E.G.F艦隊VS独立傭兵2
「エルフェンフィールド艦隊より通信が入っています」
「無視しろ。それより、デルタセイバーの居場所を特定しないとな。レイナ、デルタセイバーを探せ」
「了解しました」
俺はエルフェンフィールド艦隊の周辺を飛行しながらデルタセイバーを捜索する。
しかし、ジャミングが酷いのかレーダーの映りは悪い。
「チッ、相当ジャミングが強いみたいだな」
レーダーが殆ど頼りにならない。最悪、戦艦アルビレオに通信して無理矢理デルタセイバーの居場所を吐いて貰おうか。
もしかしたら、まだ戦艦アルビレオの艦内に待機してる可能性も高い。
「ふむ、仕方無い。戦艦アルビレオに通信を繋げろ」
「了解しました。通信繋げます」
話し合いでデルタセイバーを出せる事が出来れば御の字だろう。
だが、あの堅物女傑だ。間違い無く拒否する筈。
なら、無理矢理にでもデルタセイバーを出させれば良いだけの話。
俺は営業スマイル全開でセシリア准将と挨拶する事にした。
「お久しぶりですな。セシリア准将殿」
『貴様は、キサラギ少尉。何故、貴様がこの宙域に居る』
「まぁ、個人的な理由がありましてね。事と次第によっては……な?」
『……貴様も、あの連中と同じと言いたいのか』
セシリア准将が凄い形相をしながら睨んで来る。
それこそ、子供が見たらギャン泣き必至な表情している。
このエルフの婚約者マジで大丈夫?
「そんな怖い表情しないで下さいよ。准将殿。隣の副官もドン引きしてますよ?」
『…………』
『わ、私はドン引きなどしておりません!誓ってです!』
「ウケる。何に誓うんだよ?」
セシリア准将が睨みながら副官を見ると慌てた様子で言い訳を始める。
エルフ特有(?)のコントを見続けたい気持ちはあるが、生憎と俺は暇人では無い。
「さて、本題に入らせて貰おうか。デルタセイバーを出せ。勿論、パイロットはクリスティーナだ。別のパイロットなんぞ乗せて出してみろ。貴様ら全員皆殺しだ」
『断る。貴様も所属不明部艦隊と同様、テロリストと何一つ変わらない。テロリストの要求に応える訳には行かない』
「ご立派な事だ。堅物の准将殿ならそう言うと思ってましたよ。じゃあ……あの半壊気味の超級戦艦を墜とせば気が変わるかねぇ‼︎」
ファントムを超級戦艦サザンクロスに向けて移動させる。
先程まで援護してくれた存在が突然敵意を剥き出しにして来る。
『止めろ!キサラギ少尉!そんな事をすれば後戻りは出来んぞ!』
「ならデルタセイバーを出せよぉ!だが安心しろ。戦艦アルビレオは最後まで生かしてやる。デルタセイバーが腹ん中に入ってる限りなぁ‼︎」
大型対艦ビームカノンのチャージを始める。
所属不明部隊とエルフェンフィールド軍のAW部隊は今も激しく戦い続けている。
そんな中に敵味方不明の大型ASが突撃して来る訳だから動揺するのは無理は無い。
『マッセナ中将!直ちに退艦して下さい!奴は本気です!』
『シュウ・キサラギ少尉。君は……リリアーナ様からブルーアイ・ドラゴン勲章を直接授与された程の人物であろう。何故、この様な血迷った事を』
知らない壮年の男性エルフが通信に入ってくる。
「テメェらには理解されなくて結構!理解して欲しいとも思わない!だがな、それでも……俺は証明する義務があるんだ!」
既に大型対艦ビームカノンの射程内。だが、確実にダメージを与える為に距離を詰める。
まだ敵と認識していないのだろう。こちらに対し超級戦艦サザンクロスから迎撃が来る事が無い。
「舐めるんじゃねえぞ‼︎俺は……本気なんだぞ‼︎」
更に超級戦艦サザンクロスとの距離が縮まる。
トリガーに指を掛けて押した瞬間だった。
レイナから報告が来た。
「11時下方にデルタセイバー、及び不明機を2機確認しました』
「ッ⁉︎良くやった!」
ファントムを上に軌道修正。同時に大型対艦ビームカノンが発射される。
大出力ビームが超級戦艦サザンクロスの艦橋横スレスレを通り過ぎる。ついでに射線内に入っていた不運な所属不明機を2機破壊する。
直ぐに通信を切り、デルタセイバーの方へ進路を変える。
「デルタセイバーはどうなってる?どうせ圧勝してるだろうがな!」
デルタセイバーが居る座標に向けて一気に加速。
再び大型対艦ビームカノンの再チャージを行う。
しかし、モニターに映し出されたのは力無く2機のAWに鹵獲されている姿。
このまま攻撃すればデルタセイバーの破壊は出来るだろう。
だが、そんな結末を俺は望んではいない。
一瞬の判断。レーダーを見てデルタセイバーと2機のAWが向かう方向を確認。
「デルタセイバーを収容して逃げるつもりか。まさに盗人と呼ばれるにふさわしい連中だな」
進路変更。俺はファントムを不明艦隊へ向かわせる。
「レイナ、所属不明の連中は全て敵性に変更」
「了解。敵性勢力に変更します」
「俺が居る戦場で、火事場泥棒が簡単に出来ると思うなよ」
ワープ航行を行う為には艦艇が必要だ。AW単機だけでワープ航行は不可能。
それならワープ航行させず逃がさない様にすれば良い。
恐らくデルタセイバーを回収しようとすれば余計な時間と手間を掛ける事になる。
なら、敵艦隊を潰せばデルタセイバーを持ち帰る事は不可能になるだろ?
【大型ASが本艦隊に接近中!】
【奴は我々の邪魔をする障害だ!排除しろ!デルタセイバーの収容を最優先!収容次第、本宙域を離脱する!】
【目標を捕捉。照準、固定完了】
【主砲射程内。砲撃準備完了】
【右舷側の艦隊はエルフェンフィールド艦隊を攻撃し続けろ!これ以上、邪魔を増やさせるな!】
【シャドウ大隊、直掩機は直ちに大型ASの迎撃に迎え】
【全艦、攻撃始めぇ‼︎】
E.G.F艦隊はファントムに向けて火力を集中させて迎撃を行う。
大量の艦砲ビームとミサイル軍がファントムに向け放たれる。
「ハッ!俺に勝てると思ったか?その浅はかな考えを後悔するんだな!」
強烈な弾幕を回避機動を取りつつ、正面装甲で何発か受け止める。
正面装甲の耐久はまだまだ余力を残している。
ならば、多少のゴリ押しは行ける。
【A-01より各機、デルタセイバーの捕獲には成功した。後はコイツを始末すれば任務は完遂される。我々の邪魔をした事を死んで後悔させろ!行くぞ!】
半数以下にまで落ちたシャドウ大隊。
しかし、戦意、練度共に高く互いに連携も問題無い。全てに於いて高水準で纏まっているE.G.FのAW部隊。
レグルスとシリウスが上下に分かれて、ファントムを挟撃して行く。
【正面は避けろ!側面、背後から攻撃を仕掛ける!】
何機かが一気にファントムに近付いて行く。
「有難い。わざわざ近寄って来てくれるなんてな」
まだまだ弾の残っているミサイルを敵AW部隊に向けて放つ。
遠距離ではロックオンが出来無くても、向こうから距離を縮めて来てくれた。
ロックオンが出来た機体に向けてミサイルを放つ。
【怯むな!一気に押し通せ!】
何機かのAWは破壊出来た。だが、仲間の屍を踏み越えて次々と攻撃をしながら接近して来る。
「馬鹿め!掛かったな!こいつを喰らいな!」
俺はファントムに搭載されている自動迎撃システム搭載型拡散ビーム砲を展開。
近距離にまで近付いて来た敵AW部隊は不意を突かれる形になる。
【ッ⁉︎嵌められた!回避しウワアアアアッ⁉︎⁉︎】
コクピットにビームが直撃して爆散するレグルス。
左腕と右脚部に被弾し、バランスを崩して隣のシリウスを巻き込んでしまうレグルス。
頭部と武装を吹き飛ばされながらも回避に成功するレグルス。
【畜生!だが、後ろは取ったッ⁉︎】
「頑張ったな。努力賞をやるよ。受け取ってくれ」
背後に居る敵AWに努力賞として、分離したミサイルポッドを4個程プレゼントして上げる事にした。
勿論、3秒後に自爆する様にセットしてだ。
「じゃあ、さよならだ」
ミサイルポッドが大爆発を起こす。ステルス重視故に装甲が脆いレグルスとシリウス。
爆発に巻き込まれてしまい、更なる誘爆を発生させてしまう。
「さて……仲間の元に逝かせてやろう。向こうも少ないと心細いだろうからな」
ファントムを加速させ追撃を振り切る。
E.G.F艦隊の駆逐艦、フリゲート艦が弾幕を展開し近寄らせまいと必死の迎撃を行う。
「大型対艦ビームカノンのチャージ完了」
「誘導開始。目標は4……いや、5隻の小型艦だ」
「了解。擬似ギフト誘導を展開」
擬似ギフトはギフトが無い者にも擬似的にだがギフトを使用可能にする。
しかし、その発現能力には個人差が発生してしまう。
結局、最後はパイロットの能力に任せる事になる。
だが、俺は戦略級AWウシュムガルに搭乗した時に既に擬似ギフトとの相性は実証済み。
つまり、擬似ギフトを使用する事に何一つ問題が無いのだ。
「撃ち貫けえええええ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎」
大型対艦ビームカノンから大出力ビームが放たれる。
最初は一番手前で弾幕を張っていたフリゲート艦を撃ち貫く。
更にギフトを使い先読みしながら誘導をして行く。
上方にいた駆逐艦。そのまま射線が重なっていた駆逐艦。
更に右側に誘導させフリゲート艦を貫いて行く。
【や、奴はギフト保有者なのか!一体、何者なんッ】
最後の駆逐艦は後部のメインスラスターから一気に船体を貫く様に誘導。
一瞬にして5隻を失ったE.G.F艦隊。更にファントムからの攻撃は続いて行く




