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最低の屑

現在、多数の津波被害が出ているかと思います。


一瞬、自粛の文字が脳裏に浮かびました。


しかし、自分に出来る事は娯楽を提供するくらい。


なので投稿は続けさせて頂きます。


宜しくお願い致します。

 チュリー少尉は無言で進んで行く。そして誰も居ない通路に出て、ようやく此方に振り向いた。

 勿論、険しい表情のままだったけどな。


「おいおい、チュリー少尉。そんなに眉間に皺寄せるなよ。美人が台無しになるぜ?」

「お生憎様。私はモテるから問題無いわよ」


 俺の冗談に対して睨み続けながら答えるチュリー少尉。

 どうやら冗談は許さないつもりらしい。


「そうかい。で?何の用だ。まさか、俺が辞める事に不満でもあるのか?」

()()無いわよ。でも、最低限言うべき人達が居るでしょう?」


 言うべき人達。無論、直ぐに思い当たる人達は出て来る。

 だが、もう必要の無い事なのだ。これ以上、躊躇する要素を作る必要も無いからな。


「フン、知った事か。お行儀良く、退職致します。お世話になりました……何て言う必要があるのか?俺達は傭兵だ。愛国心と平和からは無縁な存在なんだよ」


 俺の答えにチュリー少尉は怒りを露わにして怒鳴る。


「だったら、逃げんじゃ無いわよ!アンタが何処で野垂れ死のうが私は気にしないわ。けどね、アンタみたいな奴でも好意を持ってる人達は居るのよ!」


 チュリー少尉の言葉が刺さる。


 だが、もう手遅れなのだ。


 全てを犠牲にしてでも、やるべき事があるのだ。


「ナナイとアズサの事か。だが、残念だったな。俺はアイツらの想いに応える義理は無い」


 屁理屈にもならない言い訳をすると、チュリー少尉は俺の襟首を掴み壁に押し付ける。


「知ってるなら尚更逃げんな!言い訳して、下らない理由で自分を正当化してるつもり?エースパイロットが聞いて呆れるわね」


 チュリー少尉の顔が近付く。

 こうして見ると相変わらず整った顔をしている。男にも困る事は無いだろうし、普通の道を歩めば楽な人生を歩めただろう。


 だからこそだ。俺はチュリー少尉に少しだけ自分を晒す事にした。


 何となくだが、似た者同士のシンパシーってやつを感じたからだ。


 まぁ、愛する人を失った者同士ってやつさ。


「チュリー少尉、俺のこの目を見てみろ。ずっと……未来を見続けて来た目だ」


 俺は逆にチュリー少尉に顔を近付け、目を見せる。


 キスが容易に出来てしまう距離。


 至近距離で見つめ合い続ける。


「だが、俺自身はずっと過去を振り返ってばかりだった。ギフトが有ろうが無かろうが、未来なんて満足に見てはいなかった」


 吐息を感じる。お互いの体温と心臓の鼓動も身体全体で感じる程に。


「他の誰よりも恵まれてたんだ。それでも、俺は誰も救う事が出来なかった」


 転生者だから主人公になれると思い込んでしまった。

 ちゃんと身の丈に合う立場になっていれば、余計な物も抱え込む事無く楽に生きれた。


 だが、俺は決めたのだ。


「……自惚れてるつもり?誰かを救う?簡単に言葉に出来るけど、簡単に出来無い事なのよ」

「知ってるよ。身をもって体感したからな」


 己の無力故に戦友、親友、恋人を失った。


 自業自得とは言え、巻き込んでしまった罪悪感は消える事は無い。


 だから、俺は償う必要があるんだ。


「だからこそ、俺はやり遂げなければならないんだ。アイツらの死を無駄にさせない為に」

「……過去ばかり見て、今を見てないアンタに死んだ連中は喜ぶと思ってるの?今のアンタは唯の自己満足で動いてるだけよ」


 自己満足か……。間違っては無いかも知れない。

 それでも、俺が生き続ける事が贖罪になるとは思っていない。


 何かを成してこそ、初めて贖罪をした事になる。


 怠惰に生き続けて死者が喜ぶとは到底思えない。


「生きてる奴の意見に、死んだ奴が賛同した事はあるか?俺は聞いた事が無いがな」

「それはアンタの屁理屈よ」


 結局、俺とチュリー少尉は分かり合える事は無い。


 俺は後ろを振り返り歩みを止めており、チュリー少尉は前を向き歩いている。


 唯、それだけの違いがあるだけだ。


 暫く、俺達は無言で見つめ合い続ける。チュリー少尉は何か言おうとするが、結局言葉にする事は無かった。


「話は終わりか?なら、俺は行かせて貰うぞ」


 チュリー少尉を押し退けて俺は高速輸送艇に戻る。


「ナナイとアズサは……本気でアンタの事が好きなのよ‼︎」


 その言葉が俺の心に突き刺さる。


 今なら、まだ間に合うだろうか?


 過去を切り捨て、前を向いて生きる事。


 それは悪い事では無い筈だ。


 それでも、俺はやると決めたのだ。


 例え……結末が破滅だとしても。


「男を見る眼が無かったんだよ」


 俺は後ろを振り返る事無く言い捨てる。

 だが、その瞬間だった。チュリー少尉は俺の肩を掴んだのと同時に拳を振り上げた。


「最低の屑よッ‼︎アンタって奴はッ‼︎」


 避ける事は出来た。だが、避ける気にはならなかった。避けてしまったら俺は全てから逃げ出してしまうから。


 チュリー少尉は俺を殴り飛ばしたまま去って行く。

 その後ろ姿を黙って見送るしか出来ない。


「痛ってぇな……本当に」


 本当に……心に響いたぜ。






 俺は高速輸送艇に戻り運転席に座る。


「マスター、お怪我をされています。治療致します」

「ネロ、発進準備」

「……了解しました。発進準備に入ります」


 俺はネロの治療を無視して計器を確認する。既に電源は入っているので直ぐに出発出来る。


「こちらヴィラン1。発進許可を求む」

『こちら……ナナイです。了解しました。間も無く格納庫ハッチが開きます』


 そして対応してくれるのは安定のナナイ軍曹。しかし、ナナイ軍曹の表情は何処か落ち込んでる様に見える。


『ナナイとアズサは……本気でアンタの事が好きなのよ‼︎』


 チュリー少尉の言葉が脳裏に()ぎる。

 他人事の様に考えているが、ナナイ軍曹をこうしたのは俺自身なのだ。


(俺が何かを言う権利は無い。せめて、俺以上に良い男に出会える事を願ってるぜ)


 そして格納庫ハッチが開き始める。

 俺は計器の最終チェックをしながら操縦レバーを握る。


『進路クリア。発進……どうぞ』

「ヴィラン1、発進する」


 そして漆黒の宇宙へと旅立つ。徐々に距離が離れて行く傭兵企業スマイルドッグの艦隊。

 悪く無い場所だった。正直に言えばこのまま居続けたいと思ってたくらいだった。


(それでも、俺はレイナとタケルを見捨てたくは無いんだ。もう……俺しか覚えていないんだから)


 運命とは残酷な物だ。


 今まで苦労に苦労を重ねて手に入れた権利と名誉。その全てを棒に振るうと言うのだ。


 それでも後悔してないのだから救いようが無い。


「マスター、これから何方に向かいますか?」

「目的地は決まっている」


 全てはレイナとタケルの為。

 俺を生かす為に命を懸けて散って逝った戦友達の為。


「バンタム・コーポレーション第七兵器開発課だ」


 ZC-04サラガンの製造元でもあるバンタム・コーポレーション。

 そして、ZCM-08Rブラッドアークを開発した場所でもある第七兵器開発課。


 あそこならデルタセイバーに対抗出来る代物が造れる筈だ。それと、リンク・ディバイス・システムに関する代物もな。

 俺は足元に置いてあるアタッシュケースを触る。この中に入っているOSと新しいAW。そして、俺自身が合わさればデルタセイバーに対して勝機はある。


 それにデルタセイバーも完璧な機体では無い。


 弱点を突けば必ず勝てる。


「もう少しだ。もう少しで俺は……俺達は…………」


 ふと、チュリー少尉の言葉を思い出す。

 今の俺の姿を見て戦友達は喜ぶだろうか?悲しむだろうか?それとも呆れているかも知れない。


 それでも、俺は止まる事は無い。


 何故なら、これこそが最善の選択だと確信しているのだから。






 エルフェンフィールド軍は少々特殊な軍隊である。

 特筆する所は三大国家以上の技術力を保有しており、対等とは言わないが強気に行く事が出来る。

 しかし、エルフ故の種族特性だろうか。人的資源に関しては圧倒的に劣勢である。また、他種族に対しても排他的でもあり孤立気味でもあった。

 それでも独自の技術力により高品質の軍用品は他惑星群からは人気が高く、型落ちでも高値で取引されている程だ。


 そんなエルフェンフィールド軍の中でも肝入りの軍艦とAWが存在している。


 戦艦アルビレオ。艦首試作重力砲を搭載しており、多数の敵を纏めて殲滅出来る程の戦略兵器を保有。

 しかし、エネルギー充填には時間が掛かる事と独特なエネルギー波を検知され回避されるか、集中攻撃を受ける可能性がある。


 GXT-001デルタセイバー。クリスティーナ・ブラッドフィールド中佐の持つギフト【増幅】を使用する事を前提としたAW。

 パイロット個人に依存気味ではあるが、代わりに高い攻撃力、機動力、耐久性を実現。

 その圧倒的な性能は現存するAWを遥かに越えており、対抗出来るAWは皆無に等しい。

 無論、パイロット個人に依存しているので、機体では無くパイロットに焦点を当てる事で対応出来なくは無い。


 但し、選択を誤ればデルタセイバーの火力向上になる可能性もある。


 この二つの兵器は周辺の惑星群。そして、三大国家にとって少々見過ごせ無い事態になっていた。

 戦艦アルビレオ、GXT-001デルタセイバーは色々と活躍し過ぎてしまったのだ。

 戦略兵器N弾(ナイトロ)と同等の脅威をエルフェンフィールド軍が保有している。無論、エルフェンフィールド軍は既に三大国家間との条約によりN弾を少数ではあるが保有している。

 しかし、N弾以外の戦略兵器を二つも保有している。更にカテゴリーが別なのも厄介な点でもあった。


 仮に、この二つが量産されてしまえば戦略的バランスが崩れる可能性が高い。


 その為、三大国家は秘密裏にエルフェンフィールド軍と会合を実施。

 協議に協議を重ねた結果、三大国家とエルフェンフィールド軍は無事に条約を制定する事が出来たのだった。




 クリスティーナ中佐はセシリア准将に呼び出されていた。

 この二人は姉妹なのだが、セシリア准将は中々に怖いのでクリスティーナ中佐にとって少々苦手なのだ。

 勿論、姉妹としては良好な関係であり近々セシリア准将が結婚するのも祝福していた。


「今度は一体何の呼び出しかしら?また新しい任務だと思うけど」


 デルタセイバーの性能を以てすれば単機でも充分対応出来ると自負している。

 同時にデルタセイバーにも厚い信頼を持っていた。

 幾つもの難しい任務を無事成功に収めて来たのだ。デルタセイバーが無ければ不可能と言っても過言では無い任務でもだ。

 デルタセイバーのお陰で階級も中佐にまで昇進する事も出来た。


 今の彼女の人生は順風満帆と言っても良いだろう。


「失礼します。クリスティーナ・ブラッドフィールド中佐です」

『今ドアを開ける』


 インターホンを鳴らしドアを開けて貰う。

 部屋にはセシリア准将が端末にサインしていたが、こちらに顔を向ける。


「突然の呼び出しすまないな。クリスティーナ中佐」

「いえ、私は平気です。それで、私を呼び出した理由は?」

「……それなんだがな。中佐にとっては少々残念な知らせになっている」

「残念なですか?それは一体」


 セシリア准将は少し小難しい表情をする。

 しかし、そのままクリスティーナ中佐の方に顔を向けて伝える。


「先程、上層部から通達があった。本日をもってGXT-001デルタセイバーは封印する事となった」

「え?デルタセイバーが……封印?何故ですか?デルタセイバーはまだ稼働可能です」


 突然のデルタセイバー封印命令。

 余りにも唐突過ぎる内容にクリスティーナ中佐は狼狽えてしまう。

 それに、デルタセイバーはまだまだ戦える。寧ろ、これからが本番と言っても過言では無いだろう。


「クリスティーナ中佐。君が言いたい事は分かる。勿論デルタセイバー自体に問題は無い事もな。だが、今回の決定は三大国家との秘密協定があっての事だ」


 三大国家。この広い宇宙を統治し、国家運営を行うだけの権力と軍事力を持つ存在。

 互いに牽制し合っているが、力が均衡している故に絶妙なバランスで今の安定した情勢がある。

 唯、最近では地球統一連邦とガルディア帝国との関係は余り宜しく無い。

 理由としては、やはり惑星ソラリス攻防戦での敗退。そして、マザーシップの存在だろう。

 特に惑星ソラリス攻防戦での敗退は、地球統一連邦軍にとって多くの市民を置き去りにするという最悪の結果を叩き出した。

 その片棒にガルディア帝国が絡んでいたとなれば、険悪な関係になるのは仕方無いのかも知れない。


「デルタセイバーとアルビレオは三大国家から脅威として認知された。故に、我々にとって有利な条約の締結も出来た。デルタセイバーを封印する事で、これ以上無い結果を出したんだ」

「それは……そうかも知れません」

「それにデルタセイバーを解体する訳では無い。一時的に封印するだけだ。何か有事の際にはデルタセイバーを再び使用する事も出来る。無論、使用する際には三大国家からの承認が必要になるがな」


 デルタセイバーが再び使用可能になる状況。

 恐らく、大量のOLEMとマザーシップが出現した時くらいだろう。

 戦艦アルビレオは封印する事は無くなったが、使用機会は減る事が目に見えている。下手に三大国家を刺激するのも良く無いからだ。


「納得しろとは言わない。だが、デルタセイバーの役割は既に果たしている。現在、我々の主力機でもあるGX-806スピアセイバーの後継機も完成した」


 GXF-900ガイヤセイバー。デルタセイバーの戦闘データを元に試作された高性能AW。試作段階で既にスピアセイバーより優れた性能を叩き出している。

 次期主力機として申し分の無いAWなのは言うまでも無かった。


「尤も、完成したが再び再調整に入ってしまったのは残念だがな。全く、あの男は色々とやってくれたものだ」


 優れた性能を発揮したGXT-900ガイヤセイバー。次期主力機として華々しい戦果と共に量産、配備が進むかと思われていた。

 しかし、ガイヤセイバーの行手を阻む一人の傭兵(シュウ・キサラギ)と一機のAW(ブラッドアーク)によって量産は一時的に見送られてしまった。

 現在では更なる性能向上を目的として、内部システムの最適化を目指しているらしい。


「ガイヤセイバーの量産は既に目と鼻の先だ。そうなればデルタセイバーの役割は終えたと言って良いだろう。だが、解体するには惜しい機体であるのも確かだ。だからこそ、封印と言う形で手を打ったのだ」

「……分かりました。デルタセイバーは充分な結果を出したのですね」

「クリスティーナ中佐の技量も合わさっての事だ。だから誇れ。中佐とデルタセイバーに敵うAWは存在しないと実証されたのだからな」


 セシリア准将の言葉に納得するクリスティーナ中佐。


「詳細は追って知らせる。それと中佐の機体に関してだが、ガイヤセイバーを手配する事になっている。それまでは待機する様に」

「了解しました」


 既に軍の決定事項なのだ。抗議した所で時間の無駄になる。

 デルタセイバーの存在は各方面に様々な形で影響力を発揮した。

 各企業や軍では新型AWの開発に躍起になり、既存のAWの性能向上アップグレードにも力を注いでいる。

 また、デルタセイバーに対抗出来なくても他国より性能が高いAWを保有する事は軍事力で優位に立てる。


 デルタセイバーによって兵器関連の新たなる風が吹いたのは間違いないだろう。


「ところでだ、クリス。お前は良い相手は居ないのか?尤も、私は余り心配はしてはいないが」

「ふぇ?い、今は別に……その……」


 突然話題が私の恋愛事情になってしまった。

 唯、私だって気になる人が居ない訳じゃない。でも、あの人は傭兵やってるし、いつ死ぬか分からない。

 連絡をしても場所が遠いから、常に遅れて返信が来る状況。それに、恋人同士でも無いからロマンティックな会話がある訳でも無い。


 それでも、私は好きになってしまったの。


「私はお前の恋愛に関しては何かを言うつもりは無い。それに私が良い家柄の旦那と婚約する事が出来た。少なくともブラッドフィールド家として問題は無くなった訳だ」

「姉さん。私は……」


 正直に言えば少しだけセシリア姉さんに罪悪感がある。

 私は両親から特に婚約者とかは用意されていない。少なくともセシリア姉さんが長女としての役目を果たしているからだろう。


 だからこそ、私が自由な恋愛をして良いのだろうか?


「クリス、よく聞きなさい。私自身、自由な恋愛をして来た訳では無い。背負うべき物がある。だからこそ、逃さず攻める時は攻めて来た」


 セシリア姉さんは真剣な表情で語る。

 例え婚約者が相手であろうとも、色々な意味で手加減などしなかったのだろう。

 そう思うと少しだけ婚約者の方に同情してしまった。


(だけど、セシリア姉さんは女傑だからね。尻に敷かれるタイプじゃないもの)


 伊達に軍で准将にまでなってる訳では無いのだ。

 だからこそ、セシリア姉さんの言葉は重いのだ。


「お前自身、もう決めてしまっているのだろう?私達エルフは長寿故に、一度決めてしまったら簡単には諦める事は出来ない」


 こればかりは長命種の宿命だ。

 誰かを好きになれば大抵の事では嫌いになる事は無くなる。それこそハッキリと嫌いと言われなければ離れる事は無い。


 いや、嫌いと言われても簡単には諦めないけど。


「相手は歴戦の傭兵だ。簡単には捕まえられん。だからこそ、手を(こまね)いている間に逃げられる訳にはいかん」


 そうなのだ。セシリア姉さんの言う通り。

 あの男は戦場を股に掛けるエースパイロット。正直に言って、いつ死んでしまうか心配でならない。

 簡単に死ぬ事は無いとは理解出来る。けど、戦場に絶対は無い。

 あの時だって偶々私が相手だったから死なずに済んだんだから。


(それに戦場に出させるくらいなら、私が彼を監禁して身の回りの世話をした方が絶対良い)


 それこそ戦略級AWに乗せるくらいなら尚更よ。


「援護が必要ならいつでも言いなさい。私自身が使える範囲でなら私兵くらい用意出来る」

「姉さん……うん、ありがとう。その時になったら言うね」

「あぁ、それで良い。歴戦の傭兵相手に手段を選ぶ必要は無い。それに、相手は私達と違い短命だ。早期に捕まえてエルフの秘薬を飲ませる必要もある」


 短命種と長命種の最大の違い。それは寿命による死だ。

 多少の違いはあるものの短命種は僅か50〜150年程度しか生きられない。しかし、私達の様な長命種は最低でも300年以上は生き続ける。


 死は誰にでも訪れる。逃げる事など出来ない運命。


 だが、私達のご先祖様達はその運命に抗った。


 そして短命種の遺伝子を内部からゆっくりと確実に変える方法を手に入れたのだ。


(私だって諦めるつもりは無いんだから。絶対に手に入れてやるんだから)


 散々人を振り回して、挙句の果てに中々逢えない始末。

 それでも彼の事を忘れる事は無かった。


 恋は盲目と言う。まさに、その通りだなと思うクリスティーナ中佐だった。

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― 新着の感想 ―
[一言] ちょっと前からヤンデレっぽさは感じてたけど… R.I.P
[一言] SFなレンバス食わせて監禁エンドかぁ…こわぁ
[一言] ハッピーエンドなんですよね?
感想一覧
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