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Good-by

新年、明けましておめでとうございます。

今年も宜しくお願いします。


タイトルに記入している通りなのですが。


III count Dead ENDコミカライズ化が決定いたしました。


詳細はまだ伝える事を控えて欲しいとの事ですので、もう少しお待ち下さい。

それでは、続きをどうぞ!



・追記

地球連邦統一軍→地球統一連邦軍に変更します。

 初めて見た時は圧倒された。


 絶対に勝てないと確信したから。


 次に見た時は敵にしたく無いと思った。


 勝てない戦いに参加する程、俺は馬鹿じゃない。


 共闘した時は心強かった。


 同時に劣等感を抱いた。


 機体もそうだったが、何よりパイロットが綺麗だった。


 誰よりも輝いて見えた。


 物語のヒロインって奴は、あれくらいの綺麗所じゃないと務める事は出来なかっただろうから。


 敵対した時は最悪だった。


 一瞬でも勝てると慢心した自分を殴りたくなる程に。


 ZCM-08Rブラッドアークは最新鋭機だ。


 それこそ、俺の為にカスタムされた特注機。


 でも、結果は敗走。


 その後の戦略級AWウシュムガルで戦いを挑んだが、同様に敗走した。




 俺は本物には成れない。




 どう足掻いても出来無い事は出来無いんだ。


 この世界に転生した時の事は今でも覚えている。


 俺は選ばれたんだって。


 何でも出来るんだって。


 周りの環境は常に最悪だった。


 だけど、転生者だと言う事だけが唯一の誇りだったんだ。




 物語の主人公の様に成れるって……思い上がってしまったんだ。




 救えると信じていた。


 いや、過信していたんだ。


 自分は選ばれた存在なのだと。


 自分なら救う事が出来ると。




 実際は唯の道化だった。




 自分だけしか生き残れなかった。


 子供達、戦友達、親友、恋人……誰一人救えなかった。


 だが、俺は託された。


 俺の為に命を懸けた戦友達。


 最後まで想ってくれていた恋人。


 最後まで幼馴染を守り続けた親友。




 諦める訳には行かない。例え、主人公で無くても。




 可能性は限り無く低いだろう。


 それでも、僅かな可能性があるなら俺は全身全霊を賭ける。


 死ぬ最後まで俺に希望を抱き続けていた仲間達の為に。


 俺は報いなければならないのだ。




 道化では無く、本物の希望になる為に。











「……それで、辞めるつもりなのか」


 傭兵企業スマイルドッグのトップでもある社長は眉間に皺を寄せ、気難しい表情をしながら俺を睨み続けていた。

 俺としても事の経緯を大雑把だが説明した。流石に詳しく話す訳には行かないが、社長には説明する義務がある。


「えぇ、そうですよ。今回の件は流石に社長の手には負えません。今や世間から粛清されてるQA・ザハロフですが、残党は必ず出て来ます」


 無論、大企業なら救いの手は三大国家から出されるだろう。

 だが、軍事企業QA・ザハロフとしては終わり同然だ。

 今まで違法な事も多数やって来ただろう。そして多額の利益も得ていた筈だ。その稼ぎ方を禁止されてしまえば経営方針を見直す事は必然。

 そうなればQA・ザハロフと深い関係を持つ企業の一つ、二つは無くなるかも知れないからな。


「その時、残党共のやる事は一つ。自分達をドン底に叩き落とした野郎を殺す事。俺が奴等の立場だったらそうしますからね」


 自分達の領域に土足で侵入し、荒らしまくった挙句、逃亡している。

 そんな事を許す程、世の中は甘くは無いだろうからな。


「まぁ、そんな訳ですから。退職届を出させて頂きます」

「……貴様が自分の手で火の粉を払えば良いだろう」


 手書きの退職届を社長の机の上に置く。

 しかし、社長は退職届を受け取ろうとし無い。

 何気に俺は傭兵企業スマイルドッグへの貢献度は高い方だからな。手放したく無い気持ちもあるだろう。


「簡単に言わないで下さいよ、社長。相手は腐っても大企業です。つまり、連携してる企業は多数あるんですから」


 その分、敵は多い訳だからな。

 今や、裏ギルド的な所では賞金首になっているだろう。


「そんな事くらい分かっとる。だが、貴様の立場なら何とかなるとは思わんか?」

「立場?あぁ、連邦の名誉市民ですか。で?それで復讐劇が終わると?ハハ、冗談としては面白くありませんよ」


 名誉市民としての立場を使う。つまり、地球統一連邦政府に助けを求める訳だ。

 連邦としても救援を求めた名誉市民を見捨てる事は簡単には出来無い。そもそも、名誉市民と言う身分は国家に対して多大な貢献をした人物に贈られるのだ。

 俺の場合はマザーシップ撃破に貢献した訳だからな。あのままマザーシップを破壊出来なければ、更なる被害が出てたのは間違い無いだろう。


「……まぁ、少なくとも。連邦の領域内でなら、安全はある程度保証されるでしょうけどね」


 代わりにガルディア帝国、自由惑星共和国へ行くのは難しくなる。

 どんな形であれ、傭兵が連邦に肩入れするのを選んだ。他の国へ行くには色々と時間と審査が必要になるだろう。


 それは傭兵企業スマイルドッグとしても宜しくは無い。


「ですが、それは社長としては望ましくは無いでしょう?何より、肩入れしてもある程度の保証くらいですからね」

「……連邦領域内でも充分な利益は出る」


 やれやれ、本当は理解している筈だろうに。

 変な所で情が出るのは社長の良い所だ。その情に救われた事があるのも事実。


 だが、今の俺にその情で救われる価値は無い。


「社長……復讐って奴は簡単には止まりませんよ。例え、連邦に頼ったとしても。それは社長自身も理解してるでしょう?」

「…………」

「沈黙は肯定と同義ですよ。なら、この場合の最適解は分かってる筈。さぁ、その退職届の受理を願います」


 社長は俺を睨み付ける。だが、反論は無い。そして、観念したかの様に一度溜息を吐く。


 そして、俺の退職届を受理した。


「フン、これで貴様は赤の他人となった。退職金代わりに高速輸送艇はくれてやる。サッサと儂の目の前から消え失せろ」


 俺は社長の言葉通り社長室から出て、サッサと目の前から消える。

 そして、社長室のドアに向き直りながら呟く。


「感謝してるぜ、社長。価値の無かった俺を拾ってくれた事。そして……信用してくれた事」


 16歳の時だっただろうか。俺は正規市民になったばかりだった。

 当時は一応AWの搭乗許可証は持っていたものの、肝心のAW自体は持っていなかった。理由は単純で維持費が高かったからだ。

 代わりに陸戦型MW【MF-88Eロルフ】は持っていた。だが、宇宙を主戦場としている傭兵企業は多く、中々就職が出来なかった。


 そんな時に俺を拾ってくれたのが、傭兵企業スマイルドッグの社長だった。


 駄目元で幾つかの傭兵企業に応募はしていた。その中で唯一拾ってくれた。

 そもそも、ゴーストから正規市民への成り上がりは煙たがられる。同時に通常の正規市民から見れば差別される対象だ。

 戦争屋の代名詞の傭兵企業とは言え、成り上がりを雇って要らない火種を腹に抱えたくは無い。


 そんなリスクを承知の上で社長は俺を雇ってくれたんだ。


 だが、俺は捻くれ者だ。

 だから、初めて社長と対面した時に皮肉気に言ったんだ。


「肉壁として精一杯頑張ります。宜しくお願いします」


 しかし、社長は俺の下らん挨拶を一蹴した。


「貴様に与えるAWはタダでは無い。戦果と結果を出せ。そうすれば、それ相応の対価を出してやる。分かったら働け」


 正直言って信じなかった。だが、ZC-04サラガンを与えられ、戦果を出したらクレジットは貰えた。

 更に戦果を出し続ければ、貰えるクレジットは増え続けた。


 結果として俺の心配事は杞憂だった。


 そして、この時になって俺は人並み以上の生活を手に入れたのだ。


「…………」


 色々と思い出しながら、社長室へ向けて敬礼をする。


 最大限の感謝を込めて。


「さようなら……お元気で」


 俺は社長室を後にして移動する。


 やる事は沢山ある。だが、もう俺一人だけだ。


 誰の助けも無い。有るのは金で繋がる関係のみ。


 だが、それで充分だ。これから先は()()だけでやり遂げる。


「ブラッドアークを修理して貰ったのは僥倖だったな。お陰で目的地まで何とか行けるだろう」


 恐らく、社長は俺が本気で辞めるとは思っては無かったのだろう。だから、ブラッドアークの修理は止めなかったのだ。

 もし、本気で辞める事を知っていたら修理なんてしないからな。


 何やかんや言って社長は守銭奴(ドケチ)だからな。


 そのまま自室に戻り荷物を纏める。しかし、思ってた以上に荷物は多かった。

 てっきり、手荷物程度で済むと思っていたんだがな。


「居心地は良かったからな」


 荷物は最低限の物だけにする。

 多くの私物を置いて行く事になったが、どうせ処分されるから問題は無い。

 俺はそのまま元自室を後にする。ネロも既にアンドロイドボディに切り替えており、静かに俺の後ろに付いてくる。


「ネロ、お前は残ってても良いんだぜ?」

「私のマスターは貴方だけです。何故残る必要があるのでしょうか?」

「物好きな奴め」


 俺が行き着く先は破滅だ。その片道切符にネロを連れて行く必要は無いだろう。


(どの道、ネロのサポートは必要無くなるからな)


 最初こそ戦闘中にフリーズしたりと最悪だった。だが、その後は優秀なサポートとして戦闘の補助をしてくれていた。

 アンドロイドボディを与えてからは日常生活でも色々とお世話になった訳だが。


 戦闘用補助AIの割には良く働いてくれたものだ。


 退職金代わりの高速輸送艇に向かう。既にブラッドアークとベスウームナは搭載済みだ。

 後は高速輸送艇に乗り込むだけなのだが。此処で面倒な奴等に見つかった。


「センパーイ!先輩先輩先輩!お金貸して下さいッス!」


 白髪で猫耳娘ことアズサ軍曹。

 背は低いにも関わらず、女性の敵と言わんばかりのボンッ!キュッ!ボンッ!のスタイル保持者だ。


「大声を出すな。そして藪から棒になんだよ」

「いやー、実は新発売の大出力対艦ビームカノンの肩装備が欲しいんスよ。然も、日頃の感謝セールも合わさって10%OFFなんス!これは是非買いだと思って……あれ?先輩、また何処かに出掛けるんスか?」


 今日も元気満点印のアズサ・ニャメラ軍曹。

 しかし、相変わらず金使いが荒いと言うか、浪漫ばかり追い求めていると言うか。悪い事では無いが、新装備ばかり買っても勝てないぞ?


「まぁな。てか、辞めるんだ。そう言う訳だから金は貸さない。それと、お前に貸しが残ってるが……まぁ、チャラにしてやる。感謝しろよ」

「え?え?えっと……つまり、貸しが無くなって、先輩は残ると?」

「何でやねん」


 何で都合の良い所しか聞けて無いんだよ。このニャンコ娘は。


「ハァ、頼むぜアズサ軍曹。前にも言ったが、お前は充分エースパイロットとしての素質がある。浪漫を追い求めるのも良いが、腕が有ってこそ浪漫は生かされる」

「んー……でも、先輩が居れば問題無いと思うんスけど」

「だから、俺は辞めるの。スマイルドッグから消えるの。分かった?」

「分かんないッス!」

「分かんないかー。頭が痛くなって来た気がする」


 微妙に話が通じない。あ、もしかして社長が俺と話す時って、こんな風な感じだったのか?

 だとしたら頭痛になるのは仕方ないな!


「兎に角だ。俺は色々やる事があんの。だから……まぁ、なんだ。元気でな」


 俺はアズサ軍曹の頭を撫でながら猫耳を揉み揉みする。

 このふわふわ猫耳に触れるのも、最後と思うと感慨深い物があるな。


「……嫌ッス」

「何だって?」

「嫌ッス!嫌ッス!先輩が辞めるなら自分も辞めるッス!」

「無茶言うなよ。そんな我儘を言ったとしても誰も得しねぇぞ」

「でも先輩はッ!ウニャニャニャー!」


 取り敢えずアズサ軍曹の髪の毛をワシャワシャにする様に撫でまくる。


 文句は言わせない。これから先は俺達の戦いなのだから。


「じゃあな。死ぬんじゃねぇぞ」


 俺はそのまま高速輸送艇に向かう。

 色々と罵倒と呼び止められてる声が聞こえるが無視する。

 これ以上、この場所に居続けるつもりは無いのだ。


「あら?私には挨拶は無いのかしら?」


 しかし、聞き慣れた声の方に顔を向けてしまう。

 そこには虹色の髪と毛並みを持ち、スタイル抜群のチュリー少尉がいた。


「必要だったかな?フリーの傭兵時代には挨拶無しで消えて行く奴は居ただろ?」

「えぇ、そうね。でも、そう言う奴らは本当にどうでも良い人達だったから気にしても無かったわ」


 そしてチュリー少尉は付いて来いの合図をしながら離れて行く。

 このまま無視して高速輸送艇に乗っても良いんだけど。多分、それやったら追撃が来そうだから断念する。


「ネロ、お前は先に高速輸送艇に乗って待機だ」

「了解しました」


 ネロに指示を出してからチュリー少尉の後を追うのだった。

ハッピーエンド。私の好きな言葉です。

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― 新着の感想 ―
[一言] ハッピーエンド。私の好きな言葉です。 信じたいこの言葉щ(゜Д゜щ)
[一言] コミカライズおめでとうございます! 今年始まって一番嬉しいニュースだよ
[良い点] とんでもねぇ待ってたんだ。 [気になる点] III count Dead END 私の好きな小説です。 [一言] キット化待ってます!
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