希望VS憎悪
ひゃ〜
200話超えちゃった〜
我ながら良く更新してるなって思った(KONAMIKAN)
「ゴフッ……ハァ、ハァ。流石にリミッター解除は無理し過ぎたか」
血を吐き出しながら操縦レバーを握り締める。
流石にリンク・ディバイス・システム搭載AWを三機撃破したのは骨が折れた。
ブラッドアークのリミッターを解除して想定以上のGを受けた俺の内臓系は傷付いてしまった。
だが、あの機体相手に手加減など出来る筈も無い。
死ななかっただけでも儲け物だと思っておくべきだろう。
正直に言うと一度休憩したい気持ちもある。だが、今はまだ休める状況でも無い。
何せ現状孤立無縁なのは変わらないのだから。
幸い、あのキザ野郎が言うには敵の援軍が来るのは不定期らしいがな。
俺は半壊しているブラッドアークを敵の研究施設へ移動させる。
「タケルの奴は生きてるだろうな。死んでたらタダじゃおかねぇからな」
研究施設付近までブラッドアークを寄せながら生命反応を調べる。
すると、一つだけ反応があった。
「…………」
アタッシュケースと刀を握り締めながら此方を睨み続けるタケル。
俺はブラッドアークを静かにタケルの正面に着地させる。
そして、コクピットハッチを開く。
「ネロ、少しだけ待っててくれ。今から……そうだな。古い友人と……いや、宿敵と会って来る」
「了解しました。援護は必要でしょうか?」
「必要無い。唯、一つだけ命令だ。次に、このコクピットに乗って来た奴は全身全霊を懸けて助けてやってくれ」
俺はネロの返事を聞く前にコクピットから降りる。
そして、地面に降り立ちタケルと対峙する。
「……久しぶりだな。タケル」
「……貴様が居ると言う事は」
タケルはアタッシュケースをゆっくりと地面に置く。
そして、刀を抜き鞘を放り投げる。
「あぁ、お前の思っている通りだ。レイナは……もう、この世には居ない」
俺が殺した。この手で。
静寂。俺とタケルは静かに睨み合い続ける。
「俺は……貴様を、許さない。絶対に」
心の底から憎しみに染まった声で言う。
「……そうか。なら、来いよ。殺しに」
まだ、完全に諦めていない声で返事をする。
俺はM&W500をゆっくりと抜き、タケルに向けて銃口を向ける。
タケルは刀を両手で構えながら此方を睨み続ける。
「「…………」」
言葉は無い。
同じ人を愛した者達が殺し合いをする。
唯、それだけの話だ。
最初に動いたのはタケルだった。
タケルは刀を構えながら一気に走り出し、間合いを詰めて来る。
無論、俺も無抵抗で殺されるつもりは無い。
何が何でもタケルを助けるんだ。
もう、俺にはそれしか残っていない。
下段に刀を構えながら右へ左へとフェイントを僅かに織り混ぜながら迫り来る。
タケルのギフトは【自身の時間を延長】させる。タケルの見える世界はスローモーションみたいに遅くなる。
つまり、下手な距離でマグナムで撃ったとしても余裕で避けられてしまう。
だから、必然的に近距離での戦いになってしまうのだ。
近距離に入った瞬間にマグナムをタケルに向けて撃つ。
タケルは紙一重で回避しながら更に迫る。それでも更にもう一発腰撃ちに切り替え、タケル向けて撃つ。
しかし、弾頭を正面から斬り落とされてしまう。
「貴様さえ居なければああああああああ‼︎‼︎‼︎」
俺はギフトを使いタケルからの斬撃を先読みする。
下段からの斬撃を避けるが、直ぐに上段から刀が振り下ろされる。
無論、簡単には避けられない斬撃。タケル自身の実力も相まって避け切れない。
俺は咄嗟の判断でマグナムを盾にする。
刀とマグナムが激しく打つかり合い火花が散る。
「貴様と出会わなければ……レイナは、苦しむ事は無かった‼︎」
「ッ……うるせぇよ。そんな事、言われなくても知ってるよ‼︎」
タケルの腹に膝蹴りを喰らわせる。体勢を乱したタケルに更に追撃として肘打ちを鳩尾に喰らわせる。
虚を突かれたのか全ての打撃を受け止めるタケル。
だが、タケルの目は憎悪に染まりながら俺を睨み続ける。
「どうした、タケル!権力がある場所に座り過ぎて鈍ったか?ハハ……昔の方が、もう少しキレがあったぜ!」
俺の言葉にタケルは口から流れる血を拭い取りながら刀を再度構える。
「お前は絶対に殺す。それが、俺がレイナに出来る最後の手向けだ」
再び迫り来るタケル。俺はタケルに向けてマグナムを一発撃つ。
「手向け……か。残念だが、それは意味無いぜ。何故なら……」
弾は簡単に避けられる。そして刀を中段に構えながら一気に距離を詰めて来る。
「アイツは、天国に行ってるからな」
俺はバックステップして斬撃を回避しようとする。だが、読まれていたのか途中で刀を突き出して来る。
脇腹に深々と刀が突き刺さる。
だから代わりにタケルの左肩に銃口を押し当てながらトリガーを引く。
銃声と共に刀が抜かれる。だが、互いに体勢を崩し地面に倒れ込む。
「グハッ!イッテェなぁ。クソがよ」
俺が痛みで呻いてる間にタケルは立ち上がり刀を構える。
左肩からは大量の血を流しながら。
「何故だ。何故、貴様は抵抗する。この世界に……レイナが居ない世界に価値があるのか‼︎‼︎‼︎」
タケルは憎しみに染まった声を上げながら迫り来る。
俺が体勢を立て直す僅かな時間で瞬く間に距離を詰めて来る。
超接近戦からマグナムを構える。しかし、間合いに入られ刀が右足に突き刺さる。
「終わりだ‼︎」
「まだだよ‼︎」
痛みに耐えながらトリガーを引く。放たれた弾丸は刀に当たるが弾頭は真っ二つに分かれる。
しかし、分かれた弾頭の片方がタケルの脇腹を貫く。
だが、タケルは離れる事は無い。
「お前言ったよな。このクソッタレな世界に価値があるかってな」
格闘戦に入るが、今度は簡単に避けられてしまう。代わりにタケルのカウンターが次々と俺の身体を斬り裂いて行く。
反撃に一発だけマグナムを撃つが回避されてしまう。
代わりに更に追撃が激しくなる。
斬撃をマグナムで受け止める度に火花が散り、傷が増えていく。
三秒先を先読みしようが捌くには限度がある。
「価値はまだ残ってるぜ……一応な」
俺の答えに満足出来て無いのだろう。タケルは再び吼える。
「レイナを殺したお前が言うのか‼︎」
「レイナを殺した俺だから言うんだよ‼︎」
タケルは刀を振り下ろす。俺は再びマグナムで受け止める。
既に傷だらけになってしまったM&W500
「貴様は何もかもが中途半端なんだ。だから彼女を救えなかった」
憎悪の中に悲哀が僅かに見え隠れするタケル。
だが、俺はタケルが望む答えを持ってはいない。
「中途半端で何が悪い?完全体にでもなりたければ人間を捨てな」
気合いと根性でタケルの腹に蹴りを入れる。お陰で少しだけ距離が取れたが、意味は殆ど無いだろう。
「だがな、タケル。もう、二度と触れ合う事が出来なくとも。俺は……死ぬ最後の瞬間までレイナを思い続けるさ」
結局、俺は前に進めていないんだ。
どれだけ、地位や名誉を手に入れようとも。
あの時。
あの瞬間。
レイナを救えなかった時からずっと……。
過去に縛られるって良いよね!(満面の笑み)




