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陸上の覇者 ヴァンガード

(戦闘が起こっている。まさか助けに?)


 第三皇女リリアーナ・カルヴァータは小綺麗で最低限の物しかない部屋に閉じ込められていた。そんな部屋の中に居ても聞こえる音は銃声と爆発音。そして人々の怒号。

 しかし今助けが来るのは非常に危険だと知っている。何故このタイミングで助けが来るのか。アレを動ける様にしてしまった。このままでは()()沢山の人達が死んでしまう。


「私は手助けがしたかった。唯、それだけ……」


 彼女の呟きは誰にも聞かれる事は無く消えて行くのだった。




 資源加工施設まで近付いて行くと敵AW部隊とMW部隊を筆頭とした防衛兵器による歓迎が俺達を待っていた。


【お出迎えの時間だ。派手に歓迎してやれ!】

【戦車隊攻撃開始!撃って撃って撃ちまくれ!】

【機体の差が全てじゃねえ。要は腕前でカバーすんだよ】

【エルフ共にこれ以上好きにさせるな!全て撃破しろ!】


 戦車の砲撃と多数のロケット弾が俺達を狙う。すぐさま回避機動を取り距離を詰めて行く。


『ファング1より各機。敵の迎撃が激しくなってる。私が上空から支援してる隙に攻撃せよ』

『『『『『了解!』』』』』

「ヘクシュン!りょ、了解。誰か噂でもしてるんかな?」


 クリスティーナ大尉のデルタセイバーは上空に舞い上がり敵AW部隊とMW部隊にビームの雨を降らせる。そして対空砲や迎撃ミサイルが撃ち上げられ、ヘイトがデルタセイバーに向けられたのと同時にファング隊、マッド隊は一気に加速しながら敵陣に向け突撃する。


「今回の俺何してんだろう。やっぱり此処に来た意味無い気がするんすけど」


 チャンパー攻撃ヘリがこちらに向かって来たので迎撃しようとしたが上空からのビームに貫かれ爆散。

 他にも戦闘機が離陸しようとしてるみたいだが、空に上がる前にスピアセイバーのビームによって墜ちて行く。


「まさに出落ちだな。敵の立場じゃなくて本気で良かったと思うよ」


 それでも必死に攻撃を仕掛ける敵防衛部隊。だがAWの性能差がデカ過ぎて話にならない。必死に弾幕を張るサラガンや回避機動を試みるマドック。だが全てを薙ぎ払うエルフ共。


【何で!何で弾が当たらないんだよおおお‼︎】

【やっぱり最初から間違ってた。エルフに反抗するのが間違いだったんだ】

【このままでは追い詰められる⁉︎誰か助けて】

【ば、爆発する!うわあああ⁉︎】

【もうこれ以上戦線の維持出来ません!後退の許可を!】

【こちら司令部、残り360秒維持せよ。繰り返す360秒維持せよ】

【出来たらとっくにやってるんだよ‼︎】


 しかし抵抗虚しく次々とビームに貫かれ爆散するAW部隊、MW部隊。戦車の砲撃も高い機動力を持つスピアセイバーに当たる気配すらない。

 防衛部隊に絶望感が生まれるが司令部にはまだ余裕の空気が漂っていた。


「司令、出撃準備完了しました」

「そうか。なら行こうか。これより司令部は【陸上戦艦ヴァンガード】に移設する。諸君急ぐぞ」

「「「「「了解」」」」」


 遂にダムラカの切り札が動き出す。





【畜生!やられっ放しで引き下がれっかよ!あのマドックだけでも道連れにしてやらぁ‼︎】

【俺達も続け!敵の一人でも倒さなきゃ面子が保たねぇんだよ!】

【傭兵が腰巾着みたいにくっつきやがって。ぶっ殺してやる!】


 勝てない相手をするより勝てる相手をする。当たり前の事だ。敵も味方が次々と撃破して行くのをレーダーや目視で見せ付けられたら、せめて一太刀くらい浴びせてやりたいと思うのは当然だ。

 尤も俺が勝てる相手だと勘違いしたのが運の尽きだけどな。


「二時方向、敵AW六機接近中」

「向こうから来てくれると助かるんだよな。大体接近する前に大尉殿が倒しちゃうし」


 そのクリスティーナ大尉は今も上空から味方の援護をしている。正直デルタセイバーって反則だと思うんだ。

 リアル系にスーパー系を積み込んだ機体だもん。


「敵機発砲確認」

「分かってるから大丈夫だ。ほぉら、もっと近くにおいで。良い物やるからよ」


 45ミリアサルトライフルと45ミリサブマシンガンを乱射しながら突っ込んでくる敵機に対し、回避とシールド防御しながら距離詰める。


「目標35ミリガトリングガン射程内」

「先ずはシールド無しの君達からだ。上手く踊ってくれよ?」


 そう呟いた瞬間シールド無しの四機のAWが少しだけ挙動が怪しくなった。多分虫の知らせが有ったのだろう。


「残念ながら少し手遅れだったみたいだけどな。来世までに鍛えておけよ」


 トリガーを引く。すると35ミリガトリングガンの砲身が回転する。


「Let's Party Time」


 35ミリ弾の嵐がシールド無しの敵機に襲い掛かる。慌てて回避するも先読みして躊躇無く撃ち込む。


【何だこいつは!雑魚じゃ無いのかよ⁉︎】

【狙われてる⁉︎誰か助け】

【突っ込め!避けられるなら確実に当たる距離から撃てば勝てる!数は此方が上だ!】

【おら!こっち狙え!狙えって言ってるんだ!】


 シールド持ちが前に出るも無視して他の敵機を撃つ。すると敵機は35ミリ弾に当たり面白い踊りをしながら倒れるか爆散する。


「さて後はお前らだけだぜ。マドック相手にこの様だと向こうに逝った仲間達に申し訳ないぜ?」

【この化けもんがあああ‼︎】

【死に晒せええええ‼︎】


 45ミリアサルトライフルを放棄してブレードを構え突っ込んで来る。


「面白え。付き合ってやるぜ」

「非効率的です」


 此方も35ミリガトリングガンを手放しアックスを装備し突っ込む。ついでにネロも突っ込むが無視する。お互いの距離が縮まり前にいた敵サラガンはブレードを振るう。


「先ずは後ろの君からだ」

【何⁉︎】


 いつの間にか45ミリサブマシンガンを持っていたサラガンの右腕を下から掬い上げる様に振り上げる。千切れる右腕と空を舞う45ミリサブマシンガン。

 そして躊躇無くコクピットに向けてアックスを振りかざす。


【や、やめ】


 鈍い金属音が響きサラガンは動きを止める。その一連の流れを見てた最後のサラガンのパイロットは恐怖する。


(コ、コイツは……手を出したらダメな奴だ)


 こちらを振り向くマドックの視線を受け一歩退がる。性能差なんて殆ど無いAW相手なのに、まだエルフが扱うスピアセイバーやデルタセイバーを相手にした方がマシだと考えてしまう。

 そしてマドックのバイザー部分が光った瞬間、恥も捨てて悲鳴を上げて逃げ出す。その時の彼には死んだ仲間の仇も、敵前逃亡も無く、唯生き残りたいの気持ちが一杯だった。

 そんな敵前逃亡したサラガンを見て俺は興醒めしてしまう。


「敵ながら中々良い連携だったけどな。ま、いいか」


 この時のキサラギ軍曹の気紛れにより敵パイロットは生き残る事が出来た。無論、敵前逃亡したのは重罪だがそれを咎める者は誰も居なかったのだから。

 35ミリガトリングガンを装備し直しファング隊、マッド隊と合流する。彼等も殆どの防衛部隊と設置砲台を破壊していた。無論敵の防衛戦力は中々の規模だったのは間違いない。

 そして、何よりデルタセイバーの性能が規格外だっただけの事。唯、それだけの話さ。


『ファング1より状況報告』

『ファング隊全機問題無し』

『マッド隊同じく問題無し』

『こちら陸戦隊、間も無くそちらと合流する』

「トリガー5異常無し」

『そう。皆良くやったわ。後は陸戦隊の到着を待つだけ。周囲警戒を厳にせよ』


 周辺警戒の為離れた場所に移動する。すると一機此方に接近して来る。レーダーには【GXT-001】と表示されてる。つまりクリスティーナ大尉のデルタセイバーが近寄って来て横に着地する。


『お疲れ様。よく善戦したわね』

「お疲れ様です。他の面子に比べたらスコアは一番下だと思いますがね」

『そんな事無いわよ。キサラギ軍曹も多数相手に圧勝してたじゃない。本来ならもう一機スコアに追加されてたでしょう?』

「偶々です。銃器を手放してたから追撃出来なかっただけですよ」

『なら腰に付いてるビームガンは何かしら?』

「自分実弾派なんで」


 適当に話をしながら周囲警戒を続ける。そして間も無く陸戦隊が到着するだろういう時だった。


「振動を検知」

「振動?地震か何かか?」

「否定。資源加工施設付近にて反応あり。警告、高熱源を地下より確認」

「何?トリガー5よりファング1、地下から何か来るぞ。警戒しろ」


 そして三秒先に視えたのは資源加工施設の奥の地面がゆっくりと動き出した未来だ。

 地面に大きな穴が出来る。そこから何かが現れる。レーダーにも高熱源反応はある。そして地下からゆっくりとソレは姿を見せた。

 ソレは巨大な艦だった。巨大な二股の船体上部には三連装砲塔を前部に左右二基と後部に左右一基。三連装砲塔より一回り小さい二連装砲塔が左右に二基。更に多数のビーム砲、速射砲、対空砲、ミサイル発射台、VLSハッチ。

 正に陸上の覇者と呼べる存在。そんな場違いな巨大陸上戦艦が目の前に現れたのだ。


「該当データ無し。類似データ確認」

「類似データを出せ」

「Type-From社が類似データの改修案を請け負った物になります」


 そこに出されたのは【前線突破移動双胴戦艦ヴァンガード級】だった。確かに多少の違いはあるが誤差の範疇だ。

 性能を調べると元々履帯のみの移動方式だったが、改修する事でホバー移動をメインとし履帯はホバーが壊れた時の保険にする事だった。どうやら履帯での移動速度に難があった為改修したらしい。

 但し、陸上戦艦故に重量は重くホバー移動による改修は難航したらしい。特に出力が足りなかったのだ。

 だが今のヴァンガードはその辺りの問題を解決した可能性は高い。


「君達は戦艦の上に百貨店を開いたのかな?」


 かの有名な指導者に似た皮肉を口にするが、戦艦の上に百貨店を開くのは間違ってないなと心の中で訂正するのだった。

浪漫は正義だ。間違いない(確信)

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