、逝こうか」
【舐めるなぁ‼︎】
ロアノティルトは最後の悪足掻きにプラズマサーベルを振り落とす。
FCサラガンの右腕とプラズマサーベルを切り飛ばす。
だが、残った左手に持つプラズマサーベルは真っ直ぐに突き立てられ、ロアノティルトのコクピットを貫いたのだった。




