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サキュバスの館4

【保安部隊の方も手回しは出来た。後はやるだけだ】


 通信を聞き目を閉じる狼男。

 この時を待っていた。忌々しいアウターシティで腐っている連中と同列扱いされる屈辱を耐え続けて来た。

 何もせず、物乞いだけでその日を乗り切ろうとする屑共。

 強い奴に媚びへつらいながら隙を窺う能無し共。

 戦う事もせず、逃げ惑う役立たず共。


 失敗は許されない。


 使える物は全て使い切った。


 オレは絶対に成り上がってみせる。


 アウターシティ(掃溜め)では無く、サキュバスの館でな。


 オレの力を存分に発揮すれば容易な事だ!


「やっとか。まぁ、良い。此方も準備は済んでいる」

【では、各セクションの扉を開ける。此方としては派手に暴れて注意を惹いて貰えれば結構だ】

「安心しろ。鬱憤が溜まってる連中ばかりだ。放って置いても問題無い」


 そして通信が切れる。オレは葉巻に火を付けて一息吸う。


「これで、オレは前に進める。こんな腐った場所とはおさらばだ」


 必要なクレジットを大量に持ちながらオレはサキュバスの館へ繋がる扉へと向かう。


 通信相手が何を目的にしてるか知った事では無い。


 オレは再びサキュバスの館へ舞い戻る。


 信用出来る仲間数人を引き連れて行く。


「派手に鬱憤を晴らすと良いぜ。どうせ、それがお前達の人生最後の快楽になるだろうからな」


 序でに無能や役立たず共を大量に処理出来る。ある意味アウターシティも一時的だが少しは治安が良くなるかも知れんな。


 何せ、自分達から死にに行くと思って無い連中ばかりだからな。






 二週間のバカンスはあっという間に終わりが近づいてしまった。

 結局、あの後はキサラギ偽と取り巻き達は非常に疲れた表情をしながら別れた。

 まぁ、奴等の金で飲み食い出来たし。俺の自慢話もコレでもかと言わんばかりに聞かせてやったからな!

 女の子達には結構ウケは良かったんだがな。


 それからネロと合流してAW、MWの闘技場に行って賭け事をしたり、サキュバスの館の観光スポットや多種族の文化や文明に触れたりした。


「いやー、何て言えば良いかな。一種の社会見学ツアーみたいだったな」

「しかし、マスターは楽しめたので良かったと感じます」

「そうかもな。流石にあのイモ虫が今まで食べてきた料理の中で一番美味かったのは地味にショックだったけどな」


 見た目は中々グロかったんだが。一匹食べたらマジで止まらなかったなぁ。

 あのイモ虫食べるシーンには『見せられないよ』のテロップが出てたくらいに食べまくったからな。


「まぁ、サキュバスの館特有のサービスも受けれたし。気分も腰周りもスッキリってな!」

「私もテクニックを幾つか伝授させて貰いました。実に有意義なバカンスでありました」

「そっかー、伝授して貰ったかー。これから暫くは、お楽しみが増えて良い事だな!」

「お任せ下さい。誠心誠意込めて務めさせて頂きます」


 しかし、中々刺激的な出会いもあった。

 同郷の連中が今も生きてる事や俺にそっくりな奴も居たし。

 聞けば奴は整形はしてないらしい。天然で俺に似ていたとか。


(まぁ、天然だったらいっかなー。取り敢えず恥ずかしい真似はするなとは言っといたが)


 天然で俺に似ているとか。この広い宇宙で出会う確率なんて天文学的にどのくらいだろうか。

 まぁ、天然なら仕方ないと言う訳で。今回は見逃す事にした。

 後は連中の好きにすれば良いだろう。今回は偶々俺と居合わせただけだし。

 派手な悪事をして俺の名前を使わなければ好きにすれば良い。


「今更、聖人振るつもりはねぇからな」


 傭兵やってれば色んな奴から恨まれる。もしかしたら偽者君がヘイト集めてくれるかも知れないからな。


「ま、デコイには丁度良さそうだし」


 結局、自分さえ良ければ後は何とでもなれば良い。

 大抵の連中は自分中心で生きてる物だからな。


「いやー、しかし。平和な場所だねぇ。働き口も有れば、衣食住も揃ってる。真面目な奴は安パイな生活を送れそうだな」


 少し高い場所から街並みを眺める。

 綺麗な道に身嗜みが整った人々。活気もあるし、笑顔も沢山溢れている。

 中心部に行けば別の面が見れるだろう。だけど、俺には外側の生命力のある活気の方が好みだ。


 穏やかな気持ち平和な街並みを眺めていると遠くで爆発が起きた。そして轟音と警報が鳴り響く。


 人々は何事かと思い立ち止まるか、危機管理の高い奴はサッサとシェルターか建物の中に入って行く。


「……お祭りって訳じゃ無さそうだな」


 更に銃声や悲鳴、下品な笑い声も聞こえて来た。


「マスター、此処は危険です。直ちに離脱する事を推奨します」

「そうだな。だが、一箇所だけ寄りたい場所がある」


 せめて、同郷の連中がシェルターに避難出来る所までは見届けてやりたい。


(壁際の街中にどれだけのシェルターがあるか分からんが)


 俺はマグナムを取り出し弾丸を確認した後に、ネロを連れて走り出すのだった。






 何て事の無い日常になる筈だった。

 アウターシティに近い壁際の街の治安は良いとは言えない。アウターシティの連中がどうやってあの分厚い壁を抜けて、此方側に接触しているのか。

 サキュバスの館では区画で分けられている。


 富豪や大企業は中心部。

 富裕層から一般市民が第二層。

 夜の街の役割は第三層。


 大体、こんな感じに分けられている。

 無論、夜の街となればマフィアの連中が仕切ったりもしている。だが、サキュバスの館ではトップの方達が殆どの店を仕切っているのだ。

 とは言え、第三層の治安は悪い事に変わりは無い。夜の街の代名詞となっている第三層では、夜になると若者や不審者達が良く現れるのだ。


 同時にアウターシティの連中も動き出す。


 俺達は第三層を、アウターシティの魔の手から守る立場にいる。

 警備部隊に入ってから早くも三年が経った。未だに大きな事件は起きる事は無く、喧嘩の仲裁や酔っ払いの介抱をするのが俺達の日常だ。


「此方パトロール25、定時報告異常無し」

『了解した。次は隣の区画に行ってくれ』

「了解。これより向かいます」


 第85警備支部と通信を終えて相方に合図を送り車を動かす。


「何だか、この辺りも入り組んで来たな」

「そうだな。人口密度が高いからな。拡張スペースが限られてるのに新規が良く来るのも理由の一つさ」

「まぁ、俺に言わせればアウターシティよりはマシなんだろうけどな」


 警備部隊はアウターシティには行かない。

 あそこは完全に見捨てられた場所だ。この懐の深いサキュバスの館でも順応出来なかった連中が最後に行き着く場所。


 しかし、アウターシティでは死体は殆ど出て来る事は無い。

 誰かに殺されて処分されるか、家畜の餌になるか。

 違法な臓器売買の商品になるか、食人に喰われるか。


 アウターシティに行けば安らかな死とは無縁となるのは確実と言えるだろう。



『警備支部よりパトロール25、26、28へ。壁側から物音がすると多数の通報があった。至急、指定座標へ向かって確認して下さい』

「此方、パトロール25了解。全く、迷惑な連中だぜ」

「だな。大人しく引っ込んでれば良い物を」


 壁際からの騒音なら、アウターシティの連中がお祭り騒ぎでも起こしているのだろう。

 指定座標へ向かう道中は気楽な物だ。大体、あの壁は壊れた事は無いし、扉も設備点検の時に開くくらいだ。

 その扉も開く時には保安部隊のAW、MW部隊が配置されるから安心だ。


 そんな時だ。爆発音が聞こえたのは。それも、一つ二つでは無い。幾つもの爆発音と銃声が鳴り響き、悲鳴が聞こえる。


「何だ?暴動でも起きたか?」

「分からん。分からんが、取り敢えず近場まで行くぞ」


 せめて状況だけでも把握する必要がある。車で指定座標に急行する。


 暴動の予想は半分当たっていた。


 だが、アウターシティに繋がる扉が開いていた事は想定外だった。


 武装した暴徒共が銃を乱射しながら街中に入って行く。

 非武装の民間人は悲鳴を上げながら逃げ惑う。逆に武器を持つ民間人は僅かに抵抗を試みるものの、武器の差によって直ぐに殺されてしまう。


「な、何で扉が!」

「馬鹿野郎!ボサっとするな!至急、警備支部に連絡しろ!」


 相方が慌てて車を後退させる。しかし、暴徒共は此方を指差して銃口を向けて撃って来る。


「警備支部!警備支部!聴こえるか!此方パトロール25!アウターシティに繋がる扉が開いてる!至急応援を求む!」

『此方警備支部。その情報は本当か?』

「銃撃戦まで始まってる!いや、唯の虐殺だ!民間人が狙われてッ⁉︎うわっ⁉︎」


 銃撃が激しくなり銃弾が車のバンパーやフロントガラスに当たりヒビが入る。

 安全の為、頭を伏せながら後退していた。周辺モニターを確認しながら後退していたが、突っ込んで来たトラックと衝突。

 車の動きを封じられてしまう。


「畜生!銃を持て!車から降りるぞ!急げ!」


 LM-885アサルトライフルを持ち外に出る。

 車の後方に周りトランクを開けて防弾ヘルメットと識別センサーを装備。

 それから予備の弾倉も持ち銃を構える。


「攻撃を受けている!至急応援を!」

『現在、応援を派遣中。パトロール26、28はパトロール25の援護を』


 だが、暴動の発生は一箇所だけでは無かった。

 他の扉も次々と開いて行き、アウターシティの住人達が自由と娯楽を求めて次々と街中に侵入して行く。


「クソッ!数が多過ぎる!アウターシティの連中め!どうやって扉を開けたんだ!」

「知るか!兎に角撃て!市民を一人でも……嘘だろ?PS(パワードスーツ)だと?」


 地味にセンスが良い髑髏マークやカラーリング。その見た目に合う様な重厚な装甲に重火器。

 そして、重火器の銃口が此方を向く。


「ッ⁉︎逃げろおおおお‼︎」


 慌てて逃げた瞬間、車はあっという間に穴だらけになってしまう。その後、車は爆発して派手に吹っ飛んでしまう。


【へへへ、この場所なら何でも手に入るのと同じでな。アウターシティでも同じ事なんだよ。野郎共!この場所は今日から俺達ファイヤーフライが貰うぜ!】

【【【【【うおおおおおお‼︎‼︎‼︎】】】】】


 重火器を上に向けて乱射するファイヤーフライのPS集団。更に奥からは作業用MWを改造し武装した機体が現れるのだった。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 闘技場の話を見てみたいですね [一言] 節子「なんでホタルすぐ死んでしまうん?」
[一言] なるほどwww飛んで火にいる夏の虫ってことか⁉︎ファイヤーフライw
[良い点] >食人に喰われるか。 おっ、おう。宇宙は広いもんな。 [気になる点] テロリストの名前がクッソ弱そう。 ファイヤーフライ……ん?飛ぶ虫、火? [一言] 偽物と遭遇したのはむしろ面白いなと…
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