E.G.F艦隊VSエルフェンフィールド艦隊3
前進を開始したエルフェンフィールド艦隊。無論、E.G.F艦隊も同航戦のまま砲撃を続ける。
本来なら挟撃されているエルフェンフィールド艦隊が不利になる筈だった。だが、超級戦艦サザンクロスの存在がE.G.F艦隊にとって僅かに想定外になっていた。
【流石は超級戦艦。簡単には沈まんな。第81独立艦隊の動きは?】
【間も無く準備が整うとの事です】
【ならば、そろそろだな】
AW同士でも激しい攻防戦を繰り広げている。それでもデルタセイバーは一向に出て来る気配は無い。
【我慢比べはエルフ共が有利……か。ふん、無駄に長い年月を生きるだけはある】
短命種と長命種とでは価値観がかなり変わって来る。
短命種にとって1分、1秒は非常に大事だ。僅かな時間でも必死に知恵を出し続け、働き続ける。
逆に長命種には1日、1年は大した時間では無い。
それは実戦に於いて簡単に変えられる訳では無い。
【それとも、貴重なデルタセイバーを最後まで宇宙要塞リーベスヴィッセンまで運ぶか。中々、有能な指揮官だ】
一向に姿を見せないデルタセイバー。こうなってしまえば最終的に戦艦アルビレオを攻撃するしか無い。
【司令、第81独立艦隊より入電。これより超級戦艦サザンクロスを撃沈すると】
【お手並拝見だ。各艦へ通達、第81独立艦隊を援護せよ。火力を超級戦艦サザンクロスに集中!準備が出来次第砲撃始めぇ!】
【各艦隊へ通達、超級戦艦サザンクロスへ集中攻撃せよ。繰り返す、集中攻撃せよ】
左右に展開しているE.G.F艦隊から猛烈な攻撃を一身に受ける超級戦艦サザンクロス。
「敵艦隊からの攻撃が本艦に集中しています!このままではエネルギーシールドが保ちません!」
「対ビーム撹乱粒子の散布を怠るな!大型砲塔一番、二番は敵戦艦を狙え!シールドのエネルギー確保は怠るな!」
「敵AW8機が9時方向から接近!」
「1時方向からも4機来ます!」
「四方八方から敵が迫って来ています!」
「対空弾幕!敵を近寄らせるな!護衛部隊は直ちに迎撃に向かえ!」
超級戦艦サザンクロスに攻撃が次々と集中して行く。
140ミリ対艦ライフルを装備したTF-202Rシリウスの編隊が次々と砲塔や対空砲を破壊して行く。
ステルスを利用し護衛部隊の迎撃を潜り抜け、高い機動力を使い瞬く間に超級戦艦サザンクロスの懐に入るレグルス。更に反動が大きい140ミリ対艦ライフルを可変状態で使用。
高い技術力とパイロットの技量が合わさり圧倒的な戦闘力を発揮する。
「第2、6、8主砲大破!」
「右舷側に攻撃が集中しています!」
「巡洋艦リンバス速力低下!戦線を離脱します!」
「第14ブロックのVLSが誘爆!隔壁閉鎖急げ!」
「敵艦隊より多数のミサイル発射を確認!本艦を狙っています!」
「ジャミングを最大!対空砲はミサイルを撃ち落とせ!」
被弾が増え、黒煙と白煙が出始める超級戦艦サザンクロス。
「各ブロックに被害多数!」
「ダメコン急がせろ!全工作班緊急出動!」
「報告!3時方向より敵艦隊が突っ込んで来ます!」
「何だと?各砲座、対応せよ!」
E.G.F艦隊から飛び出して来た駆逐艦隊。
速度を緩める事無く一気に超級戦艦サザンクロスに向かって接近して行く。
無論、超級戦艦サザンクロスも事態を察知。対空仕様のMWと共に迎撃を開始する。
【目標からの迎撃多数確認。ここからが駆逐艦乗りの見せ場だ】
【敵超級戦艦は火力を失いつつある。味方AW部隊の戦果を無駄にするな】
【AWだけが戦場の主力では無い事を証明してやれ!各艦、突撃ィ‼︎目標、超級戦艦サザンクロス‼︎】
更に速度を上げて突撃して行く駆逐艦隊。
E.G.F艦隊は全ての艦艇にステルス装置やジャミング装置が標準装備されている。
その為、超級戦艦サザンクロスの自動追尾システムが一時的に遅れてしまったのが致命傷になった。
「中将!敵駆逐艦隊が突っ込んで来ます!」
「敵AWは味方部隊に任せろ!連中は肉薄雷撃をして来る!」
「肉薄雷撃?そんな、旧時代の戦闘では無いのですよ!」
「巡洋艦ローランド、ジネヴラが本艦の盾に!」
2隻の巡洋艦が超級戦艦サザンクロスの盾になる様に前に出る。
それでも超級戦艦サザンクロスをカバーするには力不足。
『サザンクロスをやらせるな!打つけてでも止めろ!』
巡洋艦ローランドに一隻の駆逐艦から放たれた収縮砲が突き刺さる。同時に巡洋艦ローランドから大量のミサイルが駆逐艦に向けて発射される。
両艦が共に爆炎を吐き出す。
『あぁ……ローランドが、沈みます!』
多数のミサイルを被弾した駆逐艦はコントロール制御を失い、巡洋艦ローランドに体当たり。そのまま両艦共に爆沈してしまう。
『巡洋艦ジネヴラに敵可変機が1機……いえ、2機接近!』
【これ以上、駆逐艦隊の邪魔をするな!排他主義者共がぁ!】
砲塔、ミサイル発射台、VLSハッチに次々と140ミリが突き刺さる。更に先頭のシリウスに隠れる様に接近したもう1機のレグルス。
【邪魔だ。沈んでろ】
照準に艦橋を捉え140ミリを直撃させる。そのまま艦内に誘爆が多発して爆沈してしまう。
瞬く間に障害となっていた巡洋艦2隻を排除して行く。
「取り舵、上げ舵一杯!回避しろぉ‼︎」
「敵駆逐艦に高エネルギー反応を検知!艦首に収縮砲を確認!」
「馬鹿な!アレだけの技術力があるのに旧式艦を使っているのか!」
駆逐艦の様な小型艦が収縮砲を搭載。これは地球統一連邦とガルディア帝国が戦争をしていた時代。
当時の艦隊決戦思想が大きく影響されていた艦艇であった。
今は廃れた代物であるが、数多くの収縮砲搭載駆逐艦が処分、再利用、売却された。
そして、その時代遅れの駆逐艦を改修し続け運用しているのが秘密結社E.G.Fなのだ。
だからこそ、その運用方法も独特なものになって行く。
【カウント3、2、1、行けます!】
【艦首収縮砲発射‼︎続いて大型ミサイル発射‼︎】
次々と高エネルギービームが超級戦艦サザンクロスの横っ腹に突き刺さる。
一瞬だけエネルギーシールドで耐える。だが、耐え切る事が出来ず次々と装甲を貫いて行く。
更に大型ミサイルも駆逐艦の速度も合わさり高速化。凄まじい速度で大型ミサイルは突き進む。
【時代遅れの旧式駆逐艦。艦隊決戦仕様でも使い方次第では脅威になる。教訓にしておくんだなぁ!】
E.G.F駆逐艦の艦長は捨て台詞を吐きながら離脱して行く。
凄まじい振動が超級戦艦サザンクロスを襲う。
右舷側の被害は甚大になり、艦が傾斜しながら前進する形になってしまう。
『隔壁が閉鎖される!急げ!早くしろ!』
『待ってくれ!まだ、俺達が残ってッ⁉︎』
『消火急げ!このままだと誘爆するぞ!』
『おい!しっかりしろ!返事しろって!おい!』
被害は甚大な物となった。艦内は地獄絵となり多くの死者が無重力の艦内に浮かんでいた。
「ッ……被害を、報告しろ」
「中将、怪我をして」
「構うな。報告急げ!」
艦橋にも被害が出たのかマッセナ中将の額には血が流れていた。
だが、そんな傷に構う事無く被害状況の確認を優先する。
「武装システムにエラー発生!自動迎撃システム機能しません!」
「第一機関室の被害甚大!更に第一、第三メインスラスター損傷!速力低下!」
「サブスラスターの出力維持出来ません!」
「第二機関室にも火災が発生!負傷者多数!」
「右舷第二格納庫に被害多数発生!誘爆の可能性が高いです!」
「各ブロックに被害、負傷者多数!救護班緊急出撃!」
「速力更に低下!このままでは速度を維持出来ません!」
「第一メインスラスターから誘爆を確認!このままでは第二メインスラスターにも被害が!」
「……右舷第二格納庫の隔壁閉鎖急げ。第一メインスラスターのエンジンも切り離す。続けて第一機関室の隔壁閉鎖」
「しかし、まだ生存者が……了解、右舷第二格納庫、第一メイ第一機関室隔壁閉鎖。第一メインエンジンの切り離し開始」
第一メインスラスターのエンジン部分が切り離される。
しかし、切り離された直後に爆発。第二メインスラスターも被害が出てしまう。
「姿勢を戻せ!それから戦艦アルビレオに通達。本艦を置いて、宇宙要塞リーベスヴィッセンへ向かえ……とな」
「中将!右舷より更に敵駆逐艦隊が接近して来ます!」
「ッ⁉︎諦めるな!超級戦艦サザンクロスは……簡単には沈まん!全ての武装を手動に切り替え迎撃せよ!」
「後方よりワープ反応!数は1!」
「新手だと?クッ……こんな時に」
しかし、ワープホールから出て来たのは1隻の大型高速輸送艇だった。
恐らく、ワープジャマーの影響により出て来てしまったのだろう。
「識別を確認。民間船の大型高速輸送艇です」
「……迷い込んだか。今直ぐ逃げる様に連絡を入れておけ」
「民間船に敵AW2機が接近して行きます!」
「奴らめ。目撃者は残さないつもりか」
E.G.Fのシリウスの上に乗ったレグルスの2機が大型高速輸送艇に向かって行く。
【恨むなよ。これも任務だ】
レグルスのパイロットがそう呟く。
そして、照準に捕捉したのと同時にトリガーを引くのだった。




