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デルタセイバーVSルグレ2

 強い。私は、純粋にそう思ってしまった。

 デルタセイバーを受領してから殆ど無敗だった。例外だったのは戦略級AWウシュムガルを相手にした時くらいだろう。

 でもあれだって、辛勝ではあったが勝ちには違い無かった。


 では、今の状況は?


 咄嗟に庇う様に左肩のシールドを前に出した。

 けど、キサラギ少尉の搭乗するAWからビームサーベルを突き立てられている。


 ある意味、初めて明確なダメージを受けたのかも知れない。


 殆ど大きさの変わらないAWに追い詰められ始めている。


 キサラギ少尉はデルタセイバーの弱点を徹底的に突いて来る。


【このまま終わらせて貰う‼︎死ねぇ‼︎デルタセイバー‼︎】


 ビームサーベルを引き抜き、再び突き刺して来る。


 このままでは負けてしまう。


 デルタセイバーは私の想いに応えてくれている。


 なのに、私がデルタセイバーの想いに応えていない。


(ダメ。そんな終わり方は。絶対に)


 諦めない。


 私はキサラギ少尉に恋心を抱いてる。


 それでも、譲れない物だってある。


 デルタセイバーは破壊させない。


 大切な……戦友を失う訳には行かない!


 デルタセイバーから更なるエネルギーが生まれる。

 そして、クリスティーナ・ブラッドフィールドを巻き込み一つになる。


【ッ⁉︎な、何だ!この光はッ⁉︎うおおワアアアアア⁉︎⁉︎】


 凄まじいエネルギーによってビームサーベルの維持が一時的に出来なくなり、拡散してしまう。


 大量に発生したエネルギーによって押しのけられるルグレ。


 そして、莫大なエネルギーに包まれたデルタセイバー。


【愛されてるなぁ、デルタセイバー。だがなぁ……世の中、そんなに甘くは無いんだよ】


 強大な存在となったデルタセイバーを親の仇の様に睨むキサラギ少尉。


【誰も彼もが貴様を愛すると思うなよ。デルタセイバー】


 大型レールガンをデルタセイバーに向けながら呟くのだった。




(クソッタレが。まだ、あんなエネルギーを出せたのか)


 だが、よくよく考えてみれば当然の事だ。

 旧ダムラカ戦では超級戦艦イストリアを正面から一撃で破壊したんだ。

 普通のAWじゃない事は知っていたが。まさか、此処までの性能を出すとはな。


「だが、その莫大なエネルギーにいつまで耐えれるかな?」


 デルタセイバーが規格外な存在であろうとも、限界はある。


 なら、その限界まで耐えれれば良い。


 お前達が人馬一体を体現するのなら。


 俺達は一心同体を実現するのみ。


 これだけでも条件は五分になる。後は……どちらが強いか。それだけだ。


「レイナ。ジェネレーター、各スラスター、ブースターのリミッター解除」

「……承認出来ません。パイロットに多大な負荷を与える事になります」

「デルタセイバーとクリスティーナが本気出したんだぜ?なら、俺も全身全霊でやるのが筋ってもんよ」


 俺はルグレをゆっくりとデルタセイバーに向けて近寄らせる。

 そして、一定の距離で止まり睨み続ける。


【キサラギ少尉、降伏しなさい。もう、手加減は出来ない】


 最後の警告だろう。


 今ならまだ引き返せる。


 まだ、戻る事が出来る。


「……フッ、クソ喰らえだ」


 俺は中指を立てながら最後の切符を投げ捨てた。


 そして大型レールガンを構えながら宣言する。


「改めて名乗らせて貰うよ。お前が負けた存在をしっかりと刻み込ませる為にな」

【……そうね。貴方が敗北を認める為には、名前は名乗った方が良いわね】


 互いに銃口を向け合いながら名乗る。


【エルフェンフィールド軍所属、クリスティーナ・ブラッドフィールド中佐。貴方を……倒すわ】

「外人部隊第605歩兵小隊、シュウ上等兵。この宇宙で最強の存在を破壊させて貰う」


 俺の名乗りに少しだけ眉を顰めるクリスティーナ中佐。


 だが、それも一瞬。同時に接近する為にブースターを全開にして突っ込んで行く。


 大型レールガンとビームライフルからほぼ同時に放たれる。

 こちらは紙一重で回避するが、大型レールガンの弾頭はエネルギーシールドに阻まれながら弾道がズレて明後日の方向に飛んで行く。


「チッ、厄介な」


 更にショットカノンを撃ち込みバランスを崩させようと試みる。

 しかし、散弾は容易に弾かれただけで無く左手にビームサーベルを構えたデルタセイバーが斬り掛かって来る。


(今のデルタセイバーと接近戦は不利だな)


 デルタセイバーが振るうビームサーベルを回避しながら後方へ回り込む。

 俺は近距離で付かず離れずで戦う事を選んだ。


「当てれるものなら当ててみな!」

【当たらない。何て機動性なの】


 ビームライフルを撃ちながら同じ機動戦に追従するデルタセイバー。


「こっちは命懸けでやってるってのに。テメェは簡単に追い越して来やがる」


 振るうビームサーベルをギリギリで回避しながら大型レールガンと試作プラズママシンガンで反撃。

 全てエネルギーシールドに阻まれてしまう。しかし、確実に消耗してる筈。


「ッ⁉︎クソがッ!やってくれたな!」


 回避した先を読まれていたのだろう。

 試作プラズママシンガンを構えていたが、振り向き様に横薙ぎに振るわれたビームサーベルが一気に伸びて斬り裂かれてしまう。


 近距離でもデルタセイバーの間合いに入ってしまっていたのだ。


「選択をミスったか?だが、全部避け続ければ問題ねぇ‼︎」


 しかし、徐々に追い詰められ始める。

 ビームサーベルとビームライフルを使い確実に回避先を潰して来る。

 無論、こちらもビームサーベルとアラクネを使用してデルタセイバーの攻撃を捌く。だが、出力の圧倒的な違いにより耐えれるのは一時的のみ。


【慣れて来たわ。もう、逃さない】

「ッ!来るか!デルタセイバー!」


 大型レールガンの攻撃を回避しながら一気に距離を縮めるデルタセイバー。


 そして接近戦に突入して行く。


 両手にビームサーベルを展開して斬り掛かって来るデルタセイバー。

 なら、こっちは左手のビームサーベルと三本のアラクネで対処するしか無い。


「負けて堪まるかよぉ‼︎勝負だ‼︎」


 互いのビームサーベルが激しく鍔迫り合いを行い稲妻が発生。

 更に振るわれるビームサーベルを三本のアラクネを使い捌いて行く。


「近接用刀の耐久が50%を切りました」

「良い加減に死に晒せよ!デルタセイバー!」


 デルタセイバーに蹴りを打ち込みながら、距離を取り大型レールガンを構える。


 しかし、デルタセイバーはビームサーベルをこちらに向けながら出力を上げる。


 一気に伸びるビームサーベル。


 そして大型レールガンを貫いて破壊されてしまう。




 その瞬間、大切なモノを一つ失った気がした。




 レイナが最後に使っていた武装。




 対デルタセイバーなんて言ってたけど偶々使えただけ。




 本当は……最後まで一緒に居たかっただけなんだ。




 目の前が真っ赤になる感覚。




 俺は操縦レバーを前に突き出し、ペダルを踏み込みスロットルを全開にしてデルタセイバーに突っ込む。


「ッ‼︎殺す‼︎」

【さっきから殺す殺すって!ワンパターンになってるんじゃない?】

「黙れぇ‼︎」


 破壊された大型レールガンを手放し、ビームサーベルを掴み構える。

 もう接近戦がとか、近距離でとか、どうでも良い。


 このまま押し切って潰す。


 互いのビームサーベルが再び打つかり合う。


 しかし、出力差はデカ過ぎた。


 ルグレのビームサーベルでは、デルタセイバーのビームサーベルに対して一時的にしか耐える事が出来ない。


 デルタセイバーに対抗する為に出力の高いプラズマジェネレーターを使っているのに。


(プラズマサーベルだったら耐える事も出来ずに死んでたな)


 アラクネも使い近接用刀を振るう。しかし、デルタセイバーのエネルギーシールドに阻まれてしまう。


 デルタセイバーのエネルギーシールドに対処出来るのは、無理矢理出力を上げたビームサーベルのみ。


 だが、長くは保たない。


「クッ⁉︎コノヤロー!」


 デルタセイバーが隙を見て近付き、膝蹴りをして来た。

 モニター一杯にデルタセイバーの顔が映し出される。


(やっぱり……カッコいいな。色は俺の好みじゃねえけど)


 デルタセイバーは右手に持つビームサーベルを逆手に持ち突き刺して来る。

 咄嗟に左手に持つビームサーベルとアラクネ三本を交差させて耐える。しかし、瞬く間に近接用刀の耐久力が削れて行く。


(タケル……俺は、まだ諦めない。だから、後少しだけ)


 俺は右手に持つビームサーベルを捩じ込む様にデルタセイバーの左肩に再び突き刺す。

 それに気付いたデルタセイバーも咄嗟に左手に持つビームサーベルを突き上げる。


 先読みを使い僅かに右腕を左へズラす。


 ルグレの右腕の装甲だけを融解するデルタセイバーのビームサーベル。


「いっけえええええええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」

【ッ⁉︎しまった⁉︎】


 そのままルグレを前進させてデルタセイバーの左肩にビームサーベルを突き刺す。


 機体を捻り上げながら、デルタセイバーの左肩から腕を斬り裂いて行く。


 同時に三本の近接用刀は耐久力を失い破損。


 そのままの勢いでルグレの左肩を貫き斬り裂かれてしまう。


 俺達を象徴するエンブレムが半分に斬り裂かれる。


 互いに一瞬だけ距離を取る。


 だが、それも直ぐに終わり再び機動戦に移行する。


「ハッ!随分とボロボロになったな!デルタセイバー!だが、そっちの方がお似合いだぜ!」


 軌道をランダムに変更しながら、再びデルタセイバーに斬り掛かる。


【……私も一つ言っても良いかしら】


 互いのビームサーベルが打つかり合う。


「言える余裕があるならなぁ!どうぞ、お好きにぃ!」


 脚部も使いデルタセイバーに蹴りを入れるが、大したダメージは入らない。


【その機体の頭部……似合って無いのよおおおおお‼︎‼︎‼︎】

「ッ⁉︎」


 しかも、その蹴りに耐えながらビームサーベルを突き出して来るデルタセイバー。


 無論、ギフトを使い避ける事は出来た。


 だが、俺のギフトは完璧では無い。


 相手が咄嗟の判断で選択を変えてしまった場合、俺自身にダメージが入る。


 そのダメージがたった今、俺の頭に入って来た。


「何だとぉ⁉︎」


 突き出されたビームサーベルはルグレの胴体では無く、頭部に向けられた。


 そして咄嗟に右側に避けたが頭部左側にビームサーベルが突き刺さる。

 俺は離れる様にデルタセイバーを蹴り飛ばす。

 モニターの半分が死んだが、サブモニターを使えば補正は出来る。


 だが、問題はそこじゃない。


 また、レイナを傷付けられた。


 レイナが使っていたベスウーナムの頭部。


 よりにもよって……あの女、無事だった左側をビームサーベルで突き刺しやがった。


【そっちの方が貴方らしいわ。さっきより、断然似合ってるわよ】

「…………殺す」


 残るブラッドアークのメインカメラがデルタセイバーを強く睨む。


 コンソールを弄りビームサーベルの出力を無理矢理上げる。


 しかし、ルグレの限界が近づいていた。


 まだ残っているショットカノンを撃ち尽くしながらデルタセイバー向けて突っ込む。

 しかし、エネルギーシールドに全弾阻まれてしまう。


「もう、要らないな。ショットカノンをパージ」

「了解。パージします」


 ショットカノンをパージして少しでも軽量化に努めて機動力を上げる。


 それでもデルタセイバーは簡単に追い付いて来る。


「警告。これ以上のリミッター解除継続は推奨できません。ジェネレーターの維持が困難になります」

「なら、使えるモノは全部使って維持させろ!その為なら生命維持装置もカットして構わねぇ!」

「その場合、搭乗者に多大な負荷が掛かります。これ以上の負荷は……貴方が死んでしまう」

「良いからやるんだ‼︎後……後、少しなんだ。デルタセイバーを破壊すればッ」


 そして目の前でビームサーベルを構えるデルタセイバーに突っ込んで行く。


 タイムリミットが近付いている。


 ルグレにもダメージが蓄積されている。


 リンク・ディバイス・システムの影響もあるのだろう。


 肉体的ダメージも普段以上に受けている。


「……諦めて、堪まるかよ」


 俺は本物には成れない。


 道化になって足掻く事しか出来ない。


 だが、そんな道化に希望を抱いた恋人、親友、戦友達が居たんだ。


「どう頑張った所で本物には成れやしない。だが……本物を超える事は出来る‼︎」


 だから足掻くんだ。


 光輝く美しい道を歩むデルタセイバー。


 そのデルタセイバーより上に行けば良い。


 茨の道であろうとも、道がある事に変わりは無い。


 乗り越える事は不可能では無いんだからな。

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― 新着の感想 ―
[一言] 勝て、勝ってくれえええええ
[一言] キサラギ少尉は元カノと一体となって戦っているんだよとクリスティーナに囁いてあげたいw
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