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美女美少女の特権

 ビームマシンガンの弾幕を回避しアサルトライフルで反撃する。勿論その間は回避機動を止める訳には行かない。寧ろジャンの方に近付いた方がまだマシな状況になる。


「尤も向こうは想定内だろうけどな」

【行けよビットォ!これを全て避けれるか!】

「避けなきゃ俺が死ぬだろうが」

【ハッハッハッ!確かにな。なら避けてみな!】


 ビットが上下左右から此方に弾丸を放つ。機体を加速させスパイダーに向けて突っ込む。


「後ろからか。嫌な攻撃してくるな」


 ビットからの一斉射撃からワンテンポ遅れた攻撃が来る。実に嫌らしい戦い方だ。


【今のを避けるか。やっぱりテメェも何かギフト持ってんな】

「さてな。俺は運が良いんだよ」

【抜かせ!】


 スパイダーはビームマシンガンを撃ちながら此方に向けて突っ込んで来る。それは好都合なので挑発する様にアサルトライフルで反撃する。


【やっぱ戦いはこうでなくっちゃな!】


 プラズマサーベルを抜き斬り掛かる。此方もサーベルを抜き対処しながら先を視ながら尚且つ隙を突く様にサーベルを振るう。


「こんな感じになあ!」

【何⁉︎】


 僅かな隙間を縫う様にサーベルを突き出す。だがスパイダーの背後からビットが一つ飛び出しサーベルを受け止めてしまう。


【まさか保険をこうも簡単に使う事になるとはな。面白え……面白えよ!】

「ヤベ。変なスイッチ押したかも」


 更にテンションが上がったのかビットの攻撃が激しさを増す。スパイダーとの距離を取られない様に必死に食い付くが如何せん性能差があり過ぎた。

 距離をあっという間に取られたのと同時にビットから止めどなく攻撃される。回避機動を取るが健闘虚しく機体の色んな所から被弾メッセージが表示される。


「この前新調したばっかりだってのに」


 新調したてのサラガンがボロボロになりつい愚痴ってしまう。

 因みにこのサラガンは前回ユニオンの施設防衛の際に盗んだ……もとい頂いた……どっちも変わんねえか。マドックと輸送機を闇市で物々交換した機体だ。普段なら闇市に流れる事のない新規ユニットのAWが偶々流れ着いたとか。

 大方何処かの大企業の輸送機が宇宙へと漂流したのだろう。そしてスカベンジャーが拾って闇市に流したオチさ。


「シートのビニールだって人生初で破ったくらいの機体なんだぞ」

「ご愁傷様ですマスター。それから機体ダメージが深刻です。また推進剤も底を尽き掛けてます。直ちに離脱して下さい」

「離脱を許してくれる相手ならそうしてるんだけどな」


 そうこうしてる間にビットが多数俺を囲む。そして一気にスパイダーが突っ込んで来てプラズマサーベルを再び振るう。


【終わりだぜ。ラッキーボーイ!】


 プラズマサーベルがコクピットに向けて突き出される。そして三秒先を視ながらタイミングを見計らう。


「今だ!」


 左脚で突き出された右腕を蹴飛ばす。プラズマサーベルはコクピットより左上の装甲を貫く。そして45ミリアサルトライフルをスパイダーのコクピットに当てる。

 この瞬間お互いの動きが止まる。此方はプラズマサーベルが刺さってるから少しコクピットに向けて動かされたら死ぬだろう。だが向こうもゼロ距離からの45ミリアサルトライフルの貫通力を防げるか怪しい所だろう。いくら新鋭機と言えども耐えれるか疑問がある。


【お前……何のギフト持ってんだ?】

「運が良いんだよ」

【抜かせ】


 暫く睨み合いが続く。だがそれも直ぐに終わる。


【ギュール大佐、セクタルの基地が制圧されました。これ以上の戦闘は意味が有りません】

【何?もう落ちたのか。仕方ねえ撤退するぞ。おいジェーン聞いてたか。撤退するぞ】

【聞こえてるわ。それより向こうの機体が可哀想だわ。あんなに良い機体なのに全然使いこなされてないもの】

【だから雑魚相手を任せたんだよ】

【そっちはどうなの?】

【引き分けだ】


 そう言うとジャンのスパイダーはプラズマサーベルとビットを収納し離脱する。勿論追撃なんて出来る筈もなく見送るしかない。


【キサラギ、今いる場所に飽きたらいつでもウチに来い。好待遇で歓迎するぜ。それまで死ぬんじゃねえぞ】

「考えとくわ。じゃあな」


 遠くなって行くスパイダーを手で作った銃で狙う。


「バン」


 すると少しだけスパイダーが避けた様な動きをするのだった。






 ジャンとの戦闘後クリスティーナ大尉が此方に来て機体を引っ張ってくれた。尤も何時もの口煩さは鳴りを潜め静かなものだったが。


「相棒、お前の力はしっかり確認出来た。これから色々負担を掛けるが頼むぜ」

「ご安心下さい。私はType-Fromが作り出した戦闘補助AIです。必ずご期待に添えてみせます」

「そうか。頼もしい言葉を聞けて安心出来るよ」

「それはそうと回転させるのを止めて下さい」

「えー。だってー、暇なんだもーん」


 ネロをこれでもかと言わんばかりに高速回転させる。もし俺がネロの立場なら即日相棒解散宣言するけどな。


「それにしてもデルタセイバーに損傷らしいのが見当たらねえな」

「原因は不明です。しかし被弾時にシールドが瞬時に展開されていたのは確認してます」

「どうせパイロットの感情に反応する不思議装置でも使ってるんだろ。後はパイロットとの同調率が無駄に良いんだろう」


 デルタセイバーに比べて俺のサラガンの損傷は中々酷いものだ。

 左腕と右脚は大破。更に胴体や背中にも被弾している。また一部スラスターが動かなくなっていたし。更にプラズマジェネレーターの調子が非常に悪いと来た。

 どのくらい悪いかと言うと、カカア天下なのにカカアの機嫌がクソ悪いって感じだ。


「要はスクラップ手前なんだがな」

「恐らくプラズマジェネレーターの本来の想定以上の負荷が掛かった結果かと」

「んな事知ってるよ。そうでもしねえと生き残れ無かったし」


 結局安物AWではブランドAWに勝てねえってだけの話だ。勿論サラガンが悪い訳では無い。発売当初から現在まで色々とアップグレードを受けて現役で使われてる傑作機だ。現に辺境惑星ならサラガンやマドックで充分だし。


「偶々相手が悪かっただけの話さ」

「それでもマスターはスパイダー相手に善戦以上の戦いをしました」

「何だ?俺を慰めようとしてんのか?」

「事実です。スーパーエース」

「そいつは止めろって」


 俺はネロの回転を止めて一緒にモニターから見える景色を見る。今は戦闘は無く静かな宇宙が広がってる。いや宇宙は元から静かな物だ。それを俺達の様な存在がコクピットとヘルメットに立体音響システムを組み込んでるだけだ。


「それにしても死ななくて良かったぜ。ぶっちゃけ何度死ぬビジョンが視えた事やら」

「マスターが無事でネロも嬉しく思います」

「それに沢山のオカズが貰えるからな。意地でも生きて帰らないと駄目だったし」

『キサラギ軍曹、一つ聞いても良いかしら?』


 今まで静かだったクリスティーナ大尉が話し掛けてくる。先程から非常に落ち込んでた様子だが無視してた。態々気にしても仕方ないと思ってたからだ。


「何でしょうか大尉殿?」

『貴方は……怖くはないの?』


 果たしてこのエルフはどんな答えを求めているのか。戦場に出て怖くない訳がない。そんな当たり前の事が聞きたいのだろうか?唯、態々真剣に答える必要は無いだろう。

 大体俺はこのクリスティーナ大尉殿に対する印象は面倒くさいとしか感じてない。


「それは戦場に出る事がですかな?」

『それもあるわ。けど一番気になってるのは強敵相手に何故戦えるかよ』

「それが仕事ですから。何分自分は傭兵の身ですので」

『そうじゃない。そうじゃないのよ!何故命懸けで戦えるか聞いてるのよ!機体だけじゃない。腕前だって違い過ぎる相手に……』


 質問しておきながら顔を俯かせてしまうクリスティーナ大尉。仕方ないので少しだけ優しい言い方で話掛ける。


「それでも戦わなければならない時はあります。それが先程の戦闘だっただけです」

『……それはクレジットの為?』

「いえ違います」


 俺が否定すると顔を上げて此方に視線を向けるクリスティーナ大尉。僅かに不安に揺れながらも綺麗な蒼い瞳を見ながら言う。


「貴女を助けてくれとファング隊の連中に言われたからです。良かったですね仲間思いの部下が居てくれて」

『そんな事で命を懸けたの?』

「そんな事とは部下達に失礼ですよ。それに美人がピンチの時はイケメンヒーローが現れるもんです。大尉殿が美人で良かったですね。お陰でイケメンヒーローが颯爽と現れて生き残る事が出来んですから」

『……』


 再び沈黙するクリスティーナ大尉。しかし俺のジョークにちっとも反応しないのが少し悲しい。


「これに懲りたら部下達との連携をお勧めしますよ。そうすれば生き残れる可能性は上がりますから」


 そう言い残しシートに身を沈め目を閉じる。仄かに新品のシートの香りを感じながら。

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