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祝!就職決定!

 10時丁度に12番格納ゲート前にギリギリ到着する事が出来た。

 俺は少し乱れた安物のスーツと髪型を整えてから、目の前のデカブツに視線を向ける。


「アレが超級双胴戦艦か。随分と珍しい艦種を使ってんな」


 俺も宇宙での戦闘には何回も参戦している。その中には超級戦艦を相手にする時もあった。

 しかし、超級双胴戦艦は見た事が無い。そもそも、超級戦艦でも充分強い。なら、二つに合体させれば更に強くなる……とはならないだろう。


「まぁ、企業の運営方針で色々変わるからな。一概に双胴艦が悪い訳じゃない」


 どんな兵器も運用次第では役にも立つし、ガラクタにもなるからな。


「そう言えば、何処の企業が面接してくれるんだっけ?」


 内容ばかりに目が行ってたから、まだ知らないんだよな。

 調べようかなと端末を開こうとした時だった。

 高級そうなスーツにキラキラとした装飾を沢山身に付けた一人の男性が、笑顔とハイテンションと共にやって来た。


「ハロー!ジェームズ・田中さんですねー!私はアイドルグループ【ナインズ】の敏腕プロデューサーのメル・ゼ・ワトソンと申します」


 アイドルグループ……ナインズ?聞いた事が有る様な、無い様な。

 しかし、考えてる暇は無い。俺はワトソンさんから差し出された名刺を両手で受け取る。


「あぁ、ご丁寧にありがとうございます」

「それでは、早速面談の方に入らせて頂きますね!」

「はい、宜しくお願いします」


 どうやら、そのまま立った状態でやるらしい。

 まぁ、どんな場所であれ面接をやってくれるだけでも、今はありがたい。


「田中さんは何故、我が社の方に応募したのですか?動機があれば知りたいですねぇ」

「場所を選べる程、贅沢な立場ではありませんので。職歴と経歴は見ましたよね?それが答えになります」

「Ohooo〜。つまり、仕方無く来たと?」


 少し意地悪な質問するワトソン。

 確かに選択肢は無かった。だが、それでも俺は一向に構わないさ。


 アーマード・ウォーカーさえ有れば、大抵の場所でもやって行ける自信はあるからな。


「仕事に好き嫌いは必要無いでしょう?金を貰う以上、その分働くのは当然ですよ。それに、仕方無くではありません」


 俺は営業スマイルをしながら答える。


「自分は何処でも働けると自負しています。ですので、ワトソンさんとの面接に来た訳です」

「成る程成る程。分かりました。少し意地悪な質問でしたかね?」

「構いませんよ。それが、ワトソンさんのお仕事なのでしょうから」


 俺の答えに満足したのか、ワトソンさんは何度も頷く。


「んー、随分と落ち着いていますねぇ。中々の好感を抱きましたYO!」


 ワトソンさんは指パッチンをする。

 すると、何処からともなく現れたスタッフ達が椅子と机を用意する。

 そして椅子に座る様に促されたので、一礼してから座る。


「では、もう一つ質問します。もし、護衛対象が何者かに襲われました。田中さんはどうします?」


 護衛か。つまり、俺がやる仕事は艦隊護衛になるのか?

 多分、きっとそうだろう。


「どう言う状況で襲われたのかは不明ですが。襲撃者を殺害して、護衛対象の安全を確保します。その後に護衛対象を安全地帯まで移動出来るまで警戒します」

「殺害ですか。しかし、貴重な情報を持っている可能性もありますよ?」


 可能性の話を出したらキリが無いぜ。

 こう言う時は区切りを付けないと、後々代償を払う事になりかねん。


「可能性は低いですよ。そもそも、襲撃者は捕まる事も想定されてます。ですので、最低限の情報しか知らない可能性の方が高いです」


 それに、戦場のド真ん中で犯人確保なんてやってる暇は無いね。

 まぁ、暇が有れば確保しても良いけどな。


「小物は徹底的に排除して、可能なら大物を確保する。そうした方が次の襲撃も対処し易くなると考えます」

「成る程成る程」

「まぁ、護衛と言う立場上は後手に回り続けますけどね」


 結局、後手に回り続けるからな。

 それに、起死回生の一手を考えるのは俺の立場じゃない。もっと上の立場の連中が考える事さ。


「とは言え、第一に守るのは護衛対象なのは変わりませんので」

「分かりました。では、面接はこれで終わりましょう。そして、結果の方ですが……」


 ワトソンさんは俺の方をジッと見る。真顔から笑顔に変わり悲しそうな表情になる。


(いや、今の時代伝わるか?このネタ)


「採用です。これからアイドルグループのナインズを警備して下さいね?勿論、親衛隊が常駐してるので、基本的には周辺警戒になりますが」


 そして採用が決まった。まさか、こうも簡単に決まるとは驚きだ。


「驚くのも無理は有りません。何故なら、明日には出航しますのでね!」

「明日⁉︎明日の何時に出航するんですか!」

「明日の午前9時には出航します。ですので、今日中に荷造りを終わらせて下さいね!」


 荷造りは問題無い。要らない物は置いて処分して貰う様に手配すれば良いからな。


「取り敢えず、出入り許可証を渡しておきます。荷造りや別れの挨拶が終わり次第、18番格納ゲートに向かって下さい。【航空戦艦エイグラムス】が田中さんが乗艦する艦艇になります」

「了解しました。それでは、自分は準備がありますので。失礼します」


 一応、採用された訳なので敬礼してから出る事にする。

 そして、インカムを装着してエイティに指示を出す。


「エイティ、不動産の奴に今日中に出ると伝えといてくれ。俺は荷造りを済ましておくから」

『分かりました。連絡しておきます』

「しかし、無事に決まって良かったぜ。仕事の内容は、完全に把握して無いけど」

『主な仕事はAWを使用した警備との事です。また、人手が足りない時は歩兵として警備に参加すると』

「構わないさ。歩兵経験もあるしな」


 そして再びタクシーを捕まえて、ゆっくり帰宅する。

 自宅に到着して鍵を取り出そうとしたが、無かった。

 鍵を持って行くのを忘れたかな?と思いながらドアを開けようとしたが、鍵が掛かっていて開かない。


「アレ?可笑しいな。鍵落とした?参ったな。最悪、鍵を弁償する事になるぞ。仕方ない。ヘイ、エイティ。鍵を開けてくれ」

『分かりました。今開けました』

「サンキューエイティ」


 電子ロックを開けて貰い、部屋の中に入る。

 取り敢えず持って行く必要な物を適当に集める。


「快眠マイナスイオン発生枕だろ。着替えも持って……終わりか」


 布団とかは支給されるだろうからな。

 それから周りを見渡し、持って行く物は無い事を確認。


「……ん?アレ?部屋の鍵がある」


 外で落としたと思っていた鍵が、机の上に置いてあった。

 弁償する必要が無いだけ良かったな。


「まぁ、何でも良いか。じゃあ、行くぞエイティ。いざ、新天地へ」

『何も起きない事を願います』

「大丈夫だっての。そう簡単に波乱が起きてたまるかよ!ハハハ!」


 笑う門には福来ると言うだろ?なら、今は笑ってた方が良いのさ。

 そして、航空戦艦エイグラムスに向けて移動する。道中に俺が入社する場所が、どんな仕事をするのか調べておく。


「さて、エイティ。取り敢えず今から入社する企業の詳細を纏めておいてくれ。俺はその間に募集してた内容の再確認しておくから」

『分かりました。少々お待ち下さい』


 今度は公共交通を利用して行く事にした。

 時間には余裕が出来たので問題は無い。


 俺は端末を開いて企業の募集項目を見ながら、仕事内容を覚えるのだった。






 誰も居なくなった部屋。その部屋の中心で佇む白い人影。


 ………………。


 呪い殺す勢いで睨んでいたが、全く効果は無かった。

 それに、あの男には守護霊が多数いた。


 ………………。


 こちらが手を出さなければ、向こうも何もして来なかった。

 もし手を出していたらどうなってただろうか?


 ………………。


 同時に少しだけ羨ましいと感じてしまった。

 アレだけの守護霊が憑いていたのだ。それだけ生前の者達から信頼、信用されていたのだろう。


 あの性格の男を信頼するとは随分と酔狂な物好き共だ。


 既に意識体としては無いので、残留思念が守護霊となっている。

 それでも、下手に手を出す事が出来ないくらい強力だったが。


 ………………。




 こうして、ジェームズ・田中は人知れず無事に過ごす事が出来た。

 尤も、本人がこの話を聞けば、幽霊よりも補給が途切れ、増援の見込みが無い孤立した戦線の方が怖いというだろうが。


 誰も居なくなった部屋。


 しかし、次の入居者(獲物)を待ち続けるナニカ。




 次は、貴方の元に行くかも知れませんよ。

夏と言えばホラー。

ホラーと言えばオウマガトキFILMとゾゾゾだと思うんだ。

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― 新着の感想 ―
[一言] 守護霊って事は全員故人のはずだから、おそらく昔の小隊のメンバーなんだろうな。
[気になる点] アイドルとかめっちゃ目立つけど大丈夫なんかな [一言] やっぱ守護霊になってくれてるのね
[良い点] そりゃマザーとか憑いてるよね [一言] ライブ(内乱)ツアーかな?
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