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相棒

誤字報告、感想などありがとうございます(^^)

色々助かってます(´Д` )イェァ♪

 ネロは思考の中にいた。何故マスターと呼ぶ存在は仲間と呼ぶ存在に対し暴言を言ったのか。暴言を言った後で戦場に出るのは非常にリスクの高い。味方からの援護が受けられなくなる可能性が高くなってしまう。

 だがマスターと呼ぶ存在は全くと言って良い程気にしてない。それどころか今も戦場を駆けている。自分自身の補助が無い状態なのに。


「いよっしゃあああ!また一機撃墜!大分慣れて来たからな。此処から一気に巻き返すぜ」


 マスターと呼ぶ存在は殆どの操作をマニュアルでおこなっていた。敵戦闘機マッキヘッドを一度パスして背後から45ミリを撃ち込み撃破する。

 見事なものだがマニュアル操作で動かす事自体に無駄が生じる。お陰でネロの想定以上に推進剤を消耗している。


「随分とこっちに来てくれるじゃないのさ。俺の本当のモテ期はいつ来るだよ。ちっとも美女美少女にモテる気配がねえじゃねえか!」

【んな事知るかあああ⁉︎】

【マークス3が踏み台にされて墜ちた】

【生きてるから問題ねえよ。それより此奴どんどん動きが良くなって来やがる。最初はバランサーがイカれてると思ってたのに】


 だがマスターの動きには少しずつ無駄が無くなってる。勿論自分が補助した方が何百倍も良いのは間違いないが。


「畜生!俺がモテないのは全部テメェらの所為だ!覚悟しろや!」

【ふ、巫山戯んな!テメェが不細工な面してるからだろうが!】

【どうせ性格もクソ以下なんだろう?頑張れよ傭兵の兄ちゃん】

「誰だ!俺をブサ面言った奴!機体と一緒に逝かせてやらあ!」


 此処までの操縦技術がありながら何故敵とオープン通信をするのか。多分無駄に敵に対抗してるんだと結論を出す。それでも解らない事がある。その解らないのは…


『トリガー5!おいクソガキ!こっちに戻れ!援護出来んだろうが!』

『個人プレイにも程がある』

『僕は狙撃タイプなのでギリギリ援護出来ますが。彼処まで敵と接近し過ぎると下手に撃てません』

『何やってるのよ。私達も暇じゃないのよ』

「悪い悪い。援護は出来る時にやってくれっとな!ほらもう一機!」



 何故態々味方からの援護を受けられない場所で戦闘しているのか。それが一番理解不能だ。







 殆どの操作をマニュアル操作で行い戦闘をするのは忙しい。正直まともに戦ってられないのが本音だ。一度帰艦してサラガンのシステムを戻してから再出撃した方が良いのではないか。


(もう充分戦ってる。これ以上は無理だ。引き下がって良いと思うんだ)


 機体をバレルロールさせながら敵マドックの横に付き250ミリキャノン砲を至近距離から撃つ。敵マドックは咄嗟にシールドを構えるが防ぐ事が出来ず吹っ飛んで行く。


「250の残弾一か。ミサイルも少ねえし。無駄弾使い過ぎたか」


 更に敵マッキヘッドの編隊が此方に襲い掛かるがANBACを行いブーストを全開にして急停止する。敵マッキヘッドは俺に追従出来ず横を通り過ぎてブースト全開で逃げる。勿論逃す理由は無いので背後から遠慮無く45ミリを撃ち込む。


「大分抜けられてるな。トリガー1そっちはどうだ?」

『それなりの数を捌いたぜ。抜けた連中もエルフ共の直掩機と対空砲で満足に攻撃出来てねえな』

「そいつはご苦労さんなこって」

『だがまだセクタルの艦がまだ何隻か残ってる。もう少し墜とさねえと陸戦隊が射的の的になる』

『でも敵機の数は大分減ってる。そろそろ陸戦隊が来る筈よ』

『いや、まだ無理だ。此方のレーダーにワープ反応有り』


 そろそろ陸戦隊の突入の頃合いだと予想していたが、どうやら敵さんはまだまだ戦う意思は高いらしい。


「何処からだ?まさかこっちに来るって事は無いよな。もし来たら補給しに一度帰艦するわ」

『巫山戯んなクソガキ。トリガー4何処から来る』

『反応は味方艦隊より三時方向。数は多い』

「なら俺はこの場を死守する。任せてくれ」

『アンタ一人に任せられ無いわよ。それに本隊からの連絡はまだ無いわ』

『その様ですね。ですがいつ来ても可笑しくは』


 その時通信が入る。どうやら次の段階に進む様だ。


「噂をすれば何とやらだな」

『各ユニットに通達する。これより敵宇宙基地に陸戦隊を投入する。陸戦隊の護衛を行え。また直掩機の半数も護衛に就かせる』

「おいおい。それやったら今から来る敵の艦載機にどうやって対処すんだよ」


 頭の硬い作戦に目眩がしそうになる。だが無謀な手段にも理由はある。


『代わりにファング中隊は直ちに艦隊防衛に戻れ。以上だ』

『ファング隊っつったら、あの気の強い大尉の部隊か。確か、かなりの高性能機が居たな』

『そうね。なら私達は与えられた任務をこなしましょう』

『異議なし』

『僕も問題ありません。少なくとも僕達のルートは敵艦隊をもう少し処理出来れば大丈夫でしょう』

『なら決まりだ。トリガー4、味方のどの巡洋艦にでも良い。援護射撃を要請しろ。お前さんの機体の方が通信機能は良いからな』

『了解した。暫し待て』


 それから少しの間に機体チェックをする。相変わらず戦闘システムと制御システムがエラー状態。他の部分にもマニュアル操作の弊害で徐々にエラーが増えている。


「人生てのは儘ならないと言うが本当らしい」

「……マスター、宜しいでしょうか?」

「あー、後にし……あれ?ネロ再稼働したんか。無理すんなよ。俺は一人でもそれなりに戦えるからな」


 ネロが目覚めたのとほぼ同時に陸戦隊を乗せた輸送艇が十五隻現れる。此方のルートに来るのは七隻。そして輸送艇が進行ルートに入ったのと同時に敵艦隊がワープして来た。

 だが敵艦隊の編成は宙族やセクタルの様な貧相な艦隊では無かった。敵艦隊の旗艦と思われる巡洋艦は少々型遅れだが、駆逐艦やフリゲート艦に関しては現役艦だったのだ。そしてどの艦船にも惑星ダムラカのエンブレムマークが付いていた。


【敵艦隊の左を取れました。砲撃来ます!】

【ジャミング装置起動。同時に艦載機発進せよ】

【艦載機発進と同時に対ビーム撹乱ミサイル、チャフミサイルを発射。味方の突入路の援護せよ】

【艦隊前進。砲撃可能距離まで詰めるぞ。味方のAWの援護を最優先だ】

【おい傭兵共。貴様らには高い金を払ってる。その分の働きはして貰うぞ】


 敵艦隊から多数のAWが射出される。それと同時にミサイルも多数発射され援護する。


【アッハッハッ!最近歯応えの無いつまんねえ奴ばっかりが相手だったからな。久々に楽しませて貰うぜ!】

【そうねぇ。でも私的には楽して儲けの大きい仕事の方が好きなんだけど】

【ゲリラと貧相な反政府軍相手に何しろってんだよ。雑魚の相手は下っ端の役割だ。それより行くぜ。お前ら気張れよ!こんな少ねえ弾幕に当たんじゃねえぞ!】

【【【【【了解!】】】】】


 シルバーに輝く機体に両肩に追加ブースターらしき装備し右手にビームマシンガンを持つ軍用機YZD-23スパイダーとホワイトとパープルのツートンカラーの同機で右手にビームガンを持ち両肩に散弾砲を装備していた。

 更にその二機に追従する傭兵部隊のサラガンやマドックも様々なカラーリングや武装を持ち躊躇無くエルフ艦隊に突入して行く。

 無論セシリア大佐も敵増援に対し直ぐさま対応する。だが陸戦隊の突入を第一優先とし行動を開始する。


「敵AW部隊接近。直掩機は迎撃に向かえ」

「各砲座敵AWに対し攻撃開始」

「デルタセイバー及びファング隊が現在急行中。敵AWとの接触まで残り三分」

「巡洋艦レオニード、ダガー、エルマン、直掩機と共に前進開始」

「これは……艦長、敵艦隊の中に傭兵ギルド所属の戦艦【ガーディ】を確認。更に敵AWの発艦を確認」

「直ちにガーディ所属の傭兵とAWを調べろ」

「間も無く味方AW隊と交戦に入ります」


 直掩部隊となるAW隊はビームキャノンでの先制攻撃を仕掛ける。そのビームにより何機かの敵AWを撃破する。


【ひょう!中々やるねぇ。この距離から撃てるビームキャノンは良いね。一つくらいは鹵獲してえな。そう思うだろジェーン?】

【どっちでも良いわ。それよりジャン、今の私はスパイダーちゃんに夢中なの。分かるわよね】

【ならやりますか】


 二機のスパイダーは一気に加速し味方AW隊との距離を縮める。


【ほらほら今度はこっちのターンだ。受け取れよ!ビット!】

【さあさあスパイダーちゃんの動きは生半可じゃないわよ。アンタ達の機体で追い付けるかしら】


 シルバーのスパイダーから両肩の装備が外れ前方に射出。そして中から小型のビットが多数現れる。それと同時に二機のスパイダーは交戦を開始する。


『不味い距離を取るんだ。各機背中合わせで迎撃し』

【無駄だあああ‼︎】

『しまっ⁉︎被弾した被弾しうわ⁉︎』

『奴はギフト持ちだ!こんな数のビットを扱えるなんて人間技では無いぞ!』

【あらビットだけに目線を行くなんて失礼ね】

『火が、中に来て⁉︎』


 ジャンのスパイダーはビットと共に数機のAWを圧倒。その隙にジェーンのスパイダーが一気に近距離まで間合いを詰めて散弾砲を叩き込み、トドメにビームガンを撃つ。


『ガード1より各ユニットへ。兎に角時間を稼げ。もう少しでお嬢様達が来る。それまで持ち堪えるんだ』

『分かっている。トマホーク4被弾している。退がれ。穴は此方で埋める』

『助かるトマホーク6。だが此奴らだけじゃない。他の連中も手練れだぞ』


 二機のスパイダーの勢いに続けと言わんばかりに敵傭兵部隊は交戦距離に入る。更にダムラカ所属のAW部隊も勢い良く突入して来る。


【敵AWは傭兵に任せれば良い。我々は敵艦隊を叩くぞ】

【今日こそ戦友と家族の仇が取れる。命を惜しむな!】

【突撃突撃突撃!此処で死を恐れれば今までの屈辱、苦難は全て無駄になる!】


 大型対艦ミサイルや対艦ビームカノンを装備した元ダムラカのAW部隊が味方艦隊に対し突入を敢行する。


『数が多過ぎます!至急増援を!』

『抜けた相手は無視して構わない。出来るだけ敵機を撃破せよ』

『だがこのままでは艦隊だけでは対処仕切れ無くなります!』


 味方艦隊が危機的状況に陥る。そしてその通信内容はトリガー4を通じて俺達の耳にも入っていた。


『トリガー1どうするの?私達はこのまま陸戦隊の護衛を続ける?』

『俺達の受けた命令は陸戦隊の護衛だ。なら本隊の連中を信じるしかねえ」

『異議無し。我々は与えられた任務を遂行する』

『そうですね。それにまだ此方にも駆逐艦とフリゲート艦が障害になってますからね』


 トリガー隊の答えは決まっていた。最初に与えられた任務を遂行し続ける。それが俺達傭兵と言うものだ。

 トリガー1を筆頭に陸戦艇を守る為に前進する。だが俺はその場に留まりトリガー1へ通信を繋げる。


「トリガー5よりトリガー1へ。現在推進剤の消耗激しく戦闘継続が困難な状況」

『あ?おい、良い加減にしろ。テメェを誤射で殺しても良いんだぞ』


 アーロン大尉は殺意を隠さずに言う。序でに銃口が此方に向けられる。そんな過激な対応を無視して言葉を続ける。


「尚、ネロのフリーズ現象により戦闘補助システムの殆どがダウン。現在までマニュアル操作での戦闘を行ってます」

『は?マニュアル操作?嘘だろお前』

「嘘じゃねえよ。ほら俺の機体バイタルだ」

『……いつからだ』

「忘れたよ」


 アーロン大尉は信じられない物を見るかの様に此方を見る。そんな視線を受けながら口元を歪める。


「てな訳で戻るわ。後の残党処理は任せたぜ。このままだと俺の戦果がビリッケツになりそうだしさ」

『おい待て!勝手な行動は』

「敵の通信障害により通信が繋がりません。さらばだ」


 そう言ってトリガー隊との通信を切り本隊へと戻る。そして機体のリミッターを切りペダルを踏みブースト全開にする。


「くううぅ……相変わらずGが堪んねえな」


 速度は上昇する。プラズマジェネレーターがレッドゾーンに入り警告音を鳴らす。


「マスター、このままではプラズマジェネレーターの過剰負荷により危険です。直ちにリミッターを戻して下さい」

「気にすんな。この機体はつい最近新調したばかりだからな。少しくらい負荷掛けた方が味が出るんだよ」

「……そうですか。マスター、接敵前に聞かせて下さい」


 ネロの警告を無視したら質問を受けた。確かに今なら敵は近くには居ない。なら質問に答えるのも良いだろう。


「何だよ。そう言えば戦闘中にも質問がどうとか言ってたっけ。で、何だ?」

「はい。マスターは何故味方に対しわざと敵を作る様な言い方をするのですか?そうすれば援護を受け難くなります」

「……さぁな。意識した事無いから知らねえよ」

「嘘です。普段のマスターは非常に楽しい方です。そんな方がわざと敵を作る理由は何でしょうか?」


 ネロは俺の答えを即否定。そして再度同じ質問をする。


「なあ、身近な奴が死ぬ恐怖を知ってるか?少しだけ仲良くなって戦友になった。だが次の日にそいつが死んで残された奴はどうすると思う?」

「悲しむでしょうか?」

「そうだな。だがそれ以上に嫌なのが仇討ちしようと思う事だ」


 徐々に味方艦隊との距離が縮まる。目の前ではデルタセイバーを筆頭にしたファング隊が敵部隊相手に無双してるだろう。


「俺はそんな面倒くせえ事されんのは御免だね。そんな事するなら墓参りに来いっつーの」

「そうですか。マスターは優しい方なのですね」

「ブッ!馬鹿野郎。何言ってんだよ。まだ壊れてんのか?」

「自己診断プログラムの結果All Greenです」

「流暢に言いやがって」

「マスター、信じられないかも知れません。ですが私をもう一度戦闘補助システムと接続して下さい」

「……無理だ。戦闘中にフリーズは尚更御免被るね」


 もうすぐ接敵する。モニターからの目視をすると意外にも一進一退を繰り返してる様に見える。


「お願いします。ネロを……貴方を信じた私を信じて下さい」

「……」

「間も無く接敵します。お願いします」


 ネロの赤い三点のセンサーと目が合う。もし戦闘中にフリーズしたら今度は死ぬ。味方の援護も無しの状況になるのは間違いないだろう。


「俺達は今日から一連托生だ。頼むぜ相棒」

「はい。お任せ下さい。私を信じたマスターを守ります」


 俺は物理的に抜いたコードを再びネロに挿した。それと同時に敵部隊との接敵距離に入るのだった。

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