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希望VSナンバーズ2

【成る程。大した腕前だ。No.16ならまだしも、No.8まで殺られるとはね】


 通信から敵の声が聞こえて来る。

 攻撃に備えて距離を取るが、相手は銃口を向けたまま動く事は無かった。


【旧世代のパイロットに倒された。これは事実だと認めざるを得ない】

「旧世代?それは貴様らの事だろうが。リンク・ディバイス・システム。これを使ってる時点でテメェら全員負けてんだよ。一人を除いてな」


 レイナだけは別だ。レイナは犠牲になったんだ。

 リンク・ディバイス・システムなんてクソみたいな操作システムのな。


「それにだ。テメェと話す暇は無いんでな。大人しく死んでくれ」


 大型レールガンでカイブノヴァを狙い撃つが、距離があるからか簡単に避けられてしまう。


【短気は良く無いな。それにだ、僕は君を高く評価しているよ。No.16ならまだしも、No.8を倒した実力。失うには実に惜しい】

「そうかい。で?味方の増援が来るまでお話でもしようってか?生憎だが、宇宙に滞在していた艦隊なら呼んでも来ないぜ。何せ、全部俺が鉄屑にしたからな」

【味方の増援は必要無いさ。そもそも、この惑星には不定期な便しか来ないからね。本来なら君の様な者に見つかる惑星では無いからね】


 俺は敵機を見据えながらモニターに映るタケルの姿を確認する。

 幸い死んでは無いが、俺が敗北すれば確実に殺されるだろう。

 それにだ、No.5とやらは間違い無く強い。仲間を二人殺され、宇宙に待機していた艦隊を壊滅させたと言うのに焦る様子が無い。


 自分は死なないと言う絶対的な強者故の慢心か。


 それとも本物の実力者なのか。


(それなら少しでも勝つ確率を上げるだけだ)


 俺はNo.5と話をする事にした。

 もしかしたら、レイナを犠牲にしたリンク・ディバイス・システムについて何か話すかも知れないからな。


【さて、どうだろうか?このまま一戦するのも良いのだがね。そうすると、僕が勝つのは目に見えているんだけどね】

「随分な自信家じゃないか。だが、リンク・ディバイス・システムを使う時間が長くなれば苦しくなる筈だ。以前の代物と同じならな」


 するとNo.5は得意気に口を開いた。


【確かに、リンク・ディバイス・システムは欠陥の多い旧世代の代物だ。だが、その操作性は現代のモノより遥かに優れている。故に研究は続けられ、リンク・ディバイス・システムの欠陥を克服出来る段階まで来ている】


 欠陥。恐らくパイロットへの後遺症の事だろう。

 レイナの犠牲無しで克服出来てるなら、既にレイナの存在は必要は無かった筈。


【今もそうさ。僕達の機体には、パイロットに直接的なダメージを受けない様にしてある】

「……人柱でも使ってるのか?」

【ッ……素晴らしいね、君は。流石はエースパイロットと言うべきか。洞察力がある】


 当てられた事に驚き、息を飲むNo.5。しかし、直ぐに元に戻る。

 恐らく……いや、確実にレイナ以外にも犠牲者は居るだろう。それこそ数え切れない程に。


 一体、どれたけの犠牲者を作り上げた?


【その通りだ。君の言う通り、人柱によって欠陥を克服……とまでは言わないが。まぁ、戦闘自体の支障は無い状態にまで持って行く事に成功した。勿論、深刻な後遺症も無くなった】


 さも、自分の手柄の様に話すNo.5

 しかし、随分とお喋りな野郎だ。だが、もう少し話しても良いだろう。


 レイナとタケルがどれだけ苦しんで来たのか分かるかも知れない。


「で?何をしやがった。レイナ以外にもクソみたいな実験でもやってた訳か?」

【簡単な事さ。脳に直接ダメージを受けてしまう。なら、別の脳にダメージを受けさせれば良い】

「……何?別の脳だと?」


 どう言う事だ?簡単に解釈するなら実験で犠牲者は大勢出たって事は分かるが。

 だが、俺の予想とは違い更なる残酷な結果が待っていた。


【ククク、現実から目を逸らしたいのかね?なら、教えて上げよう。私のコクピットの中には……優秀なパイロットの脳味噌が搭載されているのさ】

「……下衆野郎が」


 吐き気が出る話だ。つまり、俺が殺したNo.16、No.8だけで無く、追加で二人分の罪無き犠牲者を巻き込んだって訳か。


【素材なら沢山転がっている。この世界には弾かれた存在(ゴースト)が数え切れない程に居る。素材自体の入手にはそれ程苦労はしない】


 そして、此処でも活躍するのがゴースト。


 全く……本当に……最高に、クソったれな世界だ。


【だが、所詮はゴーストだ。短命な脳味噌が多くてね。最短だと一戦するだけで破棄する事にもなってしまう】


 No.5にとって……いや、QA・ザハロフにとってゴーストは体の良い消耗品なのだ。

 いや、この世界にとってゴーストの存在そのものが道端で転がってる石ころ同然なのだ。


【だが、パイロットとの相性は良いんだ。時々居るんだよ。ゴーストの中にも稀にパイロットをやっている奴が居る。その中でエースパイロットなら尚更良いんだ】

「パイロットなら正規市民からも使ってるんだろ?パイロットの比率と言えば正規市民の方が多いからな」

【その通りだ。無論、一番良いのはゴーストを使う事だがね。だが、残念ながらパイロットの質で言えば正規市民の方が高いのも事実さ】


 つまり、コイツらはリンク・ディバイス・システムと自分達の為に正規市民まで巻き込んでるって訳か。


 最初から最後まで胸糞悪い話で終わりそうだ。


【あぁ、どうしてこんな話をしたか気になるのかい?簡単な事さ……君も、僕が使ってあげるからさ】


 No.5から殺意が増す。どうやら、お喋りタイムは終わりらしい。


 そして、俺もそろそろ我慢の限界だ。


 俺も大概外道野郎だ。だが、コイツらだけは生かしておく訳には行かない。


 これ以上、レイナやタケルの様な存在を生み出す事は断じて許され無いのだ。


「結局、最後の最後まで人頼みじゃねえか。お前も、ナンバーズって奴も、実力も、全部全部借り物って訳か。情けない奴だ」

【へぇ……言うじゃ無いか】


 俺はNo.5に見切りを付けた。これ以上、雑魚と無駄話をする必要は無い。

 サッサとタケルを回収してトンズラするのが一番だ。


「お前みたいな半人前と俺が同じ場所に立ってると勘違いされるとな。こっちとしては良い迷惑なんだよ」


 俺は再び大型レールガンでカイブノヴァを狙う。無論、カイブノヴァも臨戦態勢を取り武装を構える。


「だがら、一言だけ言わせてくれ。今のお前、宇宙一ダセェよ。気取ってる態度が尚更拍車を掛けてるぜ」

【挑発のつもりかい?生憎だが、僕は君と違って選ばれた存在だ。その減らず口を聞けるのも今の内だけさ】


 そして一気に距離を詰めるカイブノヴァ。

 俺は距離を保たせる為に240ミリキャノン砲と大型レールガンを交互に撃つ。


「挑発?違うな。これは事実だよ。お前は一人じゃ何も出来ない。虚勢張ってるだけのカス野郎だよ」

【……言うじゃ無いか。なら、君を僕の力で叩き潰してやろう】

「なら、一人でリンク・ディバイス・システムを使ってみな。誰かの介護が無いと戦えない出来損ない君」


 流石のNo.5も今の台詞は中々に応えたのだろう。

 一気に攻撃密度が上がったのは妙にウケるぜ。


【前言撤回だ。君は僕が殺す。何も残したりはしない!】

「やってみな!一人で戦えない出来損ない野郎!」


 そして一気に空へと舞い機動戦へと移るのだった。




 No.5の実力は本物だ。

 ビームマシンガンと左肩の八連装ロケットポッドで牽制をしながら、右肩のビームキャノン砲で確実に攻めて来る。

 更に此方の240ミリキャノン砲は大型シールドで防いで来る始末だ。


「チィッ!速い癖に手堅いぜ!」


 ギフトで先読みしながら大型レールガンを撃つが、ギリギリの所で回避されてしまう。


【口程にも無い。アレだけ挑発しておきながら、その程度とはね】


 ビームマシンガンと八連装ロケットポッドから大量の弾幕が迫る。

 無論、簡単に被弾するつもりは無い。機体を左に一気に回避させながら240ミリキャノン砲で反撃する。


【どうやら、君の機体は左側しか満足に回避出来無いみたいだね。まぁ、先程の戦闘から分かっていた事だが】

「だったら何だ?回避出来てる時点で何一つとして問題無いぜ」


 この時、No.5は既に勝ちを確信していた。

 何故なら、目の前のAWは大型レールガンに固執していたからだ。

 あの大型レールガンはNo.9が使用していた。その武装でナンバーズを殺す事。


(フッ……馬鹿な奴だ。そんな見え見えの攻撃が僕に当たる訳が無い)


 無論、毎度ギリギリの回避になるのは少々疑問ではある。

 だが、回避先に狙い撃つなら更に回避すれば良いだけの話だ。


 それを可能としているのがリンク・ディバイス・システムなのだから。


【さて、そろそろ終わらせよう。名も知らぬパイロットよ】


 再びビームマシンガンで狙われる。此方も240ミリキャノン砲で反撃するが、カイブノヴァの武器とは相性が悪過ぎた。


 結果として右脚部にビームキャノン砲が直撃してしまう。


「警告、右脚部被弾。推力低下します」

「ッ⁉︎一度着地するぞ!」


 ブラッドアークを地面に着陸させる。しかし、上空からはカイブノヴァが更に攻撃をして来る。

 ビームマシンガンと八連装ロケットポッドから大量の弾幕が迫り来る。

 回避するが機動力が低下したブラッドアークには少々厳しいモノがある。


【その大型レールガンさえ無ければ僕に勝てたかも知れないね。だが、その産廃を選んだのは君自身だ】


 決して距離を詰めようとしないNo.5。

 どうやら、堅実で確実な勝ち方で終わらせるつもりらしい。


「浪漫を理解出来ねぇとはな。だから……お前はカス野郎なんだよ。ネロ、リミッター解除」

「了解。リミッター解除します」


 ブラッドアークのリミッター解除。

 本来ならブラッドアークにリミッター解除は必要無い。既に充分な機動性と運動性を持っているからだ。


 だから、リミッター解除すると言う事は相手がそれ以上だと言う事の証明なのだ。


「行くぞ、ネロ。これで決めるぞ」

「了解です。マスターなら勝てます」


 俺は操縦レバーを前に突き出し、ペダルを一気に踏み込む。

 すると規定以上のエネルギーを受けたブースターは破壊的な加速を生み出し、カイブノヴァに一気に迫る。


【ッ⁉︎自殺行為にも程がある!】


 デタラメな加速で一気に間合いを詰めて来るブラッドアーク。

 同時にその加速はパイロットに多大な負荷を与える事を理解した。


 それこそ、死んでしまう可能性が高い程に。


 だからNo.5は再び距離を取る様に上空へ舞い上がる。そしてビームマシンガン、八連装ロケットポッド、ビームキャノン砲で確実に狙う。


【その加速では満足な操縦など出来まい!】


 そして確実にブラッドアークを仕留める為に攻撃をする。


 しかし、当たらない。


 最低限の回避だけで一気に間合いを詰めて来るブラッドアーク。


「その程度の弾幕!マザーシップより圧倒的に生温いんだよ!」


 マザーシップ戦でABブースターを使用した吶喊作戦。様々な方向からの弾幕を潜り抜けて、N弾の投下を成功させた程の実力。


 シュウ・キサラギが一番本領発揮する戦場が絶望的な状況からの逆転。


 追い詰められれば追い詰められる程に一筋の勝利へ突き進む。


 生に対する執着心が誰よりも強いのだ。


 紙一重で弾幕を回避するブラッドアーク。

 そして、大型レールガンで狙われるのと同時に勝ちを確信するNo.5。


 相手がエースパイロットであろうとも、使ってる武装が産廃なら意味は無いのだ。


【君がどんな距離でレールガンを撃とうが意味は無い!僕が勝つのは決定事項だ!】


 大型レールガンから攻撃が放たれた。だからNo.5は回避した。


 だが、次の瞬間にはブラッドアークは大型レールガンを手放していた。


 代わりにプラズマサーベルが展開されていたのだ。


(まだ距離はある。なら、今こそ切り札を使う時だ)


 そう判断したNo.5は大型シールドを構えながら腹部に搭載されているプラズマ砲を展開。

 迫り来るブラッドアークに向けて腹部プラズマ砲で狙う。


【今度こそ終わりだ!死ぬと良い!】


 近距離に入ったのと同時に大型シールドで隠していた腹部プラズマ砲を見せる。


 この距離なら命中するのは確実。


 そう確信してNo.5はブラッドアークを捕捉したままトリガーを引く。


 高い威力を誇る腹部プラズマ砲。


 その圧倒的火力は大半のAWを破壊出来る威力を持つ。


 距離が離れれば命中率は途端に悪くなるが、不意打ちでの切り札としてなら有効な武装。


 だが、相手が悪過ぎた。


 三秒先を見る事が出来るギフト。


 限定的である筈のギフトを有効活用する男。




 それが、シュウ・キサラギと言うエースパイロットなのだ。




「その攻撃は……()()()()()()‼︎‼︎‼︎」


 カイブノヴァの腹部プラズマ砲の攻撃を右に回避する。

 潜在的に左に回避すると思っていたNo.5はほんの一瞬だけ反応が遅れてしまう。


 そして、そのほんの一瞬が勝敗を決めた。


 ギリギリの回避によりブラッドアークの胸部装甲は融解して行く。


 だが、ブラッドアークは止まらない。


【ッ⁉︎そんな馬鹿なッ⁉︎うわああああ⁉︎⁉︎⁉︎】


 交差した瞬間にカイブノヴァの脚部がプラズマサーベルによって斬り裂かれる。

 そして、バランスを崩したカイブノヴァは地面に向けて墜落してしまう。

 地面に叩きつけられる様に着地するカイブノヴァ。雪が舞い辺りの視界が悪くなる。


【クウウゥゥゥ……やってくれたね。だけど、まだ僕は死んではいない。火力は生きている!僕は戦える!】

「……いや、チェックメイトだ」


 その言葉と同時に背筋が凍ったNo.5。

 レーダーを確認すると、直ぐ後ろにブラッドアークの反応がある。


 恐る恐ると言った感じで後ろを見るNo.5。


 そして、彼の目に入ったのは大型レールガンを至近距離で突き付けているブラッドアークの姿だった。


【負けた……のか。僕は】


 認めたく無い敗北。そして、同時に死ぬ事が決まった運命。

 まさか、リンク・ディバイス・システムを持たない者に負けるとは思わなかった。

 何百、何千と言う犠牲者の上に完成したリンク・ディバイス・システム。その存在意義を証明するのがナンバーズの使命。


 しかし、現実は本物のエースパイロットには敵わなかった。


【ならば……最後の最後は潔く散るべきか】


 No.5は素直に負けを認め、大型レールガンを構えるブラッドアークを見つめる。


【最後に、一つ良いかな?君の名前は?】

「あの世で他の奴に聞けよ。きっと教えてくれるさ」


 大型レールガンの機関部にエネルギーが溜まる。


 その光景を目にした瞬間にNo.5は死を受け入れる。


 大型レールガンの弾頭がカイブノヴァの背中に直撃して貫通する。


 そして、僅かに動きを止めた瞬間にカイブノヴァとNo.5は爆発と共に散って逝くのだった。

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